2014年8月5日火曜日

奇才カナダ人、バンクーバーで炸裂~二作目の奇作をリリース ― Terrible Thing『Journey to the Centre of Zorn』(2014)



最近、個人的にユル~く推している、カナダはバンクーバーの謎のソロ・アーティスト Terrible Thingの2ndアルバムが、bandcampにて8月1日付でリリースされました。6月から7月にかけて相次いで単発リリースされた楽曲を中心とした全12曲のアルバムです。もちろんname your price。唯一、既発曲の中では"The Holy Mountain"だけ外されていますが、その一方で、アルバム用の新曲として"The Flat Circle"が収録されております。フォーク、スペース・ロック、プログレッシヴ・ロック、ミクスチャー・ロック、テクノ、ファンク、チップチューンを好き放題に詰め込み、チープな打ち込みサウンドすら、自身の作風の魅力に転化してしまう魅惑のゴッタ煮アルバム。是非ともお楽しみあれ。しかし、こうやってまとめて聴いてみると、改めてフランク・ザッパから強く影響を受けているんだなというのを感じます。『Tinsel Town Rebelion』をちょっと思い出したりしました。

アルバムは、「Shanghai Bicycle Chase」という意味不明な形容がなされた"Where Wallace At"で幕開け。続いて、GENTLE GIANTやKESTRELなどの70年代ブリティッシュ・プログレを思わせる牧歌的な1曲"Transmogrification Pertaining to the Destruction of Infinitesimal Biomechanical Organisms"へ。ちなみに、このやたらプログレッシヴに長いタイトルは、直訳すると「極微の生体力学的生物の破壊に関連する変容」。そして、みんな大好き(?)"Yuko San"。神秘的なサムライ・ウォリアー ユーコサンを称えたインチキ和風曲。厳かなアカペラのイントロ、チャカチャカと軽快な曲調、インチキ日本語も交えた、魅惑の珍曲です。ご丁寧にインチキ日本語の歌詞の部分も明記されましたが、"Kaijo damo kai senah yoyo makaru masa karuday shao zunaaaaaaah"という具合なので、解読は難しいです。ところで、"Why did she have to swallow my berries whole?"というラストの意味深な一説は、ユーコさんが人のキンタマを喰ったってことでいいんでしょうか? コワイ! 軽快なニューウェイヴ/テクノ・ポップな完全なる新曲"The Flat Circle"や、ドタバタ感のあるミクスチャー・ポップ"Bobby Baboon"を挟み、アルバムの目玉ともいえる"Chewbacca"へ。スター・ウォーズに登場するチューバッカについて歌ったトリッキーなヘヴィ・プログレ・チューン。この曲は二つの音楽的テーマを内包しているそうで、そのヒントはケヴィン・スミス(映画監督/脚本家)にあるそうです。

ここからは後半。コーラスワークもたっぷりと活かしたマイルドな味のピアノ・ロック・チューン"Prophet's Game"。ちょっと気持ち悪いコーラスワークと、粘着質なサビのフレーズで、少女シモーネについて歌った"Run Simone"。ちょっとマイケル・ジャクソン リスペクトな感もありながら、アーバンと形容するにはちょっとヘンなエレクトロ・ファンク"How Sweet The Grease"。8bit風サウンドの前半部とカントリー・テイストの後半部という、全くタイプの異なるパートで構成された"Spaceman Parts 1 and 2"は、クッキリ2曲に分割されて収録。歌詞は宇宙飛行士について歌っているのですが、デヴィッド・ボウイの名曲"Space Oddity"へのリスペクトも若干あるのではないかと思います。ラストは、ファンキーかつユーモラスなプログレッシヴ・インストゥルメンタル"The Almighty Singularity"で〆。

Terrible Thing - bandcamp