2014年8月24日日曜日

さらなる世界観の広がりを求めて邁進する、プログレッシヴ・フュージョン ユニットの四作目 ― Lu7『Azurite Dance』(2014)

Azurite DanceAzurite Dance
(2014/07/26)
Lu7

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古くはタカラのチョロQ3、近年はロックマンZEROやZXシリーズ、ぎゃる☆がん といったインティ・クリエイツのゲーム作品の楽曲に携わられているコンポーザーの梅垣ルナさんと、ロック・バンドEUROXのメンバーであり、セッション・ミュージシャンとしてインティ作品をはじめ様々なレコーディングに参加されているギタリストの栗原務氏の二人を中心としたフュージョン・ユニット Lu7の四年ぶり四作目となるアルバム。前作『Bonito』でも全面的に参加されていた岡田治郎氏(b / PRISM)嶋村一徳氏(ds)の両氏による安定感たっぷりのリズム隊のほか、パーカッショニストやヴァイオリニストなどのゲスト・ミュージシャンを迎えて制作されたのが本作。同じく多くのゲストを迎えた二作目『L'esprit de l'exil』(2005)にも参加された糸賀徹氏(vo.chorus)や、徳島由莉さん(vln)はインティのサウンドトラック作品でも名前が見られるので、いわばお仕事仲間でもあるわけですね。

梅垣さんのクラシカル/ニューエイジ的センスも織り込んだクリアーなアレンジや、アラン・ホールズワースからの影響を強く感じさせる栗原氏のテクニカルで輪郭のハッキリしたギタープレイがLu7の特徴です。前作ではハードなプログレッシヴ・フュージョン/ジャズ・ロックにグッと踏み込んだシャープな楽曲を中心に展開しており、これまでのアルバムの路線に一区切りをつけた仕上がりにもなっていました。今回は冒頭のタイトルチューンや、スタイリッシュなたたずまいでゆるやかな時間の流れるピアノ・ジャズ・ロック"One Screw Short"などでユニットの持ち味は継承しつつも、さらなる世界観の広がりを求めているという印象を感じました。栗原氏の伸びやかなギターに呼応するかのように糸賀氏が力強いヴォイス・パフォーマンスを聴かせるデジタリーなフュージョン"Raw Ore"や、ヴァイオリンやマリンバをフィーチャーし、曲名さながらの牧歌的な光景(インスピレーションはクロード・モネの一連の絵画からでしょうか)をイメージさせる"積みわらの歌"、そしてストリングスとクラリネットも迎えたラストのアコースティック・インスト"おかえり"と、いずれも暖かみと情緒を感じさせてくれます。

ギター主体の"Rim Light"、シンセサイザー主体の"Dunes in Ancient Times"といった小品やインタールードがアルバム中間部にいくつも差し挟まれているのも本作の特徴ですが、それは後に控える12分に及ぶLu7史上最長の楽曲"トキヲコエテソラニカエリ"への布石といったところでしょうか。同曲はこれまでになくシンフォニック・ロック/プログレッシヴ・ロックに接近したかなりの意欲的な大曲であり、チャーチ・オルガン、モーグ、ピアノが入れかわり立ちかわり登場するキーボード・プログレ曲でもあります。構成の込み入り具合も随一。四ピース・バンドとしての側面もあるLu7が持てるポテンシャルを存分に引き出したガチンコの演奏がギュッと詰め込まれています。アルバム恒例となっている近代クラシック音楽のカヴァーですが、本作はクロード・ドビュッシーの"雨の庭"と、フィリップ・ゴーベールの"Berceuse"(子守唄)をカヴァーしています。前者はガットギターとピアノが息もつかせず併走するスリリングなアレンジ、後者はピアノとフルートに代わり、メロディオンとパーカッションを主体にしたラウンジ調のまったりとしたアレンジです。

メンバー二人のヴィジュアルが初めて前に出た都会的なイメージのアルバムジャケットにも表れているように、さらなる進化を求めるユニットの姿勢が伝わってくるアルバムになっています。11月はじめには六本木でレコ発ライヴもあるとのこと。



Lu7 - Official Site
Music Production CRYSTA Inc.(お二人が在籍されている音楽制作会社)
Luna Umegaki - VGMdb
Tsutomu Kurihara - VGMdb