2014年2月8日土曜日

Vince DiCola & Kenny Mariedeth『Saturday Morning RPG Original Soundtrack』(2014)



Saturday Morning RPG Original Soundtrack By Vince DiCola & Kenny Meriedeth (SMRC-1003)
Scarlet Moon Productions


80年代に『ロッキー4』『トランスフォーマー・ザ・ムービー』のスコアを手がけたことで一躍有名になり、90年代以降は自身によるプログレッシヴ・ロック・バンドTHREADやSTORMING HEAVENや、グレン・ヒューズやT-SQUARE Plusのアルバムへの参加、映画やゲーム・ミュージックへの楽曲提供・アレンジなどで精力的に活動を続けているアメリカのキーボーディスト/コンポーザー ヴィンス・ディコーラ氏。彼が2011年に楽曲を手がけた、Mighty Rabbit Studios制作のiPhoneアプリゲーム「Saturday Morning RPG」のサウンドトラックが、先ごろゲーム・ミュージック系新興レーベル「Scarlet Moon Records」より配信リリースされました。BGMは、アレンジ・ヴァージョンを含め全27トラック収録。フルアルバムの形でヴィンス氏の作品が聴けるのは実に十数年ぶりということで、まさに待望の作品と言えるでしょう。





本編の楽曲は2000年代からヴィンス氏とコンビを組んでいるギタリスト/コンポーザーのKenny Meriedeth氏との共作。シンセサイザーによる壮大なシンフォニック・スコアから、シリアスなイメージのアンビエント/エレクトロ、ブルージーなギターをフィーチャーしたインスト、エッジの効いたハード・ロック、ヴィンス氏が敬愛してやまないキース・エマーソンからの影響がモロに出たキーボード・プログレまで、ヴィンス氏ならではの独特のメリハリを効かせたサウンドと共に展開されております。また、『トランスフォーマー・ザ・ムービー』の劇伴として書かれた"Escape" "Legacy"や、同作のために書かれたもののお蔵入りとなり、後にAOR系のコンピレーションに収録された幻のヴォーカル曲"No Risk No Glory"が再録されているのも見逃せないところでしょう。"No Risk No Glory"のオリジナル・ヴァージョンはスタン・ブッシュが歌っておりましたが、今回の再録版ではRobert Reynoldsなるヴォーカリストが歌っております(The Mavericksの同名メンバーとは恐らく別人)。



さらに、それぞれゲーム・ミュージック界隈で活躍している Stemage(Grant Henry)C-jeff(Dmitry Zhemkov)Virt(Jake Kaufman)の3人がゲストでアレンジを提供しております。Stemage、C-jeffの連名アレンジによる"Dawn of a New Day"は、80年代のテイストも感じさせるプログレ・ハード色を強めた仕上がり、Virtによる"SATURDAY MORNING ARCADE SHOOTER"は、"Battle Scene"のプログレッシヴなチップチューンアレンジと、非常に「わかっている」のが嬉しい。近年、ヴィンス氏の影響を受けたコンポーザーが続々と登場してきているのは、いちファンとして頼もしい限りに思います。『トランスフォーマー・ザ・ムービー』で聴かせてくれたあのテイストが二十数年ぶりに蘇ったと言っても過言ではないですし、これからのヴィンス氏の活動にもますます期待が寄せられる、まさに渾身の作品だと思います。新旧のファンはもちろん、プログレッシヴ・ロック、AORファンにも、是非聴いていただきたい。







Vince DiCola - Wikipedia
TDRS Music - Vince DiCola
Vince DiCola - AllMusic
Talking Music with Vince DiCola - seibertron.com
Melodic Net: Vince DiCola Interview[2004.12.09]