2014年1月25日土曜日

高度に発達した腹芸は、超能力と区別がつかない。 ― エリック・ヴァン・ラストベーダー『ザ・ニンジャ』(講談社 - 1982)

ザ・ニンジャザ・ニンジャ
(1982/02)
エリック・ヴァン・ラストベーダー

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エリック・ヴァン・ラストベーダー「ザ・ニンジャ」、ニンジャスレイヤー人気に便乗して文庫化されないかなあ…と、最近思ったりしています。米国では当時大ヒットしたのですが、日本では第一作目の単行本(二段組500ページ超というごおっつ~い仕様)が1980年に一度出たきりというシロモノ。ちょいと前に神保町の古書店である@ワンダーも「元祖ニンジャスレイヤー」と紹介しておりました。その紹介は間違っていません。一級品のスパイ + ニンジャ + 活劇小説なのであります!




本作の舞台はニューヨーク。主人公ニコラス・ライナーは日本人の血を引く忍者であり、腕を見込まれて企業間の抗争に巻き込まれ、暗殺者サイゴウとの闘いに身を投じることとなります。フカシギ、カンサツ、サツガイという忍術使いも登場。この作品世界では宮本武蔵は忍者に敗北したことになっているほか、腹芸<ハラゲイ>が超能力のようなものとして扱われています。高度に発達した忍術は魔術と見分けがつかないのです! 先も述べたように、ストーリーは一級のエンターテインメントと呼んで差し支えない面白さなのですが、エリック氏の勘違いなのかそれとも意図的なものなのか、日本観と忍者像への妙な誤認がそこかしこで見られ、そのあたりはえらくB級感を醸しだしています。ちなみに、本書の数年前には、同じくアメリカの作家であるトレヴェニアンの傑作『シブミ』が発表されております。こちらはスリルとサスペンス、官能と冒険をたっぷりと詰めこんだ一方で、日本的精神への確かな造詣の深さを伺わせ、主人公を通して文化に対する鋭い眼差しも向けた真摯で奥深い味わいのエンターテインメント作品として成立しておりました。エリック氏は執筆の際に同作を参考にされたのかはわかりませんが、この『シブミ』を"表"とするなら、『ザ・ニンジャ』は"裏"、そんな印象が個人的にはいたします。

1980年の第一作『The Ninja』以降の刊行歴を調べてみると、『The Miko』(1984) 『White Ninja』(1990) 『The Kaisho』(1993) 『Floating City』(1994) 『Second Skin』(1995)となっており、何だかんだで6作目まで出ていたようです。二作目『The Miko』の主人公はアキコという巫女を目指すくの一? だそうで、前作主人公のニコラスとラブシーンを演じた果てに決闘、その最中にいきなり地割れに飲み込まれるのだとか。うーむ。

MikoMiko
(1985/06/12)
Eric Van Lustbader

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『ザ・ニンジャ』の邦訳は一作目で打ち切られてしまうものの、ラストベーダー氏は向こうでは昔から名の知られた売れっ子作家であるので、それ以外の作品は幾つか邦訳されています。まず80年代にファンタジーものの『黄昏の戦士』シリーズ三作+外伝がハヤカワFT文庫から出ていましたし、99年のサスペンス作品「『Pale saint』が02年に徳間文庫から『クローン捜査官』という邦題で出ていました。そして、ロバート・ラドラムの『ジェイソン・ボーン』シリーズをラストベーダー氏が書き次いだ一連の続編作品があります。しかしこの新生ボーン・シリーズは訳がまずいのもあってイマイチ評判が悪く、三作目の『ボーン・サンクション』(2008)以降邦訳が出ていません。無念。

刊行・絶版から30年以上経っている「ザ・ニンジャ」ですが、プレミアがついているというわけではなく、今でも古本屋をちょっと探れば見つかる可能性の高いものです。ニンジャヘッズは草の根を分けてでも見つけ出して読んでいただきたい1冊。

Eric Van Lustbader - Wikipedia

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