2014年1月24日金曜日

FENCE OF DEFENSE『digiTaglam 2 RING WORLD』(2014)

digitaglam 2  RING WORLDdigitaglam 2 RING WORLD
(2014/01/08)
FENCE OF DEFENSE

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西村麻聡北島健二山田わたるによるプログレッシヴ・ロック・バンド フェンス・オブ・ディフェンスの最新作。1991年に発表した6thアルバム『digitaglam FOD VI』(以下、前作と表記)から実に23年ぶりとなる続編的作品であります。タイトルの「リングワールド」は、やはりラリイ・ニーヴンによる同名SF小説からとられたものでしょう(2008年のミニアルバム『円游律』の"Karma:Code"でもこのワードが使われていたところを見ると、結構こだわりがあるようですね)。アルバムは前作の構成がガッツリと踏襲されており、「あっ」となる部分がチラホラとあります。

前作では"パラノイアの危険な入り口" "digitaglam"というイントロダクション的トラックが2曲続く形でアルバムが幕開けするのですが、今回は"フラクタル" "digiTaglam 2"の2曲がそれを担う形になっています(ちなみに、"digiTaglam 2"には"digitaglam"で流れた女性の息継ぎのSEがサンプリングされているのもミソ)。また、曲間に1~2分ほどの意味深なSE群によるザッピング&コラージュな幕間を度々挟み、ミステリアスな流れを演出しているところも同様です。前作ではKING CRIMSONの"21st Century Schizoid Man"の歌詞を分解してランダムに散りばめたトラックがありましたが、今回は"Deficiency E Syndrome"のAメロの一部が"21st Century Schizoid Man"の節回しで歌われております。Deficiency E Syndrome Love。貴方センチにSchizoid Man。

"CHAOSmix""monochrome feedback"で聴けるような、エレクトロミュージックやポストロックを彼ら流に取り込んだ部分にアップトゥデイトな感もあるとはいえ、サウンドの方向性もあの頃のデジロック路線へといくらか回帰したのでは、という印象。"Go! Go! 55"のようなファニーなポップ・インスト・チューンや、90年代中期F.O.Dを思わせるカラッとストレートな"明日に向かってShout!"、プログレッシヴ・ハード・ポップなテイストの応援ソング"World Love in Japan"もあり、総じて見るとどこかレトロフューチャーな味わいみたいなものを感じます。代表曲である"SARA" "時の河" "Midnight Flower"の2014年版セルフカヴァーはいずれも大胆なアレンジが施されており、テンポを落とし、ヘヴィなデジタルサウンドとブラスセクションが主張する"Midnight Flower 2014"、力強さが優しさへと転化したようにも思えるほどにハートウォーミングな"SARA 2014"、ムーディーなサックスもフィーチャーされ、浮遊感溢れるラウンジ調になった"時の河 2014"と、原曲の歌謡プログレハードな趣からはかなり遠ざかった印象。予想していたものとはかなり違いましたが、これはこれでアリではないかと思います。「流れ流れていつかまた生まれ変わる」と、時の河の詞にもありますしね。「あの頃」のエネルギーを呼び戻しつつ、円熟というフィルターを通して再度結実させた1枚。

FENCE OF DEFENSE『digitaglam FOD VI』(1991)

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