2013年9月30日月曜日

雨降波近『ヒカルセカイ』(百合姫ノベル - 2013)

ヒカルセカイ (Yuri‐Hime Novel)ヒカルセカイ (Yuri‐Hime Novel)
(2013/07/18)
雨降 波近

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百合小説と言われて自分の中で真っ先に思い浮かぶのは中山可穂『猫背の王子』や、松浦理英子『犬身』、野坂昭如『骨餓身峠死人葛』や香山滋『魔婦の足跡』という具合なので、昨今の百合小説事情にはとんと疎いのですが、この作品はふと目にした内容の紹介文に惹かれて、思わず手にとりました。雨降波近氏のデビュー作となる本作『ヒカルセカイ』のあらすじは、不幸の女神を目指す女神候補ミレットが、「ひとりの人間を不幸にして殺す」という最後の課題を果たすために、人間界に降り立ち、ガールズ・プログレッシヴ・メタル・バンド"ノーバディズメルトダウン"で活動する一人の女子高生 彩乃に接近し、親密な関係を築きあげてゆく…というもの。ガールズプログレメタルバンドですよガールズプログレメタルバンド。なんとアンビバレントで甘美な響きでありましょうか。

前半はミレット、彩乃との出会いや、バンドメイト達との他愛なくも楽しい日常が綴られ、ゆるやかに展開してゆきます。また、随所での演奏パートの描写には、作者のこだわりが少なからず感じられました。中盤、担任の山中先生が登場してからストーリーは大きく動き始め、不幸と幸福のバランスを司る神々の理、世界中の不幸を一身に背負うことを運命付けられた彩乃という存在、山中先生と女神候補との因縁の過去、ノーバディズメルトダウンのメジャーデビュー…といったあれこれを交えながら、彼女や周囲の様々な葛藤が繰り広げられてゆきます。彩乃とミレットとの幸福な日々の果てにあるもの…その先は、ご自身の目でお確かめあれ。

「ストーリー後半に書きたいことを詰め込み過ぎたのでは」「演奏描写をもっとフィーチャーしても良かったのでは」と感じるところもありますが、彩乃のミレットの真っ直ぐな関係が紡ぎ出した結末は、読んでいて少なからずグッとくるものがありました。過度な期待は禁物ですが、是非とも最後まで読んでいただきたいですね。ちなみに、巻末には雨降波近さんの簡単なプロフィールが載っているのですが、よく聴かれる音楽がスティーヴ・ライヒMESHUGGAH、好きな声優は牧野由衣さんと中島沙樹さんだそうです。なるほど、納得できるものがありました。とすると、本編で彩乃が愛用していたギターの愛称"フレドリック"は、MESHUGGAHのギタリスト フレドリック・トーデンダルから来ているのでしょうか。

また、雨降氏は"Templymphatica"というソロ・ユニットで音楽作品も制作されております。前述のようにライヒ、メシュガーがお好きということもあって、その音楽性はミニマル/エクスペリメンタルな要素が色濃く反映され、時たま本人の苛烈なヴォーカルもシャウトする静と動を併せ持ったプログレッシヴ・メタル。なかなか聴き応えがあります。今年、『心象叙景曲集』という6曲入りのEPを発表されております。氏の作品はmonstar.fmsoundcloudニコニコ動画などで聴くことができます。ロム虫/被リナルPという名義でVOCALOID曲も多数投稿されているようですね。

Templymphatica|monstar.fm
http://monstar.fm/templymphatica/

Amafuri Namichika|soundcloud
https://soundcloud.com/amafuri-namichika


ニコニコ動画マイリスト
http://www.nicovideo.jp/mylist/36954894
http://www.nicovideo.jp/mylist/15392018



百合好きでプログレ好きという業の深い方々には、特に一読・一聴をお薦めするのであります。氏の今後の活動にも期待したいですね。

2013年9月29日日曜日

Birds And Buildings『Multipurpose Trap』(2013)

現代米国プログレ勢の中でもダークホースなバンドの一つとしてカルト的なポジションに位置しているDELUGE GRANDER。同バンドのフロントマンであるDan Britton氏がその別働隊バンドとして立ち上げ、同時並行的に活動を行っているBirds And Buildingsが5年ぶりに新作アルバムを出した。KING CRIMSONやGENTLE GIANTといった英国バンドからの影響はもちろん、70年代米国インディーズプログレバンドの遺伝子も濃厚に継承したサウンドは健在。



2013年9月28日土曜日

スペインのプログレッシヴ・メタル・バンド Time Symmetry

活動歴は10年以上ながら、1stアルバムをリリースしてからしばらくご無沙汰だったスペインのプログレッシヴ・メタル・バンド TIME SYMMETRYが、7年ぶりに2作目となる新作フルアルバムを出す。また、バンドのYouTubeアカウントでは、2003年発表のデビューEP『Time Symmetry』と2006年発表のフルアルバム『Fate in Gray』を丸ごとアップロードしている。はちきれんばかりに太っ腹だが、再生数二桁である。サウンドはDREAM THEATERフォロワーといった手合いながら、ドラマティックな曲展開でそこそこ良い感じ。







ヴェネズエラの技巧派14弦ギタリスト: Felix Martin『The Scenic Album』(2013)

14弦ギターを操るヴェネズエラの技巧派ギタリスト、フェリックス・マーティンが先ごろリリースしたアルバムを聴いている。めくるめくハイパー曲芸サウンドがぎつしりと詰まったテクニカル・アルバム。バカテク人材フェチのマルコ・ミンネマンが殆どの曲でドラムを叩いているほか、ブルックリンのプログレメタルバンドBehold…The Arctopusの元メンバーであり、ロン・ジャーゾンベク率いるBlotted Scienceや、KAYO DOTのアルバムへの参加歴もあるチャーリー・ゼレニーも1曲にドラムスで参加。ベースとチャップマンスティックをプレイしているのは、前作から引き続き参加のネイサン・ナヴァロ





2013年9月27日金曜日

Pain Of Salvationのレオ・マーガリット擁するベルギーのプログレッシヴ・メタル・バンド EPYSODE

Pain Of Salvationのドラマー レオ・マーガリットを擁するベルギーのプログレッシヴ・メタル・バンド EPYSODEの2ndアルバムが出る。今回も、外部から複数のヴォーカリストをフィーチャリングして制作。また、前作でベースを弾いていたクリストファー・ギルデンロウ(ex Pain Of Salvation)が抜けて、後任にSYMPHONY Xのマイケル・レポンドが加入したほか、DGMのシモーネ・ムラローニがギターを弾いております。スウェーデンのEVERGREYのヴォーカリスト Tom S. Englundがゲスト参加した曲が先行試聴できますが、かなり良いです。



2013年9月24日火曜日

中村天平『火の鳥 Vol.1』(2012)

ガテン系ピアニスト 中村天平氏のアルバムを購入。クラシック、ジャズ以上にプログレッシヴ・ロック…というかキース・エマーソンの影響が濃ーく滲み出たプレイでガッツリ弾き倒している。冒頭の5部構成、30分の組曲は圧巻。歌もの曲もあり。アルバム1曲目の"Phoenix/火の鳥"。これを聴いて即アルバムをポチった次第。





天平さんは、大阪に先ごろ出来たあべのハルカスのテーマ曲も作曲されている。


DOT WIGGIN BAND

あのフランク・ザッパも一目置き、「ビートルズよりも重要なバンドだ」と言わしめたさせたという逸話もあるとかないとかな超絶素人バンドTHE SHAGGS。当時若かったおねえちゃん達も今ではおばあちゃんなんだけど、あの姉妹の次女のDOTちゃんが最近DOT WIGGIN BANDなるバンドを組んでデビューしたらしい。ビックリですわ。YouTubeにライヴ映像が上がってるけど、いやー変わってないっすね。アルバムに参加しているメンバーには、DOCTOR NERVEやRON RUINSのジェシー・クラコウとかGOD IS MY CO-PILOTのローラ・クロムウェルとかがいるんですよね。なんだよこのメンツは。



Ready! Get! Go!Ready! Get! Go!
(2013/10/23)
Dot Band Wiggin

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2013年9月16日月曜日

Triangle March『ヴィマニカ・ヴィマニカ』(2013)

ヴィマニカ・ヴィマニカヴィマニカ・ヴィマニカ
(2013/08/21)
Triangle March

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また何やら個性的なバンドが出てきたもんだなあと、思わずアルバムを手にとって聴いてみました。二人の作編曲者と一人のヴォーカリストのからなるプログレ・ポップ・アート・ユニット トライアングル・マーチの1stアルバム。インド神話に登場する神の乗り物"ヴィマーナ"の免許取得を目指す少女アリスを主人公にしたオリジナルのSFファンタジーなストーリーを、打ち込み中心のプログレ風テクノ・ポップな楽曲にのせた作品。メロトロンの音色や変拍子も存分にフィーチャーしつつ、親しみやすいメロディで小気味良く展開してゆきます。ロート♪ロート♪ロートー♪でおなじみのロート製薬のCMに酷似したメロディでモーゼ♪モーゼ♪モーゼー♪と歌い上げる"モーゼ!"がしばらく耳から離れなくなった次第。怪獣と宇宙人の悲劇を煌びやかなポップセンスに包み込んで歌う"カイジューと王子様"や、変拍子でつんのめった曲調で脳内に反響する神のお告げを表現した"オラクル"。ストーリーの山場にあたる"ヴィマーナ・アタック"なども良い感じであります。インド神話!オーパーツ!超古代文明!と言われると思わず身を引いてしまいますが、フタを開けてみれば親しみやすさに富んだアルバムであります。そして、妙な中毒性も…。公式サイトに、コンセプトなどアルバム周りの詳細な解説が載っているので、気になる向きはチェックしてみてくださいな。

http://trianglemarch.net/blt/

Tony Levin / Marco Minneman / Jordan Rudess『LMR』(2013)

LMRLMR
(2013/10/25)
マルコ・ミンネマン,ジョーダン・ルデス トニー・レヴィン

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トニー・レヴィン(b)、マルコ・ミンネマン(ds)、ジョーダン・ルーデス(kbd)のテクニカル・トリオによるアルバムを聴いた。トニーとルーデスの二人がかつて参加したテクニカル・バンド Liquid Tension Experimentとはまた装いが異なる内容でありました。バカテクだけどポップな落とし所もあって、楽曲もバラエティに富んでるあたり、ミンネマンのカラーが全体的に出ている感じ。Liquid Tension Experimentのようなストイックさはないけど、3人とも歴戦の手練だけあってキメる曲はバッチリキメまくるので、安心して良いと思います。あと、PVでもブックレットでもお茶目な3人が拝めるのが楽しい。





2013年9月15日日曜日

EL&P/キース・エマーソンオマージュなゲームミュージック集【2001~】

エマーソン,レイク&パーマー / キース・エマーソンをオマージュした、もしくは少なからず意識したのではないかと思われるゲーム・ミュージックを、全3回に渡って年代順にご紹介してゆくというニッチな企画。ラストは、2001年以降の作品。

【イントロダクション】
【1985~1991】
【1992~1999】
【2001~】

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小谷野謙一「Thunder Storm」
from "グレート魔法大作戦"
[ライジング/エイティング - ARCADE - 2000]

小谷野氏はDTMマガジン創刊時からの連載メンバーであり、シンセサイザーに造詣の深いコンポーザー/アレンジャーであります。



植松伸夫「走れ!」
from "FINAL FANTASY IX"
[スクウェア - PLAYSTATION - 2000]




Bunmei(小川文明) 「ARMAJIRO」
from "KEYBOARDMANIA"
[コナミ - ARCADE - 2000]

キーボードマニアはBEMANIシリーズのひとつとして2000年にリリースされたタイトルですが、残念ながらシリーズは2001年の「3rdMIX」で打ち止めとなっております(シリーズの公式サイトも2013年2月に閉鎖)。この曲の作曲は、すかんちやSuzy Cream Cheeseのキーボーディストである小川文明氏。タイトルの"アルマジロ"も含めてパロっております。ちなみにこの曲のフル・ヴァージョンは中間部でPINK FLOYDをオマージュした展開にもなります。他にも文明氏は DEEP PURPLEをパロった「Burnin'」、リック・ウェイクマンをパロった「Henry Henry」という曲をキーボードマニアの1stに提供しております。



佐々木博史「The Least 100Sec」
from ギタフリシリーズ[2001~]

初出は『GF5th』『dm4th』『KEYBOARDMANIA 3rdMIX』。ギターフリークス、ドラムマニア、キーボードマニア、ビートマニア、ポップンミュージック、ダンスダンスレヴォリューションと、一連のBEMANIシリーズに収録された人気曲。"Karn Evil #9(悪の経典)"の第二印象へのオマージュが込められた1曲であり、EL&Pオマージュのゲーム音楽として最も高い知名度を誇るのがこの曲なんじゃないでしょうか。



Paraoka「L9」
from BMS[2001]

フリーの音楽ゲーム「BMS」用の楽曲。発表時期から考えると"The Least 100 Sec"へのオマージュも込められたのではないかと思われます。



NL&P(古賀博樹)「EXCALIBUR」
from "POP'N MUSIC 7"
[コナミ - ARCADE - 2001]

いくつもの名義を持つコンポーザー 古賀博樹氏。「EXCALIBUR」は NL&P名義での1曲。



Falcom Sound Team jdk「魔王の両腕-ハンド-」
from "ZWEI!!"
[日本ファルコム - Windows - 2001]

ゲーム本編は民族調の楽曲が多いのですが、この曲はモロにEL&Pです。



ZIZZ(大山曜)「超人舞闘―激突する法則と法則」
from "斬魔大聖デモンベイン"
[ニトロプラス - Windows - 2003]

大山曜氏はプログレッシヴ・ロック・バンド ASTURIASでも活動されております。



Sota Fujimori(藤森崇多) 「100% minimoo-G」
from "beatmaniaIIDX 12 HAPPY SKY"
[コナミ - ARCADE - 2005]

名門バークリー音楽院の卒業生にして、根っからのシンセサイザーオタクでもある藤森氏が放ったこの曲は、EL&Pのタルカスをモチーフに、全パートをモーグシンセサウンドで構築した徹頭徹尾シンセプログレナンバー(曰く「サンプラーやソフトシンセ、ソフトクリームなどは一切使用しておりません。」だそうです)。タイトルに偽りなし。めくるめく変拍子の渦に加え、左右チャンネルから襲いかかるワニャワニャとしたフレーズが聴き手の脳味噌をサラダ外科手術。



古代祐三「4operators」
[オリジナル - 2006]

ゲームミュージックコンポーザー達が制作したFM音源によるオリジナル着信メロディーを一挙収録した企画アルバム『FM音源マニアックス』(2006)より、古代祐三氏の提供曲。「どこか懐かしいプログレ風味」とは古代氏のコメント。



Falcom Sound Team jdk「我にひれ伏せ」
from "ZWEI2"
[日本ファルコム - Windows - 2008]




Vince DiCola「Boss Battle」
from "Saturday Morning RPG"
[Mighty Rabbit Studios - iPhone App - 2011]

海外産iPhoneアプリゲームのボス戦時BGM。ヴィンス・ディコーラ氏は『ロッキー4』や『トランスフォーマー・ザ・ムービー』の劇伴で知られる御仁。キース・エマーソンから多大な音楽的影響を受けており、自身もプログレ界隈とも関わりの深いキーボーディスト/コンポーザー/アレンジャーです。


EL&P/キース・エマーソンオマージュなゲームミュージック集【1992~1999】

エマーソン,レイク&パーマー / キース・エマーソンをオマージュした、もしくは少なからず意識したのではないかと思われるゲーム・ミュージックを、全3回に渡って年代順にご紹介してゆくというニッチな企画。今回は、1992年から1999年まで。

【イントロダクション】
【1985~1991】
【1992~1999】
【2001~】


----------------------------------------------------

溝口功・窪寺義明・岩垂徳行「STAGE 1」
from "鋼鉄帝国 STEEL EMPIRE"
[ホット・ビィ - MEGADRIVE - 1992]


『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』のメインテーマと、エマーソン、レイク&パウエル「The Score」をミックスしたような一曲。



渡辺夕香「STAGE 7~STAGE 7 BOSS」
from "ニンジャコマンドー"
[ADK - ARCADE - 1992]

やたらとニンジャにこだわったゲームをリリースしていた、今は亡きADKの92年作品。最終ステージが何故かタルカス。ちなみに、クリアBGMはショスタコーヴィッチの交響曲5番オマージュです。



ゲーマデリック「Dragongun~神炎~(アレンジ)」
from "超次元竜ドラゴンガン"
[データイースト - ARCADE - 1992]

ファンタジー系ガンシューティングゲーム。こちらはサントラに収録されている、ステージ1BGM「神炎」のアレンジ版。"庶民のファンファーレ"を意識したアレンジになっています。



小谷野謙一「タイトルテーマ」
from "新日本プロレスリング'94 バトルフィールド IN 闘強導夢"
[バリエ - SUPER FAMICOM - 1994]


こちらもエマーソン、レイク&パウエル「The Score」。



高添香織・前田英人・志倉千代丸・那珂裕之「Blood of Star 1」
from "テコンドー"
[ヒューマン - SUPER FAMICOM - 1994]


「ファイヤープロレスリング」のヒューマンの単発作。ファイプロシリーズに負けないアグレッシヴなBGM群のなかにエマーソン、レイク&パウエル「Touch And Go」オマージュがあります。



植松伸夫「妖星乱舞(第四楽章)」
from "FINAL FANTASY VI"
[スクウェア - SUPER FAMICOM - 1994]

全四部構成、トータル17分という、FF6屈指の大曲。特に第四楽章はEL&Pからの影響が強く伺えるものになっております。



松枝賀子(作曲)/植松伸夫(編曲)「ボス・バトル1」
from "クロノトリガー"
[スクウェア - SUPER FAMICOM - 1995]

クロノトリガーは光田康典氏が殆どの楽曲を手がけられておりますが、この曲のみ松枝さん作曲。高揚感のあるキーボード・プログレ仕立て。植松さんの編曲もバッチリ効いております。




松枝賀子「中ボスバトル」
from "バハムートラグーン"
[スクウェア - SUPER FAMICOM - 1996]

そして、クロノトリガー戦闘曲でのキーボード・プログレ路線をさらにグレードアップさせたのがこちら。



植松伸夫「ジェノス」
from "フロントミッション ガンハザード"
[スクウェア - SUPER FAMICOM - 1996]

フロントミッションの正史ではなく派生シリーズですが、ゲームシステム、楽曲、ヴィジュアル、いずれも素晴らしく、まごうことなき名作アクションゲームです。楽曲は植松伸夫氏と光田康典氏という強力なタッグ。楽曲は二人の特色がハッキリと出ていて非常に解りやすいものがあり、粒揃いです。



渡辺邦孝「ムーラ」
from "デスクリムゾン"
[エコール - SEGA SATURN - 1996]

EL&P/キース・エマーソンからの影響を色濃く投影した楽曲が多いデスクリムゾンですが、なかでも「ムーラ」は「Tarkus」のオマージュが全開。渡辺邦孝氏は、プログレッシヴ・ロック・バンドNOVELAの前身バンド山水館のキーボーディスト。



笹井隆司「修羅妄執」
from "ブシドーブレード弐"
[スクウェア - PLAYSTATION - 1998]

笹井隆司氏はNOVELAの元ベーシスト(中期(第二期)~後期(第三期)に在籍)の経歴の持ち主。「修羅妄執」は、氏がベーシストであることを強烈に印象付ける、ベキベキなベースラインが堪らない和風「Tarkus」といった趣の1曲。



「エドゥアルド賛歌」
from "バッケンローダー"
[SEGA- SEGA SATURN - 1998]

オープニング、エンディング曲に元KING CRIMSON~FOREIGHER~21st Century Schizoid Bandの大御所イアン・マクドナルドを起用しているのですが、イアン氏が関与されていないゲーム本編の楽曲もプログレで、明らかにKING CRIMONやEL&Pを意識したような曲もチラホラ出てきます。ジャズ・ロック、チェンバー・ロックな傾向も強め。



小谷野謙一/崎元仁「Cool Riding」
from "アームドポリス バトライダー"
[ライジング - ARCADE -1998]




大久保治信
from "戦国TURB FanFan I Love Me Dunce-Doublentendre"
[NECホームエレクトロニクス - DREAMCAST - 1999]

今でも根強いファンがいる、ドリームキャストのアクションRPG。そのファンディスクの楽曲。モロにEL&Pの「Hoedown」です。作曲者の大久保氏はEL&Pを聞き音楽に目覚めたという人で、過去にはGOOD JOBなるプログレバンドでキーボーディストを務めておりました(現在はTruth And Realityというプログレ・バンドで活動中)。ゲーム本編中にはキーボード・プログレ系の楽曲がいくつかあったりします。



佐藤天平「The Q-Tank Hero」
from "コンバットチョロQ"
[タカラ - PLAYSTATION - 1999]

チョロQシリーズの1作。作曲はディスガイア・シリーズなどで知られる佐藤天平氏。EL&PはEL&Pでも、こちらはEmerson,Lake&Powellの「The Score」を意識した楽曲です。


2013年9月14日土曜日

HIYA!(冷牟田卓志)「クロスブレイズ」(アイレム/1991)

未だサントラ化されていないアイレムのベストスクロールアクションゲーム「クロスブレイズ」(1991)の楽曲の再生リストをこしらえてみた。SUPER R-TYPEや初期メタルスラッグの楽曲なども手がけられた、HIYA!こと冷牟田卓志氏による入魂の楽曲群。随所にキース・エマーソン テイストもチラつくバリバリのプログレ路線です。

【Cross Blades O.S.T】
https://www.youtube.com/playlist?list=PLJ4LFs94gFfnQRCanRT_2TCuBG-9AKMbK





EL&P/キース・エマーソンオマージュなゲームミュージック集【1985~1991】

エマーソン,レイク&パーマー / キース・エマーソンをオマージュした、もしくは少なからず意識したのではないかと思われるゲーム・ミュージックを、全3回に渡って年代順にご紹介してゆくというニッチな企画。今回は、1985年から1991年まで。


【イントロダクション】
【1985~1991】
【1992~1999】
【2001~】


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吉田健志「チューボ」
from "テラクレスタ"
[日本物産 - ARCADE - 1985]


EL&P「Tarkus」へのオマージュともいえる5拍子の楽曲。コンポーザーの吉田健志氏は日本物産の設立当初より数多くのゲームタイトルを手がけ、同社のサウンドの顔として知られた人。数々のバンドを渡り歩き、プログレバンド在籍歴もあります。



増子司「エンディング」
from "テーカン ワールド カップ"
[テーカン - ARCADE - 1985]


テクモ(現コーエーテクモゲームス)がまだ「テーカン」を名乗っていた1985年にアーケードで発表されたサッカーゲーム「テーカン ワールド カップ」のエンディングテーマ。チャールズ・ヒューバート・パリーの聖歌「Jerusalem」のカヴァーなのだけども、このアレンジはむしろEL&Pカヴァー版の「聖地エルサレム」を意識しているのではないかと思います。BGMを手がけたのは後に「女神転生」シリーズなどを手がけられる増子司氏。



中潟憲雄「頼朝」
from "源平討魔伝"
[ナムコ - ARCADE - 1986]

最終ボス 源頼朝戦で流れるのがこの曲です。作曲者の中潟憲雄氏は80年代にアクアポリスというプログレッシヴ・ロック・バンドで活動されておりました。



中潟憲雄「最終ステージBGM」
from "超絶倫人ベラボーマン"
[ナムコ - ARCADE - 1988]

http://youtu.be/lbnzK_jNglE


中潟憲雄「Oyagi」
from "暴れん坊天狗"
[メルダック - FAMICOM - 1990]

エマーソンがEL&P以前に在籍していたバンド The Niceの、"America"あたりをオマージュしたのかなあと思うところがあります。鍵盤を弾き倒すキース・エマーソンの姿がおぼろげながら浮かんでくる…かも?



田中宏和「エンディング」
from "メトロイド(ディスクシステム版)"
[任天堂 - DISK SYSTEM -1986]

EL&P「悪の経典 第3印象」をオマージュしたのではないかと、昔から言われております。



メタルユーキ「Kartus Part.1」
from "雷牙"
[テクモ - ARCADE - 1991]

メタルユーキ氏がコンポーザーとして活動していた頃の作品。このカルタスには"Part.2"もあり、そちらはコナミが1991年に発表した「サンダークロスII」で聴くことが出来ます。



桜庭統「Hopping Express」
from "グラナダ"
[日本テレネット - X68000/MEGADRIVE - 1990/1991]



桜庭統「Cosmic Illusion」
from "ソル・フィース"
[日本テレネット - X68000/MEGADRIVE - 1990/1991]



桜庭統「Count Down」
from "緋王伝"
[日本テレネット - SUPER FAMICOM - 1992]


桜庭氏は80年代にはプログレッシヴ・ロック・バンド DEJA-VUのキーボーディストとして活動されており、テクニカルなキーボード・プログレ・サウンドを展開されておりました。ウルフチーム時代には「グラナダ」「ソルフィース」「緋王伝」などの作品でバリバリのプログレ路線を展開しております。ゲーム音楽とプログレを語る上では、避けては通れないコンポーザーの一人です。


冷牟田卓志「ステージ1」 from "クロスブレイズ"
[アイレム - ARCADE - 1991]

作曲者はアンダーカバーコップスやSUPER R-TYPE、また初期のメタルスラッグ・シリーズでも知られるHIYA!こと冷牟田卓志氏。



「Struggle to the Death (Boss Battle) 」
from "Mercury: The Prime Master"
[マキシマ - X68000/PC-98 - 1991]


松尾早人氏、岩崎琢氏、岡元清郎氏、山路敦司氏と、錚々たるコンポーザー陣で制作されております。誰がどの曲を担当したのかということは詳しくわからないのですが、恐らくこの曲は松尾早人氏によるものではないかと思われます(氏は小学生時代にタルカスを3ヶ月かけてコピーしたという逸話があるのです)。

2013年9月13日金曜日

EL&P/キース・エマーソンオマージュなゲームミュージック集【イントロダクション】

エマーソン,レイク&パーマー(EL&P) / キース・エマーソンをオマージュした、もしくは少なからず意識したのではないかと思われるゲーム・ミュージックを、全3回に渡って年代順にご紹介してゆくという企画。

【イントロダクション】
【1985~1991】
【1992~1999】
【2001~】



エマーソン、レイク&パーマーは1970年にキーボードのキース・エマーソン、ベース&ヴォーカルのグレッグ・レイク、ドラムのカール・パーマーの3人で結成されたトリオで、3人とも既に別のバンド(THE NICE、KING CRIMSON、ATOMIC ROOSTER)で名を上げていただけに、当時はスーパー・バンドとして喧伝されました。彼らが1971年に発表した2ndアルバム『Tarkus』はバンドの代表作であるのみならず、プログレッシヴ・ロックを代表するコンセプトアルバムで、アルマジロ型戦車のタルカスが火山の中から現れて、破壊の限りを尽くした後、マンティコアとの戦いの果てに海に帰っていくというストーリー。

TarkusTarkus
(2011/02/10)
Emerson Lake & Palmer

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プログレッシヴ・ロックは1960年代後半に興り、1970年代前半に隆盛した音楽ジャンルです。大仰なコンセプトを打ち出したり、数多の技巧を凝らした楽曲を作り上げたり、オーケストラと共演したり、他のジャンルも取り込んだ音楽性を展開したりと、自由で独創的なサウンドを目指したジャンル…と言いましょうか。一口では説明しづらいジャンルなのが魅力であり、またもどかしくもあります。ムーヴメントは短い間でしたが、実験的かつ意欲的なバンドや作品が数多く誕生し、今なお根強いファンがおります。

プログレッシヴ・ロックとゲーム・ミュージックは、昔から高い親和性があるのです。その理由としてはどちらもファンタジーを題材とすることが多いこと、演出としてドラマティックな楽曲展開をみせるプログレッシヴ・ロックがインパクトを演出する上でハマりやすいということ、といったことが考えられますが、それ以上に、ゲーム・ミュージックのコンポーザーさんたちの多くがプログレッシヴ・ロックをリアルタイムで経験した世代の人だからというのがあるのではないかと思います(植松伸夫氏はインタビューなどでプログレからの影響を公言していますね)。また、元DEJA-VUの桜庭統氏や、元アクアポリスの中潟憲雄氏、元DADA~KENNEDYの泉陸奥彦氏、同じく元KENNEDYの深見誠一(プロフェット深見)氏、元NOVELAの笹井隆司氏、元ミスター・シリウスの藤岡千尋氏、元IL BERLIONEの谷口博史氏など、プログレッシヴ・ロック・バンドで活動していた人がゲーム業界に活動を移したというケースも数多くあるほか、畑亜貴さんや大山曜氏、梅垣ルナさん、大久保治信氏、黒沢ダイスケ氏など、コンポーザー/アレンジャーの傍ら、プログレ系ユニットで活動されているという方もいらっしゃいます。


2013年9月10日火曜日

笹井隆司/川上泰広『ファイナルファンタジーUSA ミスティッククエスト サウンドコレクション』(1993)

アメリカからの逆輸入の形で日本版が発売されたのが1993年9月10日。今年の9月でちょうど20周年を迎えました。

ミスティック・クエスト サウンドコレクションズミスティック・クエスト サウンドコレクションズ
(1993/09/10)
ゲームミュージック

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「海外版ファイナルファンタジー」として発売された「ミスティッククエスト」のサウンドトラック。海外向けということでシナリオやシステムが従来のFFとは大きくかけ離れたものになり、逆輸入でリリースされた日本では不評を買ったそうですが、笹井隆司 / 川上泰広の両氏による楽曲は本家シリーズに勝るとも劣らない素晴らしい仕上がり。プログレッシヴ・ロック・バンド NOVELAの元ベーシストであった笹井氏が手がけた楽曲はアグレッシヴな曲調がメインで、プログレ/ハード・ロックのテイストを覗かせたもので、"バトル1""バトル3"などの戦闘曲や、"運命の丘"は、いずれもイントロの時点でグッとツカんでくるバツグンのキラーチューン。ギターサウンドの切り込ませ方やドラムサウンドの使い方の巧さは流石といったところです。そんな"動"の楽曲で押しに押しまくる笹井氏に対して、ゆるやかに流れていくメロディや雰囲気を重視した"静"の楽曲で支える川上氏も、また見逃せないところ。双方の楽曲があってこそのミスティッククエストなのであります。このサントラでしか聴けない "MYSTIC RE-QUEST" "RE-MIXTIC QUEST"と題された3曲のアレンジ・ヴァージョンも、双方の持ち味を存分に生かした聴き応えのある仕上がりになっております。



ちなみに、ミスティッククエストの監修を手がけたのは元クリスタルソフト~スクウェア大阪、現アルファドリームの藤岡千尋氏ですが、彼も笹井氏と同様プログレ・バンド出身(ミスターシリウスというバンドにドラマーとして在籍)でありました。

笹井隆司:Wikipedia
ファイナルファンタジーUSA ミスティッククエスト:Wikipedia
Final Fantasy USA: Mystic Quest Sound Collections - VGMdb
笹井隆司 - VGMdb
川上泰広 - VGMdb

「School of Rock: Interview with Squaresoft Composer Ryuji Sasai」
http://www.originalsoundversion.com/school-of-rock-interview-with-squaresoft-composer-ryuji-sasai/
2009年のインタビュー記事。

2013年9月9日月曜日

ぱっちりひつじ『ぽぷぺぴぱ』(2013)



メンバーが夢に見た様々な世界を歌う非現実系テクニカル・ポップ・バンド ぱっちりひつじの、昨年の衝撃のデビューアルバム『ゆめにっき』に続く3曲+α入りマキシシングル。元々はアルバム用に制作していたものの、クセが強いのでアルバムにはちょっと…という曲を集めたのが今回の作品だそうです。1曲目"ぽぷぺぴぱ"は、レコーディング中に突如現れた「そら豆型のポップ・ノイズの妖精」に困惑しながらも愉快に振り回されるという、5拍子のリズムで繰り返される「ぽぷぺぴぱ」のフレーズも印象深い楽曲。ヒネリのあるポップセンスが随所で効いており、一見すると明快かつキャッチーなようで、その実 一筋縄ではいかない仕上がりなのがぱっちりひつじの楽曲であります。

シリアスなイントロからストロングなプログレッシヴ・メタルへと雪崩れ込む2曲目"あかときいろとちゃいろ"は、マンションの一室で繰り広げられる、身の毛のよだつ「えのぐのとびちる」光景を歌った1曲。「腕も足も何もいらない」「切り落としてしまえ」と、いつになく詞の猟奇的なエグさもさることながら、バンドのハードでテクニカルな演奏、苛烈な展開にさらに拍車をかけるかのような男声ヴォーカルの絶叫も差し挟まれ、なるほどアルバムに入れた日には明らかに浮いてしまうことウケアイな【真っ黒】な曲に仕上がっています。しかしラストでは何事もなかったかのようにポップなメロディへと切り替わり、マンションの外の平和な日常風景を映し出しています。部屋の中のこの世のものとは思えぬ出来事で窓の外にまで垂れてくるほどに飛び散った<さんしょくのえのぐ>は、外の人達がおいしくいただきましたとさ。めでたしめでたし……。

夢の中の辞典で見かけたヘンな単語について歌った3曲目の"シュリーフスロスセヴェセヴェセヴェセヴェランス(shriefslothseveseveseveseverance)"は、何とも不思議な語感の長くてややこしいタイトルがまずもって目を引きます(個人的にはディズニーのミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の楽曲"スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス"を思い出しました)。楽曲展開こそストレートですが、脱力を誘うリズムとメロディ、暖かみのあるトーンを奏でるシンセに包まれた小粋なプログレ・ポップ・チューン。前作における"あみずし"のような、ヘンテコリンなセンスでぶっちぎった1曲です。

ボーナス・トラックには、各パートを抜いたインスト・トラックが7曲収録されております。「歌や楽器を重ねて加工した状態であれば、動画サイトへのアップロードは自由」とのことです。テクニカルな仕掛けが施されているゆえ、カヴァーするのはなかなか難しそうですが…(笑)



ぱっちりひつじ:公式
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空間想庫 - 空間金魚web直販店 -(←アルバムの購入はコチラから)
ぱっちりひつじ『ゆめにっき1』(2012)

2013年9月8日日曜日

ASTURIAS『Cryptogam Illusion』(1993)

祝・再発


クリプトガム・イリュージョン(紙ジャケット仕様)クリプトガム・イリュージョン(紙ジャケット仕様)
(2013/09/04)
アストゥーリアス

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大山曜氏率いるプログレッシヴ・ロック・ユニット アストゥーリアスの3rdアルバム。エグベルト・ジスモンチからの影響をより強く押し出したと言うことで、今作には前作、前々作におけるマイク・オールドフィールドばりの長編曲はありません。弦楽隊をフィーチャーしたり、ヴォーカル曲を入れたりと、コンパクトな楽曲で様々な試みとアイデアを聴かせてくれます。サウンド面でも構築面でも洗練された分、曲調を多彩ととるか散漫ととるかで意見が分かれそうですが、アコースティックな味わいの比重が大きくなってきているので、後のアコースティック・アストゥーリアスへ繋がっていくものが本作で多く見出せるのではないかと。軽やかに弾け飛ぶかのようなピアノで幕を開ける"Distance"。ヴィオラとファゴット、そしてピアノの編成で奏でられる"Adolecencia"。ぬめるようなチェロの音色が楽曲の間を縫い、存在感を示す"Cryptogam Illusion"。軽くパーカッシヴなバックのサウンドに、シンセがささやかに煌く幕間的なナンバー"Mistral Island"。スタイリッシュに変拍子を刻みながらもなお燃え盛るアンサンブルがこの曲への意気込みを感じさせるパワフルなフュージョン・ナンバー"Phoenix"。悲しげながらも切なさを感じる冷たさに満ちた多重録音曲"Glacier"は、「シルヴァサーガ」(「ミネルバトンサーガ」の続編として、92年にセタから発売されたファミコンソフト)の楽曲のリメイク。"Cyber Transmission"は、クールなたたずまいの内に迸る勢いを秘めたエレクトロニック・インスト・ナンバー。そして"Dansa Das Borboletas"は、本作のハイライトと呼ぶにふさわしい1曲。熱を孕んだバックのアンサンブルにどこまでも涼しげなシンセ、慈愛に満ちたギターが交わり、地鳴りにも似た重厚な響きで聴き手を包み込んでいく佳曲。大山氏もこの曲はお気に入りなんだそうな。ラストは上野洋子さんのポルトガル語歌唱とアコースティック・ギターのシンプルな編成でしっとりたおやかに聴かせる"O Tempo Passa"。楽曲の終盤では"Cryptogam Illusion"のフレーズをリプライズしつつ、静かに幕を閉じてゆきます。本作をもってアストゥーリアスは活動を停止し、数年間の沈黙に入ります。



Asturias Official Web Site
Asturias Offical Web Site -「Cryptogam Illusion」 - 試聴/曲解説
ASTURIAS - Wikipedia
大山曜 - Wikipedia

2013年9月7日土曜日

ASTURIAS『Brilliant Streams』(1990)

祝・再発


ブリリアント・ストリームス(紙ジャケット仕様)ブリリアント・ストリームス(紙ジャケット仕様)
(2013/09/04)
アストゥーリアス

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大山曜氏率いるプログレッシヴ・ロック・ユニット アストゥーリアスの2ndアルバム。大山氏はPC-98の「獣神ローガス」や「ディガンの魔石」、FCの「ミネルバトンサーガ」などの作曲を手がけられた経歴を持ち、近年ではZIZZ STUDIOを通してニトロプラス作品の作曲を手がけられることも多い御仁。本作のメンバーは大山氏(syn.g.b.perc)に、新●月の津田治彦氏(g)&花本彰氏(kbd)、そしてアフレイタスの桜井和美氏(dr)を加えての4人。当時ZABADAKに在籍されていた上野洋子さん(chorus)をはじめとして、ピアノ、ファゴット奏者など数人のゲストも迎えて、牧歌的で心休まるフレーズに彩られたニューエイジ寄りのプログレッシヴな多重録音インスト・サウンドが全4曲に渡って展開されております。くすぐったさを感じるシンセフレーズが出迎え、ギターサウンドが包み込む"Highland"。コーラスをアクセントにピアノがしっとりと様々な表情を映し出す"Nostalgia"。ギターが切なげにうなりを上げ、ピアノ/シンセの流麗なフレーズが底辺を流れ、ハードかつソリッドな展開で魅せてゆく"Rogus"(ちなみにこの曲は「獣神ローガス」のメイン楽曲のリメイクでもあります)。そして今作のハイライトである"Brilliant Streams"は、煌びやかな展開をメインに、ゆったりと、力強く流れてゆく22分以上の大曲。前作の"Circle In The Forest"同様、マイク・オールドフィールドからの影響を強く押し出した、耳で聴く一大長編に仕上がっております。ちなみにこの曲の終盤のパートは、大山氏がコンポーザーの一人として関わられた、1989年発表のPC-98用RPG作品「ダークレイス」(開発元:アーテック)のエンディング曲(下二つ目の動画の4:40から)のリメイクでもあります。




スタッフロールの「作曲・アレンジ」で 津田治彦氏、大山曜氏、西村大平氏、岩田匡治氏(FM音源アレンジも担当)の名前が確認できます。また、『フォーチュンクエスト』や『デュアン・サーク』の著者である深沢美潮さんの名前が「マニュアル制作」にクレジットされております。

Asturias Official Web Site
Asturias Offical Web Site -「Brilliant Streams」 - 試聴/曲解説
ASTURIAS - Wikipedia
大山曜 - Wikipedia
ZIZZ STUDIO - Wikipedia
獣神ローガス - Wikipedia

2013年9月6日金曜日

ASTURIAS 1987年のデモテープ

アストゥーリアスの、今となってはレアなカセット音源。




A面
1:流氷
2:実験1
3:Ice Palace
4:Focus4

-----------------
B面
1:エイリアン
2:Angel Tree
3:ユートピアノ
4:Horizon


大山曜氏率いるASTURIASは1988年にキングレコードのCRIMEレーベルから1stアルバム『Circle In The Forest』を発表しデビューを果たすのですが、この8曲入りのデモテープはその1年前である1987年に制作されたものです。A面1曲目の"流氷"("Ryu-Hyo")、2曲目の"実験1"("Clairvoyance")、そしてB面2曲目の"Angel Tree"は、さらなるブラッシュアップを経て『Circle In The Forest』に収録されることになります。また、1987年と言えば、大山氏が楽曲を担当された『ミネルバトンサーガ』が発売された年でもあります(開発元は「ディガンの魔石」や「獣神ローガス」のアーテック、発売元はタイトー)。A面3曲目の"Ice Palace"は、ゲーム中に登場するアイスパレスのBGMのアレンジ・ヴァージョンとして仕上がっており、冷ややかで神秘的なイメージを抱かせるアレンジとなっております。前述の2曲や、"Focus4" "ユートピアノ"のように、後々のアストゥーリアスに繋がっていく楽曲もあれば、中期のKING CRIMSONのようなハードな展開を聴かせる"エイリアン"、カラッとしたギターを聴かせるプログレ・ハード寄りのナンバー"Horizon"(個人的にはBOSTONあたりのアメリカのバンドが思い浮かびました)など、デビュー後では見られない作風の楽曲もあるのがまた興味深くあります。方向性を模索している印象は感じるものの、流石の内容です。



【追記】
B面1曲目の"エイリアン"は、「シルヴァ・サーガ」(ミネルバトンサーガの続編として92年にセタから発売されたファミコンソフト)の曲のプロトタイプであることが判明しました。



また、アストゥーリアスは1987年の8月23日に吉祥寺のシルバーエレファントで初めてのライヴを行いました。メンバーは大山氏、新●月の津田治彦氏(g)&花本彰氏(kbd)のご両人に、アフレイタスの桜井和美氏(dr)、そして、後にBuffalo Daughterを結成する大野由美子さん(p)の5名。アンコールでは新●月の名曲"鬼"を演奏したそうです。

「初期アストゥーリアス・幻のライブ(その1)」
http://www.geocities.jp/gonzo1go/earlylive.html

大山曜:Wikipedia
ASTURIAS:公式
ミネルバトンサーガ ラゴンの復活:Wikipedia

2013年9月5日木曜日

ASTURIAS『Circle In The Forest』(1988)

祝、再発


サークル・イン・ザ・フォレスト(紙ジャケット仕様)サークル・イン・ザ・フォレスト(紙ジャケット仕様)
(2013/09/04)
アストゥーリアス

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大山曜氏率いる多重録音プログレッシヴ・ロック・ユニット アストゥーリアスが1988年に発表した記念すべきデビュー・アルバム。後にアコースティック・アストゥーリアスでもリメイクされる1曲目の"Ryu-Hyo"が始まった瞬間から、大山氏が込めた情感がメロディの瑞々しさと力強さとともにたっぷりと広がります。メリハリの効いた"Clairvoyance"は、実験の成果を試したかったとのことで作られた楽曲だそうで、ピリッと刺激的なギターサウンドが映えるスタイリッシュな趣の曲です。シンフォニックな下地に暖かみ溢れるアコースティック・ギターが乗る"Angel Tree"は、大山氏が作曲に関わられた、アーテック&スタジオぬえ制作による1988年発表のRPG作品『ディガンの魔石』(PC-88/PC-98他)"Abilia Hair"のリメイク・ヴァージョンであり、シンプルながらも切々と染み入るメロディがたまらない小品です。"Tightrope"はしなやかなピアノとスリリングなギターがバランスをとりつつも、勢い良く突き進むアップテンポの楽曲。そして本作のハイライトである20分以上に及ぶ大曲"Circle In The Forest"は、大山氏が敬愛してやまないマイク・オールドフィールドからの影響を強く押し出した渾身の力作。大山氏が楽曲を手がけた1987年発表のファミコンRPG『ミネルバトン・サーガ』(こちらも制作はアーテック)のタイトルテーマで幕開けする冒頭、神秘的な雰囲気から突然イキのいいギターのフレーズが飛び出し、上野洋子譲のコーラスも絡めて牧歌的に進んでゆく序盤。ビートを強調した煌びやかかつ躍動的な中盤。再び『ディガンの魔石』の楽曲から"Cordarn" "Euress"のフレーズをフィーチャーし、一転して切々とした展開を聴かせる終盤。最後はパーカッシヴなリズム、徐々に熱を帯びて鳴り響くギターサウンドがグイグイと押し出され、コーラスのリプライズで雄大に幕を閉じていきます。

Asturias Official Web Site
Asturias Offical Web Site -「Circle In The Forest」試聴/曲解説
ミネルバトン・サーガ ラゴンの復活:Wikipedia
大山曜:Wikipedia

津田治彦/大山曜/西村大平/崎元仁(編曲)『ディガンの魔石(PC-88,PC-98他/アーテック)』(1988)








アーテック&スタジオぬえ制作による1988年のRPG作品「ディガンの魔石」(PC-88、PC-98他)。自分はソフトがリリースされた88年にリアルタイムでプレイはしておらず、実際にプレイしたのは発売から数年後。90年の半ば頃だったかと思います(当時小学生)。その頃SFCに飽きてしまい、何か面白いものはないかと色々と探していたら家の奥に放置してあったPC-98が目に留まり、自分の中で遅いPC-98ブームが到来。ボコスカウォーズにハマり、上海にハマり、といった具合に家にあったソフトを片っ端からプレイしているうちにひょんなことからこのソフトを見つけて・・・というのがキッカケだったと記憶しています。

謎の奇病に罹ってしまった妻を助けるため旅立った主人公ディノ、いつしか彼は惑星の命運を握る大いなるガデュリン計画に巻き込まれていく…というのがストーリーの大筋ですが、バイトしてセコセコと金を貯めることがかなり重要だったり、1人病気になると仲間に次々とうつったり(場合によっては性病にも罹る)、村人に襲い掛かることができたりと、細かいところで生々しい凝ったつくりだったのが妙味であり、ストーリー以上に印象深かったです。ドップリとハマってしまったのも、そのリアルさが当時の自分の琴線に触れるところがあったんでしょうかね。説明書をロクに読まなかったので、途中で詰まるわ最初からやり直すハメになるわとかなり行き当たりばったりのメチャクチャなプレイをしていたのですが、それでもゴリ押しで何とかクリアまでこぎつけました。また、加藤直之によるパッケージイラスト、淡いグラフィック、印象的なキャラなど、視覚面でのインパクトも今となってはたまらなく愛おしく感じます。ただ、職業斡旋所係員と快楽の館の従業員のデザインは今でも少々トラウマ。


当時は音楽に対しては殆ど気に留めていなかったのですが、今思うと当時の自分は勿体無いことをしてたなあとつくづく思います。改めて聴いてみるとメロディの良い曲が実に多く、特に「Euress」「Honeymoon」「Abilia Hair」などの楽曲のメロディは思い出補正抜きで心に響きます(ちなみに、後にSFCで発表される「ガデュリン」(世界観・設定が共通)には本作の楽曲の多くがリメイクされることになります)。実家のPC-98はスクラップに出され、フロッピーもどこかへ行ってしまいましたが、出来ることならもう一度プレイしたいなあという思いがあります。



ディガンの魔石の楽曲はサイコソニックというグループが手掛けているのですが、そのメンバーには70年代日本のプログレッシヴ・ロックを語る上では避けては通れないバンドである新●月のギタリストである津田治彦氏と、ニューエイジ・テイストの多重録音サウンドを聴かせるこだわりのプログレッシヴ・ユニットASTURIASのフロントマンである大山曜氏も名を連ねておりました。ASTURIASはディガンの魔石のソフトが発売された同年に1stアルバム『Circle In The Forest』をリリースしてデビューしており、同アルバムにはゲーム本編に使われた「Abilia Hair」「Angel Tree」のタイトルでリメイクされ、アルバムのタイトル曲である「Circle In The Forest」の中盤から終盤にかけての展開に、「Euress」「Cordarn」のメロディが組み込まれていたりと、興味深い内容になっております。

サークル・イン・ザ・フォレスト(紙ジャケット仕様)サークル・イン・ザ・フォレスト(紙ジャケット仕様)
(2013/09/04)
アストゥーリアス

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みろんPさんによる、ディガンの魔石で流れるほとんどの楽曲の音色割り当て&アレンジ集。隅から隅まで愛に溢れた、非常に丁寧な仕上がりで、楽曲の魅力も再発見できるものになっております。こちらも是非オススメです。




ディガンの魔石:Wikipedia
Retro Game Music Streaming Radio:ディガンの魔石
ディガンの魔石
大山曜:Wikipedia
津田治彦:Wikipedia

2013年9月1日日曜日

セガジェネシス(メガドライブ)音源で聴くGENESIS(バンド)

ふと、GENESIS(バンド)の曲をSEGA GENESIS(メガドライブ)音源でカヴァーなりアレンジしたものはないかしらと思い立って、YouTubeを漁っていたところ、割とあっさりと見つかりました。奇特な人もいるもんですね。流石に選曲はピーター・ガブリエル期ではなく、ポップなフィル・コリンズ期でありますが。







投稿者の"TheLegendOfRenegade"という人はフィル・コリンズのソロ曲もいくつかメガドライブ音源でカヴァーしています。しかもその音源をバックに自ら踊っている動画もあったりして、なかなかハイな具合にキマっていらっしゃる。