2013年6月29日土曜日

FAIRCHILD『YOURS』(1988)

YOURSYOURS
(1994/05/20)
FAIRCHILD

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 現在はバラエティタレントとして活動しているYOUがかつて在籍していたテクノ・ポップ/J-POPユニット FAIRCHILD。ユニットの前身となったのは、戸田誠司氏率いるテクノ・ポップ・バンド SHI-SHONEN。1985年に本名の江原由希子名義でアイドル歌手としてデビューしたYOUさんは、ラジカル・ガジベリビンバ・システム(竹中直人氏やいとうせいこう氏らも在籍していた演劇ユニット)への客演などでも活動を行っていたのですが、その時の彼女のパフォーマンスを見た戸田氏がSHI-SHONENへ誘ったんだとか。さらに、ギターの川口浩和氏を迎えて、88年に発表したこの『Yours』でフェアチャイルドとしてデビューを果たします。

 SHI-SHONENで展開していたテクノ・ポップのテイストも若干残しつつ、そこにポピュラーなロック/ポップスのフィーリングを大胆に織り交ぜることでよりキャッチーな方向に舵を取ったサウンドは1stの時点で見事に成功しており、随所でフィーチャーされる川口氏のハードなエッジの効いたギタープレイも、楽曲にロック的なアクセントを程よく与えています。また、本作に参加されているミュージシャンには、REAL FISH(SHI-SHONENの活動と平行して矢口氏がリーダーを務めていたバンド)の矢口博康氏(sax)/美尾洋乃さん(backing vo)、カーネーションの矢部浩志氏(dr)、BOXの小室和之氏(backing vo)、作編曲家の門倉聡氏(kbd)の名前も見られます。

 YOUさんのヴォーカルとキャラクターはこの頃はまだ控えめで初々しさも残りますが、ちょっとマセた感じの歌い方が楽曲の魅力をグッと高めております(個人的には、この頃のYOUさんの声が非常に好きです)。そして何より、聴き手のツボを押さえた戸田氏の作編曲の手腕の見事さ、これに尽きます。楽しげなコーラスにも彩られた元気なポップ・チューン「おまかせピタゴラス」(当時の『さんまのまんま』のエンディング・タイアップ曲であり、シングル・カットされました)。ドラムンベースの走りのようなバッキングが疾走感たっぷりな「双子のバイオリン」。凝ったバッキングトラックも聴きものな「悪戯の森のレイン」。壮大な詞に、どこまでも透き通るような雰囲気も素晴らしい名バラード「アウラ」(作詞は、かのヒカシューの巻上公一氏)。初期の代表曲であり、"ヤッター♪"の声が差し挟まれるファニーなアレンジも面白い「嘆きの健康優良児」(2ndシングル『Bye Bye キッチンガール』のカップリング曲)等、当時のJ-POPシーンともうまく折り合いをつけた、80's歌謡エレポップの佳曲揃い。また、1曲だけ戸田氏がヴォーカルをとった「NEUTROPIC」という曲があります。この曲ではSHI-SHONEN時代を彷彿とさせる硬質なテクノ・ポップを展開されているのも、聴き逃せないポイントでしょう。本作発表当時は"アイドルに飽きたコ、寄っといで"というキャッチコピーがついていたそうですが、ユニットの方向性だけでなく、魅力の詰まったアルバムの内容も見事に形容した凄くいいコピーだなあと思います。本作と、翌年に発表された2ndアルバム『FLOWER BURGER』は、是非ともセットで聴いていただきたいところです。




There She Goes Again~戸田誠司さん
 - All About(テクノポップ/アーティストインタヴュー)
http://allabout.co.jp/gm/gc/205718/4/

FAIRCHILD:Wikipedia
戸田誠司:Wikipedia
YOU:Wikipedia

2013年6月28日金曜日

PABLO EL ENTERRADOR 『2 (Re-Issue)』(1998/2013)

セカンドセカンド
(2013/06/25)
パブロ・エル・エンテラドール

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 イギリスやアメリカのプログレッシヴ・ロック・シーンは70年代中盤以降はある程度沈静化してしまうものの、東欧や南米では70年代後半から80年代にかけて華開いたバンドが数多く存在します。長き雌伏の時を経てアルバム・デビューを果たしたアルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・バンド PABLO EL ENTERRADOR(墓堀りパブロ)もそんなバンドの一つ。1stアルバムのジャケットは、一見すると牧歌的な雰囲気のジャケットながら、農夫が官憲や権力者を生き埋めにしているという穏やかならぬ風刺の効いたもので、彼らの苦節の活動の一端が偲ばれるものにもなっています。というのも、アルゼンチンは70年代半ばから80年代初頭にかけて軍事独裁政権下にあり、数多くの市民が弾圧されるという情勢でありました。そんな中での音楽活動は容易なものではなかったでしょうが、彼らは地道に政府に対してアゲインストしていたのです。


パブロ・エル・エンテラドール
パブロ・エル・エンテラドール
マーキー・インコーポレイティド (2011-11-25)
売り上げランキング: 397,662


 軍事独裁政権が終焉を迎えた1983年に発表された1stアルバム『Pablo El Enterrador』は、70年代後半の英国プログレからの影響が色濃いコンパクトな作風ながら、哀愁を湛えつつも伸びやかなメロディも満載されたシンフォニック・ロックを全編に渡って聴かせる内容で、後にアルバムが各国へと伝わった際には「アルゼンチン・プログレッシヴ・ロック屈指のアルバム」とも評された名盤でありました。アルバム発表後しばらくしてバンドが活動を沈黙してしまい、幻に近い存在となってしまったことも、高い評価に拍車をかけていたのではないかと思います。その後10年以上の長きに渡りバンドの活動には動きがなかったのですが、1995年ごろよりメンバーが再び集まり2ndアルバムに向けた楽曲制作を開始、数年の期間を経て完成したのが、今回ご紹介する『2』です。先ごろ、アルゼンチンのレーベルViajero Immovilよりボーナス・トラックを追加収録してリイシューされました。

 本作ではキーボード/ピアノを主軸にしたサウンドの元、暖かみのある歌もの楽曲が全編に渡り展開されております。プログレ・ハード/AORのテイストが強まったこともあり、前作で見せたバンドの一体感や、インスト面でのスリリングな疾走感、ダイナミズムなどを求める向きには物足りなさを感じてしまう部分もありますが、ドラマティックで親しみやすいメロディなど、バンドの核となる部分は80年代の頃と全く変わっていません。「Nariguetas」「La ciudad eterna」「Mitad por mitad」など、ぶ厚くも人懐っこいキーボードのメロディに寄り添うかのようにして歌い上げるハートウォーミングなヴォーカルが琴線に触れてくる場面が何度も訪れます。また、前作に収録されていた「Accionista」が、リメイクされて収録されています。前作では抜けの良さと疾走感のあるポップ・ロックでしたが、本作の方はテンポを落としたハードロック寄りのアレンジで、どちらのヴァージョンも甲乙つけ難い仕上がりです。ボーナス・トラックは、1998年3月に本国アルゼンチンで行われたライヴからの音源で、1stアルバムからの4曲(「Carrousell de la vieja idiotez」「Elefante de papel」「Espiritu esfumado」「Accionista」と、なかなかオイシイ選曲)と、Marcelo Saliのドラム・ソロ、合わせて5曲が収録されています。スタジオ版とさしたる違いはないですが、バンドのツイン・キーボードの一角を担っていたJorge Antunが亡くなられている今となっては、貴重な音源でありましょう。バンドは今後再結成する意向があるのかはわかりませんが、メンバーの一人であるJose Maria Blancは現在ソロや自身のバンドで活動を続けているようです。




PABLO EL ENTERRADOR - Prog Archives

2013年6月27日木曜日

PRINCE OF DARKNESS(Tony Dickinson)「Prancing Dad」

"妖星乱舞(Dancing Mad)"といえば、ファイナルファンタジーVIの最終ボス戦で流れる全四楽章の大曲。植松伸夫氏による入魂のプログレ組曲であり、言わずと知れた名曲ですが、ふと思い立ってこの曲のプログレッシヴ・メタル・アレンジを探していたら、ゲーム・ミュージック・アレンジ投稿サイトの大手であるOverClocked ReMixでこんな好アレンジを発見。

Final Fantasy VI 'Prancing Dad' [Dancing Mad, OWA (FF7)] by Prince of Darkness

途中でFFVIIACの"再臨:片翼の天使"のフレーズが入ってくるのはともかくとして、DREAM THEATER"Metropolis Part.1"FROST*"Black Light Machine"のソロパートのフレーズもちょろっと入っているのが何ともニヤリとさせられますが、そんな遊び心を挟みつつも11分を越える尺を最後まで圧巻のアレンジで聴かせる手腕がまことに素晴らしいのであります。只者ではないなと思い、アレンジャーのPrince Of DarknessことTony Dickinson(トニー・ディッキンソン)氏について調べてみると、2011年の10月末から2012年の1月末にかけて公募が行われていた、EARTHBOUND PAPASの公式リミックス/アレンジ・コンテストで最優秀賞の栄誉に輝いたのがこのトニー氏でした。なるほど納得。ちなみにコンテストの最優秀者はEARTHBOUND PAPASの次回作にゲスト・パフォーマーとして出演することが出来るそうです。ということは、彼のプレイをアルバムで聴ける日もそう遠くないということですね。

【EARTHBOUND PAPAS"Metal Hypnotized" Arrange/Remix Contest】
http://www.dogearrecords.com/Earthbound_Papas/arrange.html

こちらが最優秀賞に輝いた"Metal Hypnotized"のトニー氏によるアレンジ・ヴァージョン"Metal Symphonized"。最後の最後でRUSH"YYZ"を入れていてお茶目。


また、トニー氏のYouTubeの公式アカウントでは、昨年行われた第10回MAGFEST(アメリカ有数のゲーム・ミュージック・イベント)のリハーサルで、EARTHBOUND PAPASの面々と共にRUSH"YYZ"を和気藹々とカヴァー・セッションしている動画がアップロードされています。


Tony Dickinson - Official Site
Tony Dickinson - Youtube

2013年6月26日水曜日

ゼロ・コーポレーションを愛する者たちよ……

「キャプテン和田の劇的メタル」の最近のバックナンバーをふと見ていたのだけど、今年の3月に元ゼロ・コーポレーション社長の橋本徹氏がゲストで出てたの ね。しかも3週に渡っているとは。いずれもPodcastで聴けるので、ヒマを見つけて聴く所存。橋本社長、今はレストランのオーナー(兼シェフ)やって るってのは本当だったんだなあ。

第336:ゼロを愛する者たちよ、ここに集え!Part.1 伝説のゼロ・コーポレーション元社長が劇的メタルに登場だ!!!
http://airplug.cocolog-nifty.com/captain/2013/03/336part1-6e12.html

第337:ゼロを愛する者たちよ、ここに集え!Part.2 信頼と躍進!!! そして終焉。
http://airplug.cocolog-nifty.com/captain/2013/03/test.html

第338:ゼロを愛する者たちよ、ここに集え!Part.3 TOKYO美食伝説PapiPopiをヨロシク!!!
http://airplug.cocolog-nifty.com/captain/2013/03/338part3-tokyop.html

PCエンジン版「森田将棋」と、PCエンジン狂気のシューティング「パラノイア」のプログレめいた曲

少し前に、並木学氏がこんなことをつぶやいておられました。


何だかとても興味をそそられたので、調べてみました。まずは「森田将棋PC」(1991/NECアベニュー)


なるほど、いやらしい曲調。そそられます。ゲームの駒のもっさりした動きに反して、楽曲がやたらと焦燥感を煽ってくるというこの奇妙なマッチングも味わい深い。

そして、「パラノイア」(1990/ナグザット)

"悪魔の作り出した精神世界に迷い込んだ主人公が、己の魂を開放するために戦闘機になって5つのステージを進んでいく"という設定だそうで、世界観も敵の造型もBGMも狂気じみています。制作陣は何を考えていたんでしょうか、制作陣そのものが悪夢に侵されていたのでしょうか…。ちなみに2周するとクリアだそうですが、2周目をクリアしても最後に悪魔から"FUCK YOU"の言葉とともに中指を立てられて終わります。スタッフロールもないみたいです。スタッフがとても気になったのですが、これでは私の魂も開放されません。

森田将棋 - Wikipedia
パラノイア(STG) - Wikipedia

2013年6月25日火曜日

畑亜貴「ライトクルセイダー(メガドライブ/トレジャー)」(1995)

トレジャー開発によるメガドライブ用アクションRPGソフト「ライトクルセイダー」。このゲームのBGMの作曲者は畑亜貴さん。楽曲は未サントラ化ですが、全曲YouTubeで聴けます。ファンタジーな世界観に合わせたクラシカルなイメージや妖しいイメージの曲が多いです。畑さんのカラーが出ている曲もチラホラ。

http://www.youtube.com/watch?v=s5eqputSRHU&list=PLA60E11CC0869293C




ライトクルセイダー | Wii(R) バーチャルコンソール メガドライブ 公式サイト
ライトクルセイダー - Wikipedia
畑亜貴「美少女戦士セーラームーン(MEGADRIVE/マーバ)」(1994)

2013年6月24日月曜日

中潟憲雄/塩田信之「マックスウォーリアー 惑星戒厳令(ファミコン/バップ)」(1991)

1991年にバップより発売されたクォータービューのアクションゲーム。作曲者が『暴れん坊天狗』の中潟憲雄氏と、『サマーカーニバル'92 烈火』の塩田信之氏。方やエキサイテングシューテング、方やスーパーハードシューティングの楽曲を手がけたこの二人がセットで関わってるというのはなんとも興味深い。


ちなみに、1990年に発表されたタイトーの「ブライファイター」では、アーケードとファミコンで別々に楽曲を担当されている。アーケード版が塩田信之氏で、ファミコン版が中潟憲雄氏。

2013年6月23日日曜日

畑亜貴『棺桶島』『世界なんて終わりなさい』/月比古『弦は呪縛の指で鳴る』

棺桶島棺桶島
(1999/02/19)
畑亜貴

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 ファミコンの「ラグランジュポイント」やスーパーファミコンの「魂斗羅スピリッツ」「魍魎戦記MADARA2」、メガドライブの「ダイナマイトヘッディー」など、90年代にコナミやトレジャーの数々のゲーム作品の音楽制作に携わり、現在は数多くのアニメ/ゲーム作品に関わられているコンポーザー/アレンジャー/作詞家 畑亜貴さんの1stソロ・アルバム。タイトルの『棺桶島』は、モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパン シリーズの一作から取られたもの。シリーズの中でも伝奇/サスペンス色がことのほか強く、ほぼ全編に渡ってダークなトーンで覆われた異色の作品のタイトルをアルバムにしてしまうあたりからも、畑さんのこだわりが少なからず伺えます。90年代に「AKI BLAME AKI」というバンドで活動されていた畑さんが、ギタリストのMICKY(S.S.T.BANDの並木晃一氏)のサポートを得て制作された本作は、その内容から「破滅系プログレ」と称されていたようで、暗く透き通った音色を多用した打ち込み中心のサウンドで仕上げられています。ライブのオープニングに使われたスペイシーなインスト「天狼星」や、ミステリアスに後を引くヴォーカルに蟲惑される「棺桶島」「涙の木には叫ぶ花」、ワルツ調の「囚われる」、サディズム溢れるエレクトロ・ポップ「加虐」など、ゲーム・ミュージック/アニソンのテイストも少々匂わせつつも、じっとりと妖しくダウナーなムードが全体を覆っており、幻想・退廃・耽美なイメージを喚起させる詞と相まって、ディープな印象を与えるシンセサイザー・ミュージック。また、随所で聴ける並木氏のハードなギタープレイが刺激的な盛り上がりを与えており、雰囲気重視の楽曲に終始していないのもまたポイントでありましょう。まだ発展途上な所もありますが、既に個性は十分備えており、聴き所は多いです。上野洋子さんやALI PROJECTあたりの作品が好きな方にも是非。


世界なんて終わりなさい世界なんて終わりなさい
(1999/02/19)
畑亜貴

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 95年から96年に発表されたカセットテープ音源などに未発表曲を加えて99年にリリースされた2ndアルバム(また、同時期に『棺桶島』が再発されています)。打ち込み主体ですが、楽曲のヴァリエーションは『棺桶島』以上、独自の世界観にもさらに磨きがかかっています。"死"や"別離"といったイメージを喚起させて止まない詞が、煌びやかに躍動するプログレ・チューン「針の実」(ギターの熱演も素晴らしい)、80'sポップスの香り漂う「紀元前」、ファンク/フュージョン・タッチの「赤い蝋燭」、メロディが冷ややかな広がりを見せる「窒素揺れて」、ドラマティックかつ妖美なスロウ・バラード「海への眺めの」など、翳りを帯びたアンニュイなムードと、キャッチーなポップ・センスが程よくブレンドされたプログレッシヴな味わいの佳曲揃い。並木氏による冴えたギタープレイもさらにフィーチャーされています。また、前作ではライヴのオープニングとして使用された短めのヴァージョンが収録されていた「天狼星」「メソポタミア」ですが、本作ではさらなるアレンジが加えられたフル・ヴァージョンで収録されております。後に月比古でリメイクされる楽曲も多数収録されており、両作品を聴き比べてみるもまた一興ではないでしょうか。そして本作を語る上で外せないのが、ラストを飾る表題曲。希望に満ち溢れた荘厳なアレンジの中で、"何処にも行けずに流れるだけの 世界なんて終わりなさい" "消滅して又蘇るより 世界なんて終わりなさい"と歌われる、色んな意味で終幕にふさわしい1曲であります。破滅もまた一種の救いなのではないか、この曲を聴いていると思わずそんな気にもさせられてしまうのです。


弦は呪縛の指で鳴る弦は呪縛の指で鳴る
(2005/09/22)
月比古

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 コンポーザー/アレンジャー/作詞家として多岐に渡る活躍をされている畑亜貴さんが、自身の中に秘める退廃・耽美な世界観を内包した音楽性を展開するプログレッシヴ・ロック・バンド、月比古(つきひこ)の1stアルバム。バンドメンバーには並木晃一氏(g)や林克洋氏(kbd)といったS.S.T.BANDのメンバーや、プログレッシヴ・ハード・ロック・バンドSTARLESSの堀江睦男氏(dr)の名前も見られます。ソロ時代は打ち込みがメインだったゆえにサウンドの弱さが否めませんでしたが、バンド編成になったことにより大幅にグレードアップ。楽曲構成もより複雑・重厚になり、耽美幻想文学的なシンフォニック・プログレ・サウンドを追求しています。ディープな雰囲気を紡ぎつつも、いたずらにその中に埋没してしまうようなことはなく、メリハリの効いた仕上がり。バンド・アンサンブルは耽美なメロディを支えつつも、各人がしっかりと存在感を示しています。並木氏によるアラン・ホールズワースばりにシャープなジャズ・ロック系ギタープレイは出色。冒頭から鳴り響くメロトロン・サウンド(弾いているのはかの安西史孝氏であります)で幕開け、スロウテンポのアレンジによりねっとりとした情感が絡みつく「メソポタミア」、より劇的な展開に生まれ変わった「天狼星」など、過去のソロアルバムの楽曲のリメイクも非常に感慨深い仕上がりです。並木氏のささくれ立ったギタープレイが際立つ「琥珀」「窒素揺れて」、たっぷりとインタープレイを聴かせる長曲「無期灼熱」など、リメイク曲&濃厚なプログレ曲が続く中盤以降は特に必聴。傑作。


畑亜貴 - Wikipedia
AKI HATA†髑髏城

2013年6月22日土曜日

PROGENESI『Ulisse l'Alfiere Nero』(2013)

ユリシーズ 黒き先駆者ユリシーズ 黒き先駆者
(2013/06/25)
プロジェネシ

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 大御所バンドが息の長い活動を続けているだけでなく、半ば伝説的存在と化していたバンドが相次いで復活を遂げるなど、今なおイタリアのプログレッシヴ・ロック・シーンはメジャー/インディーズを問わず盛況でありますが、今回ご紹介するバンドは、温故知新系プログレッシヴ・ロック・バンド プロジェネジーのデビューアルバム。EL&P/キース・エマーソンからの影響大なキーボード・サウンドを主軸に、PFMやBANCO、Le Ormeなどの往年のイタリアン・ロック・バンドからのエッセンスや、ジャズ/クラシックの影響も取り込んだキーボード・プログレ・バンドです。いわゆる往年のプログレ・シーンをリスペクトしたフォロワー・タイプのバンドですが、彼らのサウンドはそのフォローの度合いが非常に高く、その上で攻めのキーボード・プログレを展開しているところが大きなポイントです。PFMの名曲「Celebration」を彷彿とさせる高揚感とノリの良さで聴かせるオープニングの「La Gioia della Pace」は、プログレ・ファンならば間違いなく心躍る1曲でありましょう。ギターはハードですが、適度にハードであってメタル寄りではないあたりにも、バンドのクラシカル・ロック志向がよく伺えます。続く「La Strategia」は、バンドのジャズ志向が強く打ち出しつつも、最終的にはやはりキーボード・プログレに落ち着くというもの。11分という本作で最長の楽曲である「Il Blue della Notte」は、めまぐるしくテンポを変えつつも、どっしりと構えたプレイで聴かせます。ゲストで参加しているヴァイオリン奏者、チェロ奏者(Issei Watanabeとクレジットされているところを見るに、日本人のようです)のプレイも絶妙なアクセントと彩りを添えています。「Il Rosso della Notte」は本作のハイライトといえる二部構成の長曲。キーボードとギターがせめぎ合っての疾走感は、EL&Pというよりはむしろオランダのクラシカル・ロック・バンド TRACEに近い印象を感じます。「Un Grande Eroe」は、オープニングの「La Gioia della Pace」のフレーズのリプライズをふんだんに交えつつ、素晴らしき大団円を迎えるシンフォニック・ロック。骨の髄までプログレ・ファン冥利に尽きるこってりとしたサウンドには思わず頬がほころびます。このバンドは間違いなく"当たり"でした。



PROGENESI - Official Site

2013年6月21日金曜日

畑亜貴「美少女戦士セーラームーン(メガドライブ/マーバ)」(1994)



94年にマーバというメーカーから発表された、メガドライブ用ソフト「美少女戦士セーラームーン」。ベルトスクロールアクション型の格闘ゲームで、93年にスーパーファミコン用ソフトで発表されたものの移植版であるとか。このメガドライブ版の楽曲を担当されていたのが畑亜貴さんだと聞き、とても興味が沸いたので色々調べていたところ、なんとYouTubeにゲームの全曲が上がっていました。一通り聴いてみたのですが、畑さんのソロアルバムでの作風と印象が変わらない楽曲もあったりして、なかなか面白い内容です。

美少女戦士セーラームーン(MD版、1994年 / マーバ)- タコタ仙人のベルトゲー道場
  http://tacota.web.fc2.com/sailor_md/index.html

「美少女戦士セーラームーン(MD)楽曲一覧」
 http://www.youtube.com/playlist?list=PL276EE368E750A002





せっかくなのでこちらもご紹介。畑さんが作詞・作曲・編曲・ヴォーカルを担当されたこの「天空7(テンクウセブン)」という曲は、96年ごろにリリースされた、TECHNO CIRCUSというユニット(?)の『TECHNORON』というCD(同人作品?)に収録されたものだとか。詳細はわかりませんが、今となっては超レアな曲であることは間違いなさそうです。

畑亜貴 - Wikipedia

2013年6月20日木曜日

「ダイナマイトヘッディー(メガドライブ/トレジャー)」(1994)

トレジャー開発による1994年のメガドライブのアクションゲーム「ダイナマイトヘッディー」。このゲームの楽曲はなぞなぞ鈴木氏と半沢紀夫氏、トレジャーの作品ではお馴染みの二人が中心となっていたようですが、そこに畑亜貴さんが2曲ほど提供されていたそうです。「SOUTH TOWN'S THEME」は畑さんらしいメロディがサラリと織り込まれた楽曲、「どうせ死んじゃうボスだもの」は、非常にアグレッシヴなサウンドが刺激的な疾走チューンです。

「SOUTH TOWN'S THEME」

「どうせ死んじゃうボスだもの」

ダイナマイト・ヘッディーダイナマイト・ヘッディー
(1994/10/19)
ゲーム・ミュージック、ROBIN SUCHY 他

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94年の10月にサウンドトラックCDも出ています。そこには2曲のヴォーカル・アレンジが収録されているのですが、うち1曲がコチラ。アレンジャーは松前公高氏

「HEADDY THE HERO(Vocal Arrange Version)」

えらくニッチな話で何ですが、このアレンジ版で歌っているROBIN SUCHY氏は、90年代後期にキーボード・プログレ・バンドGERARDにヴォーカルとして在籍されていた方でもあります。ロビン氏がバンドに加入したのは95年頃だったと思われるので、GERARDのマニアックなファンにとってはなかなか興味深い音源ではないでしょうか。


さらに余談ですが、ロビン氏が加入して第一作目のアルバムとなったGERARDの『The Pendulum』(1996)はキーボード・プログレの名作。オススメです。

ダイナマイトヘッディー - Wikipedia
Dynamite Headdy Soundtrack[TYCY-5400] - VGMdb
畑亜貴 - Wikipedia

2013年6月19日水曜日

MACHINAE SUPREMACY、2014年度の米国「MAGfest」にヘッドライナーとして出演決定


スウェーデンのチップ・チューン・メタル・バンド MACHINAE SUPREMACYは、アメリカ有数のゲーム音楽フェスティバル「MAGfest」の、第12回(2014年1月2日~5日開催)のヘッドライナーとして出演することが先ごろ決定したとのこと。バンドにとっては初の(オフィシャルな形での?)北米ライヴだそうです。

MAGFest 12: Featuring Machinae Supremacy
http://magfest.org/content/magfest-12-featuring-machinae-supremacy

Machinae Supremacy in the USA
http://machinaesupremacy.com/2013/06/18/machinae-supremacy-in-the-usa/

さて、MACHINAE SPREMACYといえば、元NINJA MAGICの「カワサケ・ヤマモト」ことNiklas Karvonen氏 が現在ドラマーとして在籍しているバンドでもあるわけですが、NINJA MAGICが話題になっていた頃は、まさかチップチューンとメタルを繋ぐ有名バンドのドラマーになり、世界を股に駆ける活動を展開していくなんて誰が予想 したでしょうか。しかし、昔の(2007~2008年ごろでしょうか?)NINJA MAGICのとあるライヴ映像に、そのことを少なからず予感させるものがありました。映像はバンドの代表曲"The Way Of Life"のライヴ・パフォーマンスなのですが、出囃子として"The Way Of Life"をチップ・チューン・アレンジしたものが流れております。最後は、スーパーマリオのゲームオーバー時のBGMで〆。今となっては、なかなか興味深いものを感じますね。

そのMACHINAE SUPREMACYも、今から10年ほど前のインディーズ時代に、"Ninja"というタイトルの曲を制作しておりました。


MAGfest - Official Site
MACHINAE SPREMACY - Official Site

2013年6月18日火曜日

マユツバ(ACE)、大槻"KALTA"英宣 他「64で発見!!たまごっち みんなでたまごっちワールド」(1997)

1997年にバンダイよりニンテンドー64用ソフトとして発表された「64で発見!!たまごっち みんなでたまごっちワールド」。コントローラと友情を破壊寸前に追い込むまでやり込んだ割と思い出のゲームなんですが、BGMがACE工藤ともりさんとCHiCOさんによるものだと知って驚きました。この時はACEではなく「マユツバ」名義での制作とのこと。当時ブームが下火だったこともあってソフトの売り上げ自体はあまり振るわなかったようですが、サウンドトラックは97年の末に出ております。ACEのお二人に加えて、光田康典氏の作品でもお馴染みの大槻"KALTA"英宣さんも参加されています。ファニーな趣向とヴァリエーションに富んでいて、思わず楽しい気分にさせられる楽曲ばかりです。


ちなみに、マユツバ(ACE)、大槻KALTAさんは1999年のニンテンドー64ソフト「爆ボンバーマン2」に、光田康典氏、弘田佳孝氏と共に作曲で参加されております。こちらは未サントラ化。


近年では、光田氏とACEは、2010年にWii用ソフト「ゼノブレイド」の楽曲制作に参加。また、CHiCOさんと弘田氏は、植松伸夫氏のバンドEARTHBOUND PAPASにメンバーとして名を連ねております。

Xenoblade Original SoundtrackXenoblade Original Soundtrack
(2010/06/23)
ゲーム・ミュージック、Sarah Alainn 他

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Octave TheoryOctave Theory
(2011/03/16)
EARTHBOUND PAPAS

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64で発見!!たまごっち みんなでたまごっちワールド - Wikipedia
ACE(音楽ユニット) - Wikipedia
たまごっち みんなでたまごっちワールド オリジナル・サウンドトラック(KTCR-1460) - VGMdb

2013年6月17日月曜日

“Dawn of the Dead / Zombi” by Daemonia 2013

https://itunes.apple.com/album/dawn-of-the-dead-zombi/id651043487

新生GOBLINで気を吐いてるクラウディオ・シモネッティおじさんのサイドプロジェクトDAEMONIAが新作出したよ。『ゾンビ』のサントラのリメイクだよ。アレンジがド派手になってて、もうスーパーマーケットに立篭もらなくてもいい感じだよ。『ゾンビ』の"L'Alba Dei Morti Viventi"は10年以上前に既にアレンジされてるし、"Zaratozom"も数年前にアレンジされてるけど、今回の新作でまた再アレンジしたっぽい。これは数年前の"Zaratozom"

2013年6月16日日曜日

Alain Goraguer『La Planete Sauvage(ファンタスティック・プラネット) Original Soundtrack』(1973)

ファンタスティック・プラネット [DVD]ファンタスティック・プラネット [DVD]
(2001/03/23)
不明

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フランスの作家 ステファン・ウルのSF小説『オム族がいっぱい(Oms en Série)』を原作とし、フランス・アニメーション界の巨匠 ルネ・ラルーや、イラストレーター/作家のローラン・トポールらが組んで1973年にフランス&チェコ共同で製作されたカルトなSFアニメーション映画 『ファンタスティック・プラネット』のサウンドトラック。巨大な体躯と青い肌と赤い目を持ち、高度な文明を築き上げているドラーグ族と、彼らの十分の一の身長ゆえにいいように虐げられ続けている、人間によく似た姿形のオム族という、タイプの全く異なる二つの種族がとある惑星を舞台に繰り広げる数々の戦いや駆け引きを描いた作品です。かの宮崎駿氏は本作の世界観やローランによるデザインから多大な影響を受け、『風の谷のナウシカ』に反映させたのでは?…という指摘もあり、実際本編を見ればなるほどと頷けるのですが、そんな情報を抜きにして見ても非常に面白い作品です。独特の世界観とキャラクターの造型、シュールレアリスティックな演出でたちまちのうちに惹き込まれてしまいます。

La Planete SauvageLa Planete Sauvage
(2012/11/06)
Various Artists

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本作の劇伴を担当されたのが、フランスのジャズ・ピアニストにして、作編曲家のアラン・ゴラゲール。氏は初期のセルジュ・ゲンズブールや、『うたかたの日々』などで知られる作家/詩人にしてジャズ・トランペット奏者でもあったボリス・ヴィアンの楽曲のアレンジも担当されており、ヴィアンの「J'irai cracher sur vos tombes(墓にツバをかけろ)」を原作とした映画(1960)では、瀟洒なジャズのスコアを提供していました。ファンタスティック・プラネットでは、本編のカルトでシュールな内容に呼応し、さらなる拍車をかけるが如く、影のあるムードを湛えつつも、いつ切れるかわからない緊張感も孕んだ秀逸なスコアを作曲されています。ジャジーでありながらファンキーで、サイケデリック/プログレッシヴなニュアンスも混然としたバンドサウンドが滲ませる腹に一物のあるテイストも非常にたまらないのですが、時折り交えられるコーラスがさらに気だるさと物悲しさをそそり、退廃的な色合いを与えています。この異様なまでに尾を引く味わいは、劇伴マニアのみならずサイケ/プログレ系リスナーにも聴いていただきたい1枚。サントラは国内盤/海外盤ともに久しく廃盤状態でありましたが、昨年の11月にイタリアのレーベルからリマスター盤が出たようです。とはいってもこちらもいつ廃盤になるかわからないので、入手はお早めに。



※【追記】なんとその後、ブルーレイが出ました。
ファンタスティック・プラネット [Blu-ray]ファンタスティック・プラネット [Blu-ray]
(2013/09/27)
不明

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ファンタスティック・プラネット - Wikipedia
ルネ・ラルー - Wikipedia
Alain Goraguer - Wikipedia

2013年6月15日土曜日

Simonetti Horror Project

GOBLINのクラウディオ・シモネッティ氏の公式YouTubeアカウントでSimonetti Horror Projectの時期(90年代初頭くらい?)のライヴ映像が上がっていることに今更気づいた。割と貴重な映像のような気がする…。





2013年6月14日金曜日

FROST*のジェム・ゴドフリーがプロデュースで関わるUKロックバンド LOSERS



このLOSERSっていうUKロックバン ド、奥に吸い込まれそうになるブ厚い音づくりがFROST*にとても近いなあ…と思ったら、どうやらFROST*のジェム・ゴドフリー氏がミックスとプロ デュースで関わっているようだ。ああ納得。素晴らしい。2ndアルバムの曲が期間限定でストリーミング試聴できるようなので(※現在は終了)をざっと聴い てみたけど、全曲圧巻だった。

http://www.rocksound.tv/news/article/losers-to-stream-new-album-with-rock-sound-next-week

フォーマットはモダンなUKロックだけど、このアレンジの趣向はメロディック・プログレリスナー泣かせというかFROST*ファン泣かせだと思う。流石ジェムおじさん。LOSERSのメンバーのTom Bellamyは元The Cooper Temple Clause。Eddy Temple Morrisは英インディーロック系ラジオ局XFMのDJ。Paul Mullenは 別バンドでBloc Partyのゴードン・モークスと共に活動もしている御仁。今はTom、Eddy、Paulの3人に落ち着いたらしいけど、LOSERSには元 OCEANSIZEのドラマーであるマーク・ヘロンも一時期関わっていたようだし、なかなか面白いところだな。

http://www.losersband.co.uk/
http://losers.bandcamp.com/
http://eddytm.com/losers/

2013年6月13日木曜日

Techno, Trance and Torment music #1

これ衛藤ヒロユキ先生の曲なのか。


同曲が収録されているオムニバスアルバム。細江慎治さんと古代祐三さんも参加されている。 http://vgmdb.net/album/9092

難波弘之 他『バオー来訪者 オリジナル・サウンドトラック』(1989)

バオー来訪者 [DVD]バオー来訪者 [DVD]
(2003/04/02)
堀秀行、日高のり子 他

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「これがッ! これがッ! これが『バオー』だッ
そいつに触れることは 死を意味するッ!」


1980年代半ばに週間少年ジャンプで連載された、荒木飛呂彦による漫画作品『バオー来訪者』(全 2巻)。荒木先生の初期の名作であり、1989年にはOVA版(50分)が製作されております。流石に1時間にも満たない尺で原作分のエピソードを全て収 めるのは無理だったようで、ストーリーのそこかしこを端折っていたり、登場しないキャラクター(六助じいさんとか、殺人マンドリルのマーチンとか)もいる のですが、原作の雰囲気を損なうことはさほどなく、なかなかにクオリティの高い内容でありました(でも、名も無き敵の男が発した「ドッゲェーーマーーチーーン!!」の悲痛なシャウトはできることなら聞きたかったなあ)。



さて、今回ご紹介するのはそのOVA版のサウンドトラック。今となってはそこそこレアなアイテムとなっております。劇伴を担当されたのは、コンポーザー/アレンジャー/キーボーディストであり、SENSE OF WONDERのリーダーである難波弘之氏。主題歌、イメージソングの編曲も全て氏が担当しております(日高のり子さんが歌う「心が話してる」では作曲も担当)。町田義人氏が伸びやかに熱唱する主題歌「永遠のSoldier」は素晴らしいパワーバラードであります。また、「The MUTEKI!」というえらくストレートなタイトルのイメージソングではスティーヴ・ニックスという人が歌っているのですが、フリートウッド・マックの同名の女性ヴォーカリストではなく、全くの別人。しかもこちらは男性です。

本作の2年前に難波氏が劇伴を担当されていたOVA作品『デジタルデビル物語 女神転生』で は、プログレッシヴ・ロックのエッセンスを色濃く反映させたシンセサイザー・サウンドを全編に渡って展開していたため、そちらと比較すると本作はやや大人 しめというか小粒な印象を感じてしまうのですが、シンセサイザーを基調にしつつハードなギターサウンドも随所で効かせた硬質なインストの数々は、やはりど こかプログレっぽさを感じさせるものになっており、その手のリスナーならばピクリと反応する場面もきっとあることでしょう。クリーントーンのギターがペロ ンペロンとアルペジオを奏でる「ドルド」「死闘」、スリットドラムらしき音がポコポコポコポコと鳴っている「ウォーケン」あたりは、80年代のKING CRIMSONを意識したようなフシも伺えます。また、主人公の育朗がバオーによって目覚めた特殊能力を駆使するたびに流れる「武装現象(アームド・フェノメノン)」のテーマは、全部で3パターンのアレンジが展開されています。ストーリーにおいても重要な楽曲であり、サントラの方向性を象徴する楽曲ともいえます。強くオススメはいたしませんが、難波氏のマニアックなファンなら押さえておきたい1枚。



バオー来訪者 - Wikipedia
難波弘之 - Wikipedia

2013年6月10日月曜日

難波弘之 他『デジタルデビル物語 女神転生 オリジナル・サウンド・トラック』(1987)

「デジタル・デビル物語」~女神転生「デジタル・デビル物語」~女神転生
(1987/04/25)
不明

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 1987年に発表された第一作目から20年以上経た今もなお、続編や派生作品が発表されている人気ゲームタイトル『女神転生』シリーズ。その基となったのは、西谷史 原作のSFファンタジー小説『デジタル・デビル・ストーリー』シリーズであるのはファンにはよく知られているところですが、今回ご紹介する1枚は、その原作シリーズの一作目である『女神転生』をベースにして1987年に発表されたOVA作品『デジタルデビル物語 女神転生』のサウンドトラックでございます。

 本作の総合プロデュース(&作曲)を手がけるのは、サポート・ミュージシャン/コンポーザー/アレンジャーとして数多のバンドやアルバムに携わる仕事人にして、自らが率いるプログレッシヴ・ロック・バンドSENSE OF WONDERのリーダー、また、SF作家としての顔も持つ多彩にして多才なキーボーディスト 難波弘之氏。そして、難波氏と分け合う形で作曲を担当されている「うさぎ組」は、シンセサイザー音楽の大家 冨田勲氏の門下である後藤慶一氏と竹内加寿子さんの二人による音楽ユニット。冨田氏の作品への参加歴もある他、TV番組への劇伴提供などで活動されております(ちなみに、88年にリリースされた『MUSIC FROM SUPER魂斗羅&A-JAX』に、アレンジャーとしてクレジットされております)。主題歌はヴォーカリストの杉本誘里さん率いるロック・バンド YOURI with the CASH。いかにもな泣きのギターソロやシンセのアレンジが耳を惹く、往年の歌謡曲といったところです。また、イメージ・ソングとして収録されている「Deja-Vu」は、原作者である西谷史氏が作詞と作曲(難波氏との共作)で参加されています。こちらのヴォーカルも杉本さんです。

 アニメ本編の楽曲はシンセサイザーによる打ち込み/多重録音で制作されており、シリアスでミステリアスなムードで一貫した仕上がり。また、プログレッシヴ・ロックのエッセンスも強く押し出されており、変拍子も交えて複雑に構築された楽曲は、本編の黙示録的なストーリーを存分に演出する劇伴としての役割を十二分に果たしつつも、スリリングで聴き応えのあるインストとしても成立させております。難波氏とうさぎ組の共作による「伝説I・II」は、本作を象徴するシンセサイザー・プログレの佳曲です。「予兆」はイントロから執拗にアルペジオが繰り返されるということもあって、マイク・オールドフィールドの「Tubular Bells」を彷彿とさせられる楽曲。同様に「悪夢」「危機 II」はEmerson,Lake&Palmerの「Tarkus」を意識したのではないかと思われるオスティナートがあります。「ロキの誕生I・II」は、ホルストの「火星」を思わせる導入部から、一転してシンセサイザーの派手なテーマへと展開するという、SENSE OF WONDERの作風に通じる1曲。ちょうどサントラの制作時期の少し前に活動していたEmerson,Lake&Powellを意識しているところも多分にありそうです。「ケルベロス」はゲーム版の戦闘曲にも通じる様式美ハード・ロック調で、難波氏がアツいキーボード・ソロを弾いています。


 アニメとプログレを繋ぐ劇伴作品の隠れた名盤でもありますが、20年以上に渡って廃盤状態であり、再発される可能性は限りなくゼロに近いと思われます。ちなみにアニメ本編は、2002年と2007年にDVD化されており、2007年にハピネットから「TOKUMA Anime Collection」としてリリースされたものは現在でも入手可能です。

TOKUMA Anime Collection『デジタル・デビル物語 女神転生』 [DVD]TOKUMA Anime Collection『デジタル・デビル物語 女神転生』 [DVD]
(2007/01/26)
水島裕、島津冴子 他

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デジタル・デビル・ストーリー - Wikipedia
難波弘之 - Wikpedia
うさぎ組 - Wikipedia

2013年6月9日日曜日

GRAND GENERAL『Grand General』(2013)

Grand GeneralGrand General
(2013/03/26)
Grand General

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 国内のイキのいいジャズ/サイケデリック/エクスペリメンタル系ミュージシャンのカタログをリリースしている、ノルウェーのRune Grammofonレーベル。MotorpsychoやSupersilent、Shining、Elephant 9、Panzerpappaといった刺激的で野心的なサウンドを持ったバンドを多数輩出しており、個人的に近年注目しているレーベルのひとつであります。

 そんなRune Grammofonから近頃登場した新たなバンドが、Rune Grammofonに所属するいくつかのバンドのメンバーから成るGRAND GENERAL。母体となったのは、北欧随一のサイケ&ヘヴィ・ロックンロールの雄 MOTORPSYCHOKenneth Kapstad(dr)のリーダー・バンド。メンバーとの数回のギグを経て確かな感触を掴み、グループの改名に至ったとのことです。Kenneth以外のメンバーは、ヘヴィ・プログレ・バンド El Doom&The Born ElectricTrond Frønes(b)、サイケデリック・ジャズ・ロック・バンド Bushman's RevengeEven Helte Hermansen(g)、アコースティック・ジャズ・バンド The CoreErlend Slettevoll(kbd)、チック・コリアやパット・メセニーとの共演歴もあるTrondheim Jazz Orchestraの一員であり、2010年に発表したソロアルバムがノルウェー版グラミー賞のジャズ部門を受賞したというヴァイオリニスト Ola Kvernbergの5人で構成されています。

 ジャズ・ロックをベースに、70年代プログレッシヴ・ロック/ハード・ロックのエッセンスをまぶしこみ、なおかつ現代的なセンスでアレンジしたハイブリッドなサウンドからは、メンバーがそれぞれのバンドで培ってきたものも伺い知ることができます。KING CRIMSONやBLACK SABBATH、MAHAVISHNU ORCHESTRAあたりのバンドからの影響を感じさせつつも、いたずらにフォロワーに堕したところは一切なく、影響を昇華した上で自分達のサウンドを存分に鳴らしているのが非常に心強い。各パートがしっかりと主張しており、ほぼ対等の力関係を保っているのもまたポイントでしょう。常に醒めたようなテンションをキープしつつも、ひとたび触れればむせ返るような熱気が噴き出してきます。同郷のジャズ・ロック・バンドであり、バンドの成り立ち方にも多分に似通ったところがあるelephant 9が展開している一触即発の凶暴な演奏とはまた違った魅力があり、同じ国でこうもバンドの性格が違うのかという驚きもありました。

 アルバムは、最初と最後に10分を越える楽曲を配し、間に4~6分の楽曲を4つ挟んだ全6曲の構成。楽曲はベースのTrondとヴァイオリンのOlaが中心となって作曲されており、オープニングを飾る「Antics」は、饒舌なプレイでラストまでリードしてゆくベース、ジャン=リュック・ポンティばりに啖呵を切ったヴァイオリンのプレイが長さを感じさせない心躍るジャズ・ロック・チューンに仕上がっています。続く「The Fall Of Troy」は、モクモクと煙ってくるかのような、たっぷりとファズの効いたヘヴィなストーナー・ロック・チューン。「Clandestine」ではスロウなエレクトリック・ジャズ寄りの演奏を展開していますが、緩やかな中にも一定の緊張感をキープしています。メロディアスなシンセを中心に、各パートが脇を手厚く固めた「Tachyon」は、メロディの爽快感も際立った1曲。即興性の強い「Ritual」を経て、「Red Eye」はヴァイオリンとギターが先導するブルージーなテイストの長尺曲。熱気と疾走感をまといながら突き進み、一体感のあるラストを迎えます。

 Rune Grammofonレーベルが抱えるバンドの層の厚さを知る上でも格好のアルバムであり、ノルウェーのジャズ・シーンとロック・シーンのフレッシュな才能を刺激的に繋いだ会心のアルバムだと思います。各メンバーがそれぞれメインとなるバンドでの活動があるので、今後活動を続けて行くとしても今まで通り不定期なものになりそうですが、何かの機会にまたアルバムを出していただきたいところですね。


Grand General - Rune Grammofon
Rune Grammofon

2013年6月8日土曜日

Jens Johansson『Fjäderlösa Tvåfotingar(飛べない創造物)』(1991)

Fjaderlosa TvafotingarFjaderlosa Tvafotingar
(2008/05/06)
Jens Johansson

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 SILVER MOUNTAIN、DIO、YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE、STRATOVARIUSといった数々のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドでキャリアを磨いてきたスウェーデン出身のキーボーディスト、イェンス・ヨハンソンが1991年に発表した1stソロアルバム。玄人好みのカタログを80年代末から90年代にかけて多数リリースしていたJIMCOレコードの日本支社から1992年に国内盤が出ていました。その時付いていた邦題は『飛べない創造物』。兄でドラマーのアンダース・ヨハンソン(彼も元RISING FORCE、現在はHAMMERFALLのメンバー)の全面的協力の元、ジャズ・ロックやプログレッシヴ・ロックへの強い志向を示した作品になってます。とにかく縦横無尽にシンセを弾きまくるイェンス、時に獰猛な面を見せつつ、ひたすら冷徹に叩き続けるアンダース、二人のプレイはその音数手数の多さに反してどこか醒めた感触もあり、サイバーパンクSFにも通じるクレバーな世界を創出しています。また、再編MAHAVISHNU ORCHESTRAの髭面ベーシスト ヨナス・エルボーグがベースをプレイしており、彼が生み出す太いグルーヴ感も聴きもの。デジタリーなフレーズの連続が疾走感を伴って徐々にボルテージを高めていく「A Mote In God's Eye」。ベースにテクノやファンク的な要素も絡めてトリッキーでスタイリッシュに展開してゆく、フュージョン・テイスト強めの「In Transit」。アラン・ホールズワースやロバート・フリップを思わせるネジれたプレイや独特の浮遊感のあるトーンをシンセで再現しつつ、変拍子を伴ったダンサブルなビートの跳ねも心地良い「Megiddo」。拍手・歓声や車のブレーキ音、牛や犬や赤ん坊の鳴き声など、殆ど楽器で再現したと思しき数々のSEを交えた実験的音空間で繰り広げられるエレクトリック・ジャズ「Semaphores」。複雑に構築された楽曲のスリリングな緊張感に酔いしれることが出来る全4曲46分。ラストまで息つく暇のない、研ぎ澄まされたハイテク・アヴァン・ジャズ・ロックの極致がここにあります。リリース当時はヘヴィメタル専門誌であるBURRN!で30点台の点数がつけられたのですが、ヨハンソン兄弟のディープな音楽的側面を知る上でも欠かすことの出来ない作品なので、アルバムを見かけたり手にする機会があるならば、是非聴いて欲しいと思います。


Jens Johansson - Official Site
Jens Johansson - Wikipedia

 また、ヨハンソン兄弟は、名うての技巧派ギタリスト達と共演したアルバムも発表しています。アラン・ホールズワースと共演した『Heavy Machinery』(1996)や、ショーン・レーンマイク・スターンと共演した『Fission』(1997)は、共に聴き応えバツグンの刺激的な内容なのでオススメいたします。

Heavy MachineryHeavy Machinery
(2002/01/08)
Anders、Allan Holdsworth Jens Johansson 他

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FissionFission
(2002/01/08)
Jens Johansson

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 最後に。せっかくなので、イェンスがSTRATOVARIUSのツアーの際にブダペストのトイレを爆破した有名な動画も貼っておきます。ガンコな汚れは、こすらず落とす(発破)

2013年6月6日木曜日

二十一バカヴァリエイション

Cocobat、モルゴーア・クァルテット、フラワートラベリンバンド、西村雅彦、トルヴェール・クァルテット、Seasons、爆風スランプ、津吉&城、サバート階段、村田陽一、Zoffy、Hide、で12ヴァージョン。集めた方も凄いと思います。


上には入っていませんが、Z.O.A版、人間椅子版、山寺宏一版もあります。山ちゃん版の収録アルバム『快適な世紀末』は珍品。



鈴木さえ子『緑の法則』(1985)

緑の法則(紙ジャケット仕様)緑の法則(紙ジャケット仕様)
(2013/04/24)
鈴木さえ子

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 誰もが聴いたことがあるであろう、日清チキンラーメンのCMの「すぐおいし~、すごくおいし~♪」のジングルを作ったお方であり、ムーンライダーズの鈴木慶一氏の元パートナーであり、コンポーザー/ドラマーである鈴木さえ子さんが1985年に発表した3rdソロアルバム。鈴木慶一氏もプロデュースや演奏で参加しております。また、演奏陣には、同じくムーンライダーズの白井良明氏(g)や、REAL FISHの矢口博康氏(sax.clarinet)、渡辺等氏(b.mandolin)の名前もクレジットされています。自転車のベルや口笛、フィンガースナップ等の非楽器類の音のコラージュで作り上げられた「夏休みが待ち遠しい~Mon Biclo」を皮切りにして、こそばゆくて小気味良くて可愛らしくて、ギミックもふんだんに凝らされたニューウェイヴ&テクノ・ポップ・サウンドが色彩も鮮やかに広がります。「The Green-Eyed Monster」「Good Morning」などのヴォーカルナンバーのシャキっとした躍動感も素晴らしく、曲調と相まってワクワクとした気持ちでいっぱいになります。その一方で、「イワンのバカ」「BИЙ」といった実験的な薫りを感じさせる楽曲もあり、アルバムの印象をさらに独特なものへと押し上げています。インストナンバーからヴォーカルナンバーまで、さながら手入れの行き届いた箱庭のように仕上げられており、聴くたびに新しい発見があることでしょう。鈴木慶一さんも関わられている『MOTHER』シリーズの楽曲が好きな方にもオススメです。良い意味で力の抜けた、のほほんとノーテンキなムードには相通ずるものがあると思うんですよね。

 つい先ごろ(2013年4月)、SHM-CD/紙ジャケット仕様でリマスター盤が再発されました。ボーナス・トラックも1曲("Come Wonder With Me"の別ミックス)収録されています。というわけで、この機会に是非。


鈴木さえ子 - Wikipedia

2013年6月5日水曜日

伊藤詳『日出処の天子(イメージ・アルバム)』(1982/1991)

「日出処の天子(ひいづるところのてんし)」「日出処の天子(ひいづるところのてんし)」
(1991/03/21)
不明

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 80年代に、漫画/アニメ/特撮作品の音楽をシンセサイザーでアレンジした企画アルバムが、日本コロムビアの「DIGITAL TRIP」と銘打たれたシリーズから多数リリースされていました。深町純、東海林修、小久保隆、淡海悟郎など、国内の著名なシンセサイザー奏者が、「銀河鉄道999」や「宇宙戦艦ヤマト」「超時空要塞マクロス」「機動戦士ガンダム」「うる星やつら」「ダーティペア」「風の谷のナウシカ」などの楽曲をアレンジしていたのです。今回ご紹介する、山岸涼子の漫画作品『日出処の天子(ひいづるところのてんし)』のイメージ・アルバムも、そのシリーズに連なる作品であります。リリースは1982年。

 作曲を担当されているのは、日本のシンセサイザー・ミュージック/プログレッシヴ・ロックの先駆け的存在といえるグループ「ファー・イースト・ファミリー・バンド」の元メンバーである伊藤 詳(あきら)氏。シンセサイザーを中心とした、瞑想的で幻想的な路線のインストゥルメンタルが繰り広げられております。伊藤氏にとっては音楽的な師でもあるジャーマン・エレクトロ・ミュージックの重鎮クラウス・シュルツェや、初期メンバーとしてシュルツェも在籍していたTANGERINE DREAMの作風にも通じるところもあります。中でも、「鎮花祭(はなしずめのまつり)」「超能力者 [厩戸王子・毛人]」は、日本的な情緒もふんだんに織り込まれたメディテーショナル・ミュージックで、郷愁を誘う秀逸な仕上がりです。 また、要所でゲスト・ミュージシャンが迎えられています。その顔ぶれを見てみると、ファーラウト(ファー・イースト・ファミリー・バンドの前身)やTALIZMANの石川恵樹氏(b.g)、クリエイションの"チェピート竹内"こと竹内正彦氏(b)、ミッキー・カーチス&サムライやPYGなどを渡り歩いた原田裕臣氏(dr.per.wind-chime)、ザ・ハプニングス・フォーやフラワー・トラベリン・バンドの篠原信彦氏(p)、TALIZMANの木村昇氏(sax.flute)、スペース・サーカスの豊田貴志氏(vln)と、いずれもグループ・サウンズやニュー・ロック界隈で鳴らした面々。

 歯切れの良いスラップ・ベースがアクセントを効かせている「未戸郎(みしらん)伝説」、サックスが大胆にフィーチャーされ、メロディアスなフレーズで引っ張る「弥勒仙花(みろくせんか)」、小鳥のさえずりの中でヴァイオリンやフルートが情感たっぷりなフレーズを奏でる「刀自古(とじこ)」、バンドサウンドで仕上げられた「無明と画龍点睛」「四天王」で、彼らのプレイを聴くことが出来ます。「四天王」は70年代初期のPINK FLOYDを多分に意識したと思われるのが少し微笑ましいです。例えるなら「One Of These Days(吹けよ風、呼べよ嵐)」をもっとソフトでムーディーにしたような印象というか。 本作は1991年に日本コロムビアの「イメージ・トリップ・シリーズ」からCDでリイシューされているのですが、それ以降は再発されておりません。そういうこともあって現在、市場では少々プレミアがついています。原作漫画のファンはもちろん、シンセサイザー・ミュージックやニュー・ロックを好むリスナーも押さえておきたい、静かなイメージを湛えた良作ゆえに、少々残念に思います。



日出処の天子 - Wikipedia
ファー・イースト・ファミリー・バンド - Wikipedia  


【余談】 歴史漫画、少女漫画の金字塔的作品として色褪せない名作である『日出処の天子』。様々な陰謀も交えて繰り広げられるドロドロの愛憎劇は全巻一気読み不可避の面白さでありますが、同じく聖徳太子テーマの漫画作品では、『女犯坊』で知られる滝沢解/ふくしま政美のコンビが70年代後半に「週刊漫画サンデー」で連載していた『超劇画 聖徳太子』も超面白いのでオススメしておきます。無念の死を迎えた後に一族郎党を皆殺しにされ、恨み骨髄の聖徳太子(筋肉モリモリマッチョマンで性欲絶倫の巨漢)が怨霊として現世に黄泉返り、地獄の宦官どもや変態的クリーチャーを相手に大暴れ、果ては閻魔と釈迦の全面戦争における中心的存在となってゆく…という超破天荒肉弾系作品にして未完の怪作です。紙媒体では既に絶版となって久しいですが、今は電子書籍で読めます。読もう!超劇画 聖徳太子!(コミックビームの宣伝風トーンで) http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/4719.html


聖徳太子―超劇画 (QJマンガ選書 (16))聖徳太子―超劇画 (QJマンガ選書 (16))
(1999/01)
滝沢 解、ふくしま 政美 他

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2013年6月4日火曜日

国本佳宏 他『緑野原座フライト・プラネット』(1987)

緑野原座フライト・プラネット緑野原座フライト・プラネット
(1987/07/21)
イメ―ジ・アルバム

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 80年代から90年代にかけて、『ぼくの地球を守って』や『ここはグリーン・ウッド』など、主に白泉社の少女漫画作品をテーマにして制作されたイメージアルバムが、ビクター音楽産業の「ファンタスティック・ワールド」というレーベルから多数リリースされておりました。実は、そのうちのいくつかには、80年代国内テクノ・ポップ/ニューウェイヴ・シーンで活動していたバンドやアーティストがプロデュースや作編曲や演奏で多数参加しており、その筋のリスナーにとってはまさに興味深いアイテムなのであります。今回取り上げる『緑野原座フライト・プラネット』は、白泉社「花とゆめ」に掲載されていた星野架名さんの代表作「緑野原学園シリーズ」を題材にした1枚目のイメージアルバム。同シリーズのイメージアルバムは本作も含めて計3枚リリースされています。

 本作のメインソングライター/プロデューサーは、戸川純「玉姫様」「蛹化の女」などの編曲や、サザンオールスターズのサポートメンバー/編曲、G.M.O.レーベルの『THE RETURN OF VIDEO GAME MUSIC(1985)』『FAMICOM MUSIC(1986)』などでの編曲で知られる国本佳宏氏。その脇を固めるようにして、ハルメンズ~パール兄弟のサエキけんぞう氏が作詞提供(1曲)で、ヤプーズの吉川洋一郎氏、ムーンライダーズの岡田徹氏、ハルメンズ~ゲルニカの上野耕路氏、CINEMAの鈴木さえ子さんが楽曲提供(各人1曲ずつ)でそれぞれ参加しております。さらに演奏陣にはパール兄弟のバカボン鈴木氏(b)、8 1/2(ハッカニブンノイチ)~PORTABLE ROCKの鈴木智文氏(g)、『うる星やつら』『ジャイアントロボ 地球が静止する日』などの劇伴でも知られる天野正道氏(kbd.flute他)らが参加。ヴォーカルには、後にADI(佐藤正治氏や金子飛鳥さんらが名を連ねていたグループ)に参加する本間哲子さん、80年代末に冨田恵一氏とのユニットKEDGEでデビューする杉本直子さん、数多くのCMソングやアニメ/ゲーム作品に参加されているシンガーソングライターの木村真紀さん、ゲルニカ~ヤプーズの戸川純さんの4人が迎えられています。この錚々たる顔ぶれで、シンセサイザー/打ち込み中心のファンタジックなインストや、テクノ・ポップ路線の歌ものが作品世界に沿って展開されているとなれば、否が応にもワクワクさせられるというものです。

 フレッシュな魅力に溢れたテクノ・ポップ・チューン「緑野原座フライト・プラネット(歌:杉本直子)」、幻想的なムードでしっとりと歌い上げられるバラード「月齢14.9の夜(歌:木村真紀/曲:吉川洋一郎)」、ビートもバシバシ効いたつんのめるようなバッキングが痛快な「Psiクロン・シンドローム(歌:本間哲子/作曲:岡田徹)」と、アルバムにはタイプの異なる曲調のヴォーカルナンバーが配されているのですが、その中で一際異彩を放っているのが、戸川純さんの参加した「夢見たちのハーモニー」であります。ヴォーカルというよりはモノローグと言ったほうがいいかもしれませんが、変拍子のシーケンスに乗せ、すっかり魔術師ヨギムになりきっている戸川さんのキレたパフォーマンスが堪能できます(笑) 続く「彼方-まほろばフェスタ」がアヴァンギャルド&ミニマルな路線のグネグネとした気持ち悪いインストであることもあって、終盤のこの部分は非常に記憶にこびりついて仕方がありません。その他に印象的なインストといえば、鈴木さえ子さんの作曲による「トリック・スターズ」は、ヴィブラフォン系の音色が小気味良く跳ねる、可愛らしい1曲。鈴木さんがソロアルバムで展開している作風を、よりコンパクトにして仕立て上げたという印象も感じます。また、上野耕路氏の作曲による「弘樹-春咲迷路」も、ソロ作品の延長にあるような楽曲で、幻想的でありながらどこか不安定なムードを形成する独特の和音の連なりがたまらなく奇妙な味わいです。実質上アルバムの最後を飾る「ラピュータス流星群」は、バンドサウンド仕立てのポップなプログレ風インスト。楽曲の尺も6分半と長めですが、バカボン鈴木氏の足どり軽やかなベースプレイや鈴木智文氏のピリッとしたギターソロも含めて、じっくりと聴かせる佳曲だと思います。



国本佳宏 - Wikipedia
星野架名 - Wikipedia







2013年6月3日月曜日

ビクター音楽産業「ファンタスティック・ワールド」レーベル リリースタイトル一覧メモ

ビクター音楽産業(現FlyingDog)の「ファンタスティック・ワールド」レーベルが80年代から90年代にかけてリリースしていた少女漫画作品のアニメ/イメージアルバムについてのざっくりとしたメモ。あんな人やこんな人が参加している作品もあったりで、調べれば調べるほど興味が尽きないレーベルだと思います。
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●ファンタスティック・ワールド1『CIPHER THE VIDEO[成田美名子]』(1989)
●ファンタスティック・ワールド2『緑野原迷宮~Sparkling Phantom[星野架名]』(1990)
●ファンタスティック・ワールド3『KISS×××× イメージ・ビデオ[楠本まき]』(1991)
●ファンタスティック・ワールド4『ここはグリーン・ウッド[那州雪絵]』(1992~1993)
●ファンタスティック・ワールド5『ぼくの地球を守って[日渡早紀]』(1993~1994)
●ファンタスティック・ワールド6『ぼくの地球を守って[日渡早紀]』(1994~1995)
※1から6までのナンバーは音楽作品ではなく、ビデオ作品に振られていた模様。

●ファンタスティック・ワールド7『伯爵と呼ばれた男[高口里純]』
(1986/ VDR-1254)
羽田健太郎、阪口あや

●ファンタスティック・ワールド8『美樹本晴彦2 / Collage コラージュ -秋色少女-』
(1986/ VDR-1255)
田中公平、柿崎真紀

●ファンタスティック・ワールド9『アクマくん魔法☆SWEET[日渡早紀]』
(1986/ VDR-1257)
門倉聡、上野耕路(ハルメンズ/ゲルニカ)、鈴木さえ子(CINEMA)、矢口博康・戸田誠二・福原まり(REAL FISH)、溝口肇、金津宏、鈴木智文(8 1/2/ポータブル・ロック)、中西俊博、遊佐未森、Mikan Chang(新居昭乃) ほか参加

●ファンタスティック・ワールド10『ジョセフヘの追想[渡辺多恵子]』
(1986/ VDR-1264)
溝口肇、木村真紀、田中弥生 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド11『わかつきめぐみの宝船ワールド[わかつきめぐみ]』
(1987/ VDR-1358)
鈴 木慶一・岡田徹・鈴木博文・かしぶち哲郎(ムーンライダーズ)、沖山優司(ジューシィ・フルーツ)、鈴木智文・野宮真貴(ポータブル・ロック)、泉水敏郎 (ハルメンズ)、松尾清憲・一色進(CINEMA)、直枝政太郎(カーネーション/政風会)、北田かおる(コルネッツ)、福原まり、美尾洋乃、渡辺等、 DARIE(濱田理恵)、若林マリ子、森谷美月 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド12『あいつとララバイ[楠みちはる]』
(1987/ VDR-1371)
※色々と検索して調べてみたものの、参加ミュージシャンについての詳しい情報が全く出てこないので、現物を入手して確かめてみるしかないようです。

●ファンタスティック・ワールド13『緑野原座フライト・プラネット[星野架名]』
(1987/ VDR-1388)
国本佳宏、吉川洋一郎(ヤプーズ)、上野耕路、鈴木さえ子、天野正道、サエキけんぞう(ハルメンズ/パール兄弟)、戸川純(ゲルニカ/ヤプーズ)、本間哲子、杉本直子(KEDGE)、木村真紀、滋田みかよ、鈴木智文、バカボン鈴木(パール兄弟)、宮田繁男 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド14『ぴーひょろ一家[姫木薫理]』
(1987/ VDR-1439)
松浦雅也(PSY'S)、安部隆雄(子供ばんど)、岡田徹、サエキけんぞう、本間哲子、DARIE(濱田理恵)、楠瀬誠志郎、馬飼野康二、松尾清憲 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド15『魔天道ソナタ[天城小百合]』
(1988/ VDR-1485)
国本佳宏、中望、木村真紀 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド16『ぼくの地球を守って[日渡早紀]』
(VDR-1529)
溝口肇、大貫妙子、新居昭乃、野見祐二(おしゃれテレビ)、清水一登・れいち(AREPOS)、渡辺等、金子飛鳥 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド17『プレーンブルー時間列車(タイムトレイン)[星野架名]』
(1988/ VDR-1561)
国本佳宏、中望、上野耕路、サエキけんぞう、杉本直子、木村真紀 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド18『ここはグリーン・ウッド[那州雪絵]』
(1989/ VDR-1619)
関口和之・大森隆志(サザンオールスターズ)、山本正之、米光亮、一色進、Newファンキー末吉、野見祐二 ほか参加 ※2008年に再発(VTCL-60121)しています。
http://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/greenwood/

●ファンタスティック・ワールド19『緑野原迷宮~Melodic Wave[星野架名]』
(1990/ VICL-15)
国本佳宏、サエキけんぞう、杉本直子、木村真紀 ほか参加

●ファンタスティック・ワールド20『CIPHER[成田美名子]』
(1990/ VICL-48)
詳 細殆どわからず。こちらも現物を入手して確認してみるしかないようです。ちなみに、このアルバムに先んじて89年に『CIPHER THE MUSIC』というイメージソング集がリリースされているのですが、そちらはTHOMPSON TWINSやメスカリン・ドライヴ(ソウルフラワーユニオンの前身)などのグループの楽曲が収録されています。

●『別冊ファンタスティック・ワールド-スペシャル・セレクション-』
(1990/VICL-97)
これまでのファンタスティック・ワールド作品から楽曲をセレクトしたベスト盤。

●ファンタスティックワールド21『ここはグリーン・ウッド~FM特番「緑林(GW)お騒がせ!放送局」』
(1991/ VICL-154)
●ファンタスティック・ワールド22『われら混線合唱団[高橋ユキ]~華も実もある恵日寿高歌謡祭~』
(1991/ VICL-183)
●ファンタスティックワールド23『ここはグリーン・ウッド~特別試写会「緑林(GW)お騒がせ!劇場』
(1991/ VICL-234)
●ファンタスティックワールド24『?』
●ファンタスティックワールド25『ここはグリーン・ウッド~緑林ミステリー"忍失踪事件!?"』
(1992/ VICL-338)
●ファンタスティックワールド26『「ここはグリーン・ウッド放送局」CDシネマ-1「若い力」』
(1993/ VICL-400)
※24番目のタイトルがわからず(欠番ってことはないと思われますし、前後のタイトルから推察するに、「ここはグリーン・ウッド」関連の何らかのCDなのかもしれません)。21番、23番、25番、26番は2008年に再発しています。http://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/greenwood/

●ファンタスティックワールド27
『ぼくの地球を守って オリジナル・サウンドトラック Vol.1』

(1994/ VICL446)
溝口肇、菅野よう子、濱田理恵、新居昭乃、寺嶋民哉、鈴木博文(ムーンライダーズ)、篠崎正嗣、渡辺等、千代正行、金子飛鳥グループ、梯郁夫(シートベルツ)、旭孝、石橋雅一、大石真理恵、小峰公子(ZABADAK) ほか参加

●ファンタスティックワールド28
『ぼくの地球を守ってVol.2 イメージ・サウンドトラック』

(1994/ VICL519)
溝口肇、新居昭乃、河井英理(河井英里) 保刈久明、種ともこ、米光亮、濱田理恵、工藤順子、渡辺等、千代正行、金子飛鳥グループ、梯郁夫、旭孝、石橋雅一、大石真理恵、桑野聖ストリングス、宮田繁男、横関敦、古川昌義ほか参加

●ファンタスティックワールド29
『ぼくの地球を守ってVol.3 ~金色の時、月からの祈り~』

(1994/ VICL5260)
溝口肇、菅野よう子、新居昭乃、Gabriela Robin ほか参加

【参考】
My favorite girl's comics!

http://www.kh.rim.or.jp/~nagi/hclist/misc.html#CD

2013年6月2日日曜日

五十嵐洋『顔のない月 音楽集~月下楽人~』(2002)

顔のない月 音楽集~月下楽人~顔のない月 音楽集~月下楽人~
(2002/08/09)
ビデオ・サントラ、arca 他

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 2001年から2004年にかけてピンクパイナップルより全5巻(+α)でリリースされた『顔のない月』のOVA版のサウンドトラック。原作は2000年にオービットのROOTブランドより発表されたアダルトゲーム。アダルトゲーム原作の18禁OVA作品のサントラということで、作品のファン以外でこのサントラを耳にしたという人は多くないと思うのですが、実は本作、上質なコンテンポラリー・トラッド/フォークを聴かせる隠れた逸品なのです。まず、作編曲者はプロデューサー/スタジオ・ミュージシャン/コンポーザーの五十嵐洋氏。さねよしいさ子さんや国本武春氏の作品プロデュースでも知られる人ですね。そして、演奏者の殆どアイルランド出身のミュージシャンで固められているというところも大きなポイントであります。

 参加ミュージシャンの中には、ミュージカル"Lord of the Dance"の演奏隊やCeltic Womanのメンバーとして知られるMairead Nesbitt(fiddle)や、60年代から70年代末までCHIEFTAINSに在籍していたSean Potts(Uilleann Pipes/Low Whistle)。後にCLANNADのモイア・ブレナン・バンドに参加するCormac DeBarra(Irish Harp)。CLANNADやLUNASA、 Sharon ShannonやEimer Quinnなど、数多くのフォーク系バンド/アーティストの作品やツアーに参加しているGavin Ralston(g/b)といった名前も見られます。本場のミュージシャンの演奏と、五十嵐氏によるアイリッシュの流れを汲んだ楽曲は言わずもがなの素晴らしい仕上がりで、さらに女性ヴォーカリスト Brid Ni Churainの澄んだ歌声が神秘的なトーンを与えています。フィドルとロー・ホイッスルの切なげな響きが絡む"巫-kannagi-"、CHIEFTAINSやALTANを思わせる軽やかで躍動的な展開も聴ける"蓬莱-hourai-"、童謡「かごめかごめ」をアイリッシュ・テイストも交えてフォーキーにアレンジした"童歌-warabeuta-"、そしてメインフレーズが他曲でも度々登場する主題歌"Cruel Moon(歌 - arca)"など、望郷の念と寂寥の感を喚起させる風情のある佳曲ばかり。こう言ってしまってはなんですが、エロシーンそっちのけで聴き入ってしまうのではないかと正直思います。

VGMdb - 顔のない月 音楽集~月下楽人~
 ●顔のない月 - Wikipedia

【余談】
2002年にROOTブランドより発表された「ヤミと帽子と本の旅人」のイメージアルバム(特典CD)も素晴らしい内容です。造語によるコーラスも交えたドラマティックなトラッド/フォーク路線で、かなり聴き応えがあります。作曲は、Elements Gardenの母体となった音楽制作集団feelの上松範康氏らが担当されているとのこと。