2013年6月9日日曜日

GRAND GENERAL『Grand General』(2013)

Grand GeneralGrand General
(2013/03/26)
Grand General

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 国内のイキのいいジャズ/サイケデリック/エクスペリメンタル系ミュージシャンのカタログをリリースしている、ノルウェーのRune Grammofonレーベル。MotorpsychoやSupersilent、Shining、Elephant 9、Panzerpappaといった刺激的で野心的なサウンドを持ったバンドを多数輩出しており、個人的に近年注目しているレーベルのひとつであります。

 そんなRune Grammofonから近頃登場した新たなバンドが、Rune Grammofonに所属するいくつかのバンドのメンバーから成るGRAND GENERAL。母体となったのは、北欧随一のサイケ&ヘヴィ・ロックンロールの雄 MOTORPSYCHOKenneth Kapstad(dr)のリーダー・バンド。メンバーとの数回のギグを経て確かな感触を掴み、グループの改名に至ったとのことです。Kenneth以外のメンバーは、ヘヴィ・プログレ・バンド El Doom&The Born ElectricTrond Frønes(b)、サイケデリック・ジャズ・ロック・バンド Bushman's RevengeEven Helte Hermansen(g)、アコースティック・ジャズ・バンド The CoreErlend Slettevoll(kbd)、チック・コリアやパット・メセニーとの共演歴もあるTrondheim Jazz Orchestraの一員であり、2010年に発表したソロアルバムがノルウェー版グラミー賞のジャズ部門を受賞したというヴァイオリニスト Ola Kvernbergの5人で構成されています。

 ジャズ・ロックをベースに、70年代プログレッシヴ・ロック/ハード・ロックのエッセンスをまぶしこみ、なおかつ現代的なセンスでアレンジしたハイブリッドなサウンドからは、メンバーがそれぞれのバンドで培ってきたものも伺い知ることができます。KING CRIMSONやBLACK SABBATH、MAHAVISHNU ORCHESTRAあたりのバンドからの影響を感じさせつつも、いたずらにフォロワーに堕したところは一切なく、影響を昇華した上で自分達のサウンドを存分に鳴らしているのが非常に心強い。各パートがしっかりと主張しており、ほぼ対等の力関係を保っているのもまたポイントでしょう。常に醒めたようなテンションをキープしつつも、ひとたび触れればむせ返るような熱気が噴き出してきます。同郷のジャズ・ロック・バンドであり、バンドの成り立ち方にも多分に似通ったところがあるelephant 9が展開している一触即発の凶暴な演奏とはまた違った魅力があり、同じ国でこうもバンドの性格が違うのかという驚きもありました。

 アルバムは、最初と最後に10分を越える楽曲を配し、間に4~6分の楽曲を4つ挟んだ全6曲の構成。楽曲はベースのTrondとヴァイオリンのOlaが中心となって作曲されており、オープニングを飾る「Antics」は、饒舌なプレイでラストまでリードしてゆくベース、ジャン=リュック・ポンティばりに啖呵を切ったヴァイオリンのプレイが長さを感じさせない心躍るジャズ・ロック・チューンに仕上がっています。続く「The Fall Of Troy」は、モクモクと煙ってくるかのような、たっぷりとファズの効いたヘヴィなストーナー・ロック・チューン。「Clandestine」ではスロウなエレクトリック・ジャズ寄りの演奏を展開していますが、緩やかな中にも一定の緊張感をキープしています。メロディアスなシンセを中心に、各パートが脇を手厚く固めた「Tachyon」は、メロディの爽快感も際立った1曲。即興性の強い「Ritual」を経て、「Red Eye」はヴァイオリンとギターが先導するブルージーなテイストの長尺曲。熱気と疾走感をまといながら突き進み、一体感のあるラストを迎えます。

 Rune Grammofonレーベルが抱えるバンドの層の厚さを知る上でも格好のアルバムであり、ノルウェーのジャズ・シーンとロック・シーンのフレッシュな才能を刺激的に繋いだ会心のアルバムだと思います。各メンバーがそれぞれメインとなるバンドでの活動があるので、今後活動を続けて行くとしても今まで通り不定期なものになりそうですが、何かの機会にまたアルバムを出していただきたいところですね。


Grand General - Rune Grammofon
Rune Grammofon