2013年6月29日土曜日

FAIRCHILD『YOURS』(1988)

YOURSYOURS
(1994/05/20)
FAIRCHILD

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 現在はバラエティタレントとして活動しているYOUがかつて在籍していたテクノ・ポップ/J-POPユニット FAIRCHILD。ユニットの前身となったのは、戸田誠司氏率いるテクノ・ポップ・バンド SHI-SHONEN。1985年に本名の江原由希子名義でアイドル歌手としてデビューしたYOUさんは、ラジカル・ガジベリビンバ・システム(竹中直人氏やいとうせいこう氏らも在籍していた演劇ユニット)への客演などでも活動を行っていたのですが、その時の彼女のパフォーマンスを見た戸田氏がSHI-SHONENへ誘ったんだとか。さらに、ギターの川口浩和氏を迎えて、88年に発表したこの『Yours』でフェアチャイルドとしてデビューを果たします。

 SHI-SHONENで展開していたテクノ・ポップのテイストも若干残しつつ、そこにポピュラーなロック/ポップスのフィーリングを大胆に織り交ぜることでよりキャッチーな方向に舵を取ったサウンドは1stの時点で見事に成功しており、随所でフィーチャーされる川口氏のハードなエッジの効いたギタープレイも、楽曲にロック的なアクセントを程よく与えています。また、本作に参加されているミュージシャンには、REAL FISH(SHI-SHONENの活動と平行して矢口氏がリーダーを務めていたバンド)の矢口博康氏(sax)/美尾洋乃さん(backing vo)、カーネーションの矢部浩志氏(dr)、BOXの小室和之氏(backing vo)、作編曲家の門倉聡氏(kbd)の名前も見られます。

 YOUさんのヴォーカルとキャラクターはこの頃はまだ控えめで初々しさも残りますが、ちょっとマセた感じの歌い方が楽曲の魅力をグッと高めております(個人的には、この頃のYOUさんの声が非常に好きです)。そして何より、聴き手のツボを押さえた戸田氏の作編曲の手腕の見事さ、これに尽きます。楽しげなコーラスにも彩られた元気なポップ・チューン「おまかせピタゴラス」(当時の『さんまのまんま』のエンディング・タイアップ曲であり、シングル・カットされました)。ドラムンベースの走りのようなバッキングが疾走感たっぷりな「双子のバイオリン」。凝ったバッキングトラックも聴きものな「悪戯の森のレイン」。壮大な詞に、どこまでも透き通るような雰囲気も素晴らしい名バラード「アウラ」(作詞は、かのヒカシューの巻上公一氏)。初期の代表曲であり、"ヤッター♪"の声が差し挟まれるファニーなアレンジも面白い「嘆きの健康優良児」(2ndシングル『Bye Bye キッチンガール』のカップリング曲)等、当時のJ-POPシーンともうまく折り合いをつけた、80's歌謡エレポップの佳曲揃い。また、1曲だけ戸田氏がヴォーカルをとった「NEUTROPIC」という曲があります。この曲ではSHI-SHONEN時代を彷彿とさせる硬質なテクノ・ポップを展開されているのも、聴き逃せないポイントでしょう。本作発表当時は"アイドルに飽きたコ、寄っといで"というキャッチコピーがついていたそうですが、ユニットの方向性だけでなく、魅力の詰まったアルバムの内容も見事に形容した凄くいいコピーだなあと思います。本作と、翌年に発表された2ndアルバム『FLOWER BURGER』は、是非ともセットで聴いていただきたいところです。




There She Goes Again~戸田誠司さん
 - All About(テクノポップ/アーティストインタヴュー)
http://allabout.co.jp/gm/gc/205718/4/

FAIRCHILD:Wikipedia
戸田誠司:Wikipedia
YOU:Wikipedia