2013年2月21日木曜日

あさき『天庭』(2013)

天庭天庭
(2013/01/30)
あさき

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 BEMANIシリーズのコンポーザー、あさきの、7年半ぶりとなる2ndフルアルバム。当初は2011年の末に発売がアナウンスされていたものの、あさき氏の病気療養などもあり、結局1年ちょっと発売が延びた形に。延期に継ぐ延期で本当にリリースされるのか不安でした、いやホントに。しかし、待ちに待った甲斐はありました。全15曲75分というヴォリュームもさることながら、あらゆる声色を使い分けるあさきのヴォーカル、ヴィジュアル系ロックのフォーマット(やはりSIAM SHADEやLa'cryma Christiといったバンドからは相当に影響を受けたんだろうなあと思います)に落とし込まれた各種ニッチなサウンドの数々が、冥いトーンを湛えた幻想怪奇譚なコンセプト共々 底の知れない深い闇の中で蠢いており、前作をはるかに凌ぐアグレッションとヴァリエーションで迫る一大傑作に仕上がっています。音圧も増しており、よりダイレクトにあさきサウンドの衝撃度が伝わってくるようにもなりました。

 くぐもった声によるモノローグで、いきなりただならぬ雰囲気を感じさせる「散るを踏み 残るを仰ぐ」で幕を開け、すぐさま本作を象徴する10分越えの大曲「天庭」へ。ヴァイオリンを存分にフィーチャーした、展開に継ぐ展開と有象無象の情念が込められた息をつかせぬプログレッシヴ・メタル。「このアルバムは、「天庭」がすべてです。」というあさき氏のコメント(インタビューより)も納得の、大作にして力作です。続く「魚氷に上り 耀よひて」もヴィジュアル系ヘヴィ・プログレ。他の楽曲でもそうですが、Aメロ、Bメロの複雑かつ閉塞的な展開をこじ開けるようなキャッチーでねっとりとしたサビが絶妙な高揚感を生んでおります。前作の「赤い鈴」を髣髴とさせる、シャッフル・ビートの軽快な「行き過ぎて後に」や、メロウな「愛のかたち 幸せのかたち」といったストレートな(といってもアレンジは凝ってますが)ロック・チューンも高水準な出来。ほのかに漂う往年の昭和歌謡テイストがまたいい味を出しています。共に30秒に満たない幕間的な楽曲ながら、チェンバー・ロック的趣向で禍々しさを放つ「このひと しりませんか」「嘘仮嘘仮として けしからず」は、瞬間的なインパクトと邪気たっぷりで、異様な存在感があります。

 「まほろば教」「生きてこそ」は、共に9分越えのシアトリカルな長尺曲。前者はチェンバー・ロックmeetsアヴァン・メタルな混沌。後者は数多の声色が喧しく入り乱れ、叫びが飛び交うグラン・ギニョール。音数と言霊がみつしりと詰め込まれており、一度二度聴いた程度ではその全容を把握することは不可能に近いです。ファニーな声色でやたらねっちょりと歌い上げるヴォーカルと、リコーダーの間の抜けた音色が強迫的な「舌切り念念」、ワルツ調でメルヘンチックな「白きを廻り 黒きの巡り」は、前作にはなかった趣向の楽曲。スロウなテンポと相まって、いいようもない不安感をおぼえるのですが、一抹の希望や哀愁、翳りのようなものも孕んでおり、一言で片付け難いものがあります。どういう顔して聴いたらいいのかマジでわからなくなりました。しかしそれもまたあさきワールド也。改めて言いますが、大傑作アルバムです。有無を言わせぬ高濃度・高密度の悪意と狂気の渦巻くハイブリッド・サウンドは、カナダのuneXpectやアメリカのSleepytime Gorilla Museum、スウェーデンのDiablo Swing Orchetraといったソッチ系のバンドとも十分タメを張れるといっても過言ではないと思います。いやはや2013年の初頭から凄い作品が出たもんです。



あさき「天庭」 - コナミスタイル
あさき:公式
あさき:Wikipedia
人気BEMANIコンポーザー・あさき氏インタビュー。7年半ぶりの2ndアルバム「天庭」に込めた想い,そして音楽のルーツについて聞いてみた - 4Gamer.net

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