2012年12月30日日曜日

2012年 個人的おすすめ本20冊[裏]

やっぱりどうしても悩ましい事態になったので、以下、「裏のおすすめ」も20冊選出。こっちの方が地が出ているような気もする。

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カリブ諸島の手がかり (河出文庫)カリブ諸島の手がかり (河出文庫)
(2008/08/04)
T S ストリブリング

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西インド諸島を舞台に、心理学者のポジオリ教授が数々の事件に巻き込まれるミステリ。推理はすれど、色々と一筋縄ではいかない。回を重ねるにつれて教授の名声は広く知られる所となるものの、多様なクレオール文化の息づく環境やそこに生きる人々の思考や行動に毎回翻弄され、彼の活躍はユーモラスながら一抹の苦さを残し、不本意ながら「華々しき名探偵」とはズレた位置に否応無く立たされてしまう。教授が異教に相対する「カパイシアンの長官」と「ベナレスへの道」の2つのエピソードは本作を象徴すると言ってもいい。後者の結末には呆然の一言。

謎の物語 (ちくま文庫)謎の物語 (ちくま文庫)
(2012/02/08)
紀田 順一郎

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物語の結末を読者へ投げ、想像を膨らませるリドルストーリー・アンソロジーの新版。「女か虎か」「謎のカード」「穴のあいた記憶」など旧版からの五編+新規収録十編。『後をひく話』の収録作がどれもツボ(幻想と戦慄のショートショート「野原」(ダンセイニ)、したたかなオチに思わず苦笑いな「宵やみ」(サキ)、オチの感慨を一層深く演出する終盤の趣向が素晴らしい「園丁」(キプリング)、悪い方向に物事が進む様をエクストリームに書いたブラック・ユーモア作「七階」(ブッツァーティ)の四編)。質・量共に申し分なく、スルメな1冊。

世界文学「食」紀行 (講談社文芸文庫)世界文学「食」紀行 (講談社文芸文庫)
(2009/03/10)
篠田 一士

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古今東西の文学作品に登場した食べ物や食事シーンに焦点を当てて文学世界を巡る、楽しくも美味しい切り口が冴え渡る1冊。前菜やスープ、魚・肉、デザートや酒、果ては架空料理に至るまで、章立てで分類され、かつ簡潔にまとめられている。良質なグルメガイドとしても、また興味をそそる文学案内としても読めてしまう篠田氏の語り口は流石。長編、短編はもちろん、劇作、エッセイ、漢詩、俳句まで、俎上に載っている作品の豊かなラインナップにも圧倒されてしまう。旨そうな描写に読書中思わず唾を飲んだ経験がある人には、本書は至福のご馳走かも。

悪戯の愉しみ (大人の本棚)悪戯の愉しみ (大人の本棚)
(2005/03)
アルフォンス アレー

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軽妙ながらも黒~い毒を散りばめたショートコント集。アンドレ・ブルトンが「エスプリのテロリズム作用」と評したのは実に的確。オチもさることながら、不適な微笑みが垣間見えるかのような読み心地がたまらない。≪いつも一緒にいたい≫というカップルの望みを博士が文字通り叶えてあげる「コラージュ」、とある発明家が【空葬】のプランを持ちかける「輝かしいアイデア」(乱歩の「パノラマ島綺譚」の人間花火を思い出す)、オイシイ話の新聞広告が実は…な「宣伝狂時代」などなど、枚挙に暇がないほど魅力的な作品群。定期的に摂取したくなる毒。友人の細君の葬式で見かけた女性に一目ぼれしてしまい、もう一度お目にかけたいと望むあまりに友人を殺害してしまう「見つけた!」は、『八百屋お七』や『殺人者を判別する心理テスト』(「夫の葬儀の参列者に一目惚れした未亡人が、数日後自分の息子を殺害した。それはなぜか?」)と共通の心理を描いた一編。

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)
(2011/06/26)
米澤 穂信

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息の詰まる仄暗い雰囲気、見え隠れする殺意、背筋の寒くなるような展開・結末、とにかく読んでいてイヤ~な感触が抜け切らないのだが、盛り込まれた悪意のキレがいいのである種のカタルシスも覚えてしまう。収録されている五編にハズレはないのだけれど、特に「北の館の罪人」「玉野五十鈴の誉れ」が素晴らしい。ミステリ好きをニヤリとさせるネタ、お嬢様達の読書会「バベルの会」の全貌が徐々に見えてくる構成など、黒い悪意の間隙を縫って凝らされた趣向も美味。こういうタイプの作品も書ける人なのだなあと、認識を改めさせられた。

ライダー定食 (光文社文庫)ライダー定食 (光文社文庫)
(2008/02/07)
東 直己

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ススキノ探偵などのシリーズとはかなり趣を異にする初期短編集。奇妙な味とナンセンスとヨタ話しかなく、なおかつオチの斜め上(斜め下)ぶりが顕著で、非常に好みの分かれる内容。個人的には見事など真ん中ストライクで楽しめた。ありふれた内容ながら最後まで読むと思わず嫌な笑いが漏れ出る表題作、納豆かき混ぜ用の箸や、ある一家を飛び回る蝿の葛藤や悲哀が書かれる「納豆箸牧山鉄斎」「間柴慎悟伝」、とめどもないヨタ話四方山話の連続、煙にまかれたような構成に呆然とさせられる「一九九三年八月十六日」「炭素の記憶」など全六編。

左巻キ式ラストリゾート―ぷにふごEX (パンプキンノベルズ)左巻キ式ラストリゾート―ぷにふごEX (パンプキンノベルズ)
(2004/04)
海猫沢 めろん、ぴぃちぐみ 他

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メタ官能シミュレーション小説、メフィスト味のミステリを添えて。表紙をめくって3秒で「ひぎいいいっ」で埋め尽くされたページの洗礼を浴びる。原作は未プレイだが、元のゲームとは別物だというのはよーくわかった。危うさ全開の一冊である。テンプレだらけなキャラとエロ、そして崩壊する作品世界、全てが意識的な所業のもとに展開されている。メタメタな趣向は、今読むといささか古さを感じてしまうのだけれども、めろん先生のブチ切れっぷりは存分に堪能可能。鬼ノ仁先生のエロエロ極まりないイラストもSO GOOD!NO FUTURE!

グアテマラ伝説集 (岩波文庫)グアテマラ伝説集 (岩波文庫)
(2009/12/16)
M.A.アストゥリアス

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濃厚な色合いと眩暈のもと出力された、自然の匂いと躍動に満ちた神話・伝説的世界。刺激的なマジック・リアリズムの虜になってしまった。魂を巡って「博士」と商人、奴隷女が織り成す『「刺青女」の伝説』、ひとりの男の鞠に対する奇妙な愛憎を描く『「大帽子の男」の伝説』、むせ返るようなイメージの氾濫に酔わされる『春嵐の妖術師たち』の三編が特にお気に入り。マヤの創造神ククルカンと、彼を取り巻くグワカマーヨやチンチビリンたちによる騒々しくユーモラスなやり取りが展開される戯曲『ククルカン』は、何というか読んでて至極翻弄される。

田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)
(1990/06/05)
藤枝 静男

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『田紳有楽』の方に意識の全てを持っていかれた。本物へ生まれ変われという主人の期待のもとに池の底に沈められた偽者の焼き物たちが饒舌に語るという妙にヒネクレた設定のもと、自由奔放な語りの世界が愉快に展開されている。静かだが果てしなく奥深く、ともすれば森羅万象を呑まんとするイマジネーションの戯れを見た。このえもいわれぬ感じは一読しただけじゃ味わい切れない。改めて読み直していきたい。

せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)
(2000/06)
梶山 季之

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��せどり男爵>笠井菊哉氏と、「本の虫」な人々の悲喜こもごもを書く連作短編集。話のプロットだけ見ればミステリ要素は薄いように思えるが、本の魔力に魅入られ、とり憑かれた人々の行動心理は十分ミステリだと思う。超稀覯本の売買を巡るしたたかなやりとりが書かれる「桜満開十三不塔」、人の生皮を使った本の装丁に執着する装丁師を書く、猟奇的エロスと執念に満ちた生々しいエピソード「水無月十三公九」の二編は個人的にフェイバリット。各所で登場する、男爵愛飲のジンと焼酎の水割り<セドリー・カクテル>の存在がまたいい味を出している。

猿蟹合戦とは何か―清水義範パスティーシュ100〈1の巻〉 (ちくま文庫)猿蟹合戦とは何か―清水義範パスティーシュ100〈1の巻〉 (ちくま文庫)
(2008/12/10)
清水 義範

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パスティーシュ&マッシュアップ。「柳瀬尚紀対訳版フィネガンズ・ウェイク」風の超絶猿蟹合戦『船が洲を上へ行く』、立川文庫風J.P.サルトル評伝『猿取佐助』、笠地蔵+大菩薩峠=『笠地蔵峠』、著作・落語・広告・説明書・歌謡曲・漫画などでパロった日本国憲法前文『二十一の異なるヴァージョンによる前文』、永井荷風『四畳半襖の下張』風官能料理テキスト『四畳半調理の拘泥』等等。清水氏による「自著解説」での元ネタ種明かしも楽しい。パロディ元の作品が解っているとより楽しめる内容なので、一通り元ネタに触れてから再読したくなる。

(成)ディープ淫パクト (SANWA COMICS No.)(成)ディープ淫パクト (SANWA COMICS No.)
(2012/08/31)
ディープバレー

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淫語彙力の限りを尽くす情報量過多なエロマンガ。埋め尽くされたセリフを見ればいいのか肉厚豊満なボディを見ればいいのかわかりゃしねえ!と、ちょっとした視覚的淫乱もとい混乱状態に陥る。例えるなら、バトル漫画とかによくいる解説役のキャラクターをエロマンガにブチ込んだような感じ。若干まどろっこしさも感じてしまうけど、終始異様なテンションが充満していてインパクト絶大。女の子のキャラクターのヴァリエーションも一通り揃っている(軒並み淫乱である)。聡明な眼鏡っ娘が分析セックスを繰り広げる「素COOLガール」がマイベスト。

カーマ・スートラ―完訳 (東洋文庫 (628))カーマ・スートラ―完訳 (東洋文庫 (628))
(1998/01)
ヴァーツヤーヤナ

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性交指南書であり、恋愛指南書でもあり、まさに「性典」たる内容。現代社会に適用するのは難しい部分も多いが、性愛への眼差しに深い感銘をおぼえる。当時のインドは密通が横行していたらしく、人妻を誘惑する方策と人妻を他人に寝取られないための方策の両方について言及されていて面白い。『もし男がある人妻を見て強い愛著を感じ、層一層愛欲の心の昂進するときには、自身の破滅を防ぐために、その人妻に近づくべきである。』 また、「爪を立てる」「歯で噛む」「スパンキング」も性技のひとつとして指南されており、奥深さをひしと感じる。

和訳 聊斎志異 (ちくま学芸文庫)和訳 聊斎志異 (ちくま学芸文庫)
(2012/05/09)
蒲 松齢

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独特のルビ遣いのインパクト。「異哉此女!(へんなこだね!)」「能令我真箇銷魂否(ぼくにひとりくれないか)」など、原文の形を残しながらも親しみやすい語り口で読ませるスタイルは実にユニーク(ただ、毎話の終わりに付いている蒲松齢先生のコメントまでは訳されていない)。入門の書としてのとっつきやすさや話の精選ぶりを考えると岩波文庫から出ている上下巻の方に軍配が上がるのだけれども、魅力に溢れる柴田天馬氏の対訳版は触れてみて損はない。活き活きとした語り口の面白さがより一層際立ってくるので、比較しながら読むのもまた一興。

リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
(2011/12/07)
スコット・ウエスターフェルド

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ヘタにスチームパンクを謳ったアダルト向け作品よりはるかに魅力を感じるヤングアダルト冒険SF。人造巨獣はロマン。ストーリーの方は三部作全部読んでからじゃないと評価しづらい感じだが、面白い。引き続き『ベヒモス』も読まざるをえない。

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1
(2012/09/29)
ブラッドレー・ボンド、フィリップ・N・モーゼズ 他

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カオスの紡ぐ夢の中で (〈数理を愉しむ〉シリーズ) (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)カオスの紡ぐ夢の中で (〈数理を愉しむ〉シリーズ) (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
(2010/05/30)
金子 邦彦

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海馬亭通信2 (ポプラ文庫ピュアフル)海馬亭通信2 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2012/03/06)
村山 早紀

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憑霊信仰論 妖怪研究への試み (講談社学術文庫)憑霊信仰論 妖怪研究への試み (講談社学術文庫)
(1994/03/04)
小松 和彦

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暇と退屈の倫理学暇と退屈の倫理学
(2011/10/18)
國分 功一郎

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