2010年9月14日火曜日

Chachamaru(藤村幸宏)『AIR』(2002)

Air


 VIENNA関連作品その2。VIENNAのフロントマンその人である藤村幸宏こと茶々丸の現時点での唯一のソロアルバム。かつてGERARD、VIENNAといったジャパニーズ・プログレ・バンドに在籍した彼は、現在はGacktのバックバンドであるGackt Jobのギタリスト兼プロデューサーを務めており、名実共にGacktの右腕的存在として活躍しているのですが、本作はGacktの三枚目のソロアルバム『MOON』がリリースされてから約半年後に発表されたもの。

 集まったゲストミュージシャンも氏の人脈から総動員されており、Gackt(vo)は勿論のこと、西田竜一(ds)&永井敏巳(b)&塚本周成(kbd)といったVIENNA時代の盟友(ちなみに永井氏と塚本氏はGacktのアルバムのレコーディングメンバーでもあり、また、西田氏は一時期Gacktのツアーサポートメンバーを務めていました)、そしてDED CHAPLIN時代の盟友である二井原実(vo / LOUDNESS)&菅沼孝三(ds)、GERARD時代の盟友である五十嵐公太(ds / ex JUDY AND MARY)さらにEARTHSHAKERの西田昌史(vo)&工藤義弘(ds)、寺沢功一(b / ex BLIZARD~SLY)、真矢(ds / LUNA SEA)、和佐田達彦(b / ex 爆風スランプ) という錚々たる面子で花を添えています。

 楽曲は打ち込みも交えてのシンフォニック・ロック/ハード・ロック路線で、モダンなヴィジュアル系ヘヴィ・ロック「Divine」や、打ち込みとストリングスがゴージャスなバラード「As」の序盤二曲はGacktのソロからの流れも感じさせます。そこでの茶々丸氏のヴォーカルはVIENNA時代以上にねっちょりした歌い回しになっており激しく好き嫌いが分かれそうですが、これはGacktからの影響なのか、それとも時代の流れに合わせたものなのか。また、ゲスト・ヴォーカル曲は三曲あり、二井原氏がエネルギッシュに吼えるラフなロック・ナンバー「Metamorphose」、西田氏のハスキーなヴォーカルが実にマッチするブルージーなミドルテンポのハード・ロック・ナンバー「Grieve」と、ゲストの持ち味を生かした仕上がりになっているのですが、中でもGacktがヴォーカルをとる「Kagero」は極めつけ。シンフォニックなバラードという曲調もさることながら、サビを始めこれでもかとドラマティックな見せ場が盛り込まれており、Gacktのヴォーカルが凄まじく映える感動的なまでの1曲に仕上がっております。茶々丸氏のGacktへの優遇ぶりがえるのも微笑ましい。

 楽器隊の実力が炸裂する楽曲ももちろんあり、「Luscious」は、ゴシック/クラシカルかつ派手なキーボードアレンジに、"手数王"菅沼氏の細やかなドラミングがスリリングな疾走感を与えているプログレ・ハード ナンバー。落合徹也氏のヴァイオリンと、茶々丸、永井、菅沼の三名による、元VIENNA/元DED CHAPLIN組の面目躍如と言わんばかりに暴れまわるインタープレイは聴きモノです。また、10分に及ぶ大曲「CANONE」は、VIENNAの1stアルバムのハイライトであった楽曲のリメイク。原曲よりもさらに塚本氏のシンセが全面に押し出ており、アレンジも時代相応といった感じになっておりますが、やはり気合が入っております。本作もまた中古盤を結構安い値段で見かけるのですが、だからといって見過ごすのは勿体無い一枚。




chachamaru:Wikipedia

2010年9月12日日曜日

TOSHI『Mission』(1994)

MISSION
MISSION
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TOSHI
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 VIENNA関連作品その1。X-JAPANのTOSHIの2ndソロアルバム。今じゃ中古で100円かそこらで簡単に手に入るシロモノなのですが、参加ミュージシャンや楽曲の充実ぶりが素晴らしく、スルーするのは勿体無い1枚。個人的には間違いなく彼の代表作は本作だという認識です。藤村"茶々丸"幸宏(g)、永井敏巳(b)、菅沼孝三(ds)、塚本周成(kbd)といったVIENNA/DED CHAPLINの楽器隊が全面的に参加しているほか、LOUDNESS/DED CHAPLINの二井原実も楽曲提供で参加、また、NIGHT HAWKSの青木秀一(g)&工藤哲也(ds)の両氏の名前も見られます。92年発表の前作『made in HEAVEN』はシンフォニックなAORポップス作品でしたが、本作は色濃いハード・ロック路線にこだわった一枚。参加ミュージシャンのラインナップもあってかDED CHAPLINに近いソリッドな雰囲気も感じさせ、タイトルから「Rusty Nail」を意識したであろうことが伺える冒頭曲「Rusty Eyes」や、「Chase Of Times」「Heart of the back」は、豪快なハード・ロックに仕上がっております。特に「Chase Of Times」は楽器隊の技巧面も全面に押し出したキラーチューン。弾きまくる茶々丸のエッジの効いたギターワーク、抜群の安定感でガッツリ支えるリズムセクション、盛り上がりに花を添える嫌味のないキーボードアレンジがカッチリとまとまり、TOSHIのヴォーカル共々、ラフな勢いのあるX-JAPANとは違った側面で魅せてくれます。




 「LADY」はDED CHAPLINのレパートリーをリメイクした楽曲で、ドラマティックなサビで落とすミドル・チューン。続く「Bless You」もストリングスや泣きのギターソロも盛り込んでの壮大なパワー・バラードで、非常に頼もしさを感じさせる1曲。ギターの泣きで言えば「Heart Of The Back」もまた素晴らしい。アコースティックな小品の「intermission」や、伸び伸びとリラックスして歌い上げる「Love Dynamics」など、後半は前半に比べると穏やかな流れにありますが、どこか物悲しさも感じさせるクラシカルなシンセやコーラスアレンジの中で歌い上げる秀逸なラストナンバー「Moon Stone」(ちなみにこの曲は後に再編VIENNAでもリメイクされています)で堂々たるエンディングを迎え、しっかりと筋を通します。改めて、茶々丸をパートナーに迎えたこのハードな路線はアルバム1枚こっきりで終わらせてしまうには惜しい。

2010年9月5日日曜日

VIENNA『Overture』(1988) / 『Step Into...』(1988) / 『Unknown』(1998)

オーヴァーチュア=序章(紙ジャケット仕様)オーヴァーチュア=序章(紙ジャケット仕様)
(2011/09/07)
ヴィエナ

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 GERARDの藤村"茶々丸"幸宏(vo. g)を筆頭に、AFFLATUSの永井敏巳(b)、OUTER LIMITSの塚本周成(kbd)、NOVELAの西田竜一(ds)という、当時の国内プログレシーンのツワモノ達によって結成されたプログレ・ハード・ロック・バンド:ヴィエナの88年発表の1stアルバム。ロッキンf誌の後押しもあり、低迷していた国内プログレ・シーン活性化のために結成されたものの、時流の流れには逆らえず、あまりにも短い活動期間で終わってしまったプロジェクト・バンドです。その編成や音楽性から、英国のスーパー・プログレ・バンドだったU.K.を意識していただろうことは明らかで、U.K.を思わせる楽曲のキャッチーさ、複雑な変拍子展開、各パートが存在感のある技巧的演奏を繰り広げております(特に永井氏のフレットレス・ベースのうねり具合はかなりの存在感)。ただ、ヴォーカルが弱いのがタマにキズで、茶々丸のお耽美なヴォーカルが入った瞬間に違和感を覚える部分も少なくないです。ノヴェラ、ジェラルドと同路線を狙っていたと言えないこともないんですが、テンションの高い演奏だけで十分に聴かせてくれるだけに、無理してヴォーカルをとらなくても良かったのでは? とも。しかしながら、やはりそこはバンドとしての個性をもうひとつ押し出したかったのかなあと。とはいえ、楽曲は質・量共に文句なく素晴らしい内容に仕上がっております。ラストに収められた10分近くに及ぶ「Canone」は、塚本氏のキーボードワークをフィーチャーしたシンフォニックな力作。


ステップ・イントゥ・ヴィエナ(紙ジャケット仕様)ステップ・イントゥ・ヴィエナ(紙ジャケット仕様)
(2011/09/07)
ヴィエナ

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 こちらは同年の12月に発表された2ndアルバム。茶々丸氏のヴォーカルはやはり好き嫌いが分かれるところですが、演奏のテンションは前作以上。複雑な楽曲展開の中で各人がその技巧を存分に発揮しています。曲調もアグレッシヴに寄ったりシンフォニックに寄ったりと、明確なメリハリがついたことでグッとパワフルに進化。何よりも思い切ったサウンドが全編に炸裂しているのがホントに気持ち良いです。耽美な雰囲気に溢れたシンフォニックなイントロダクション「Step Into The Vivid Garden」から、ウルトラハイテンションかつ濃密なバンドアンサンブルが一体となってが押し寄せる「Gathering Wave」の流れは超強力。ド派手にぶっ放される壮大かつ分厚いキーボードサウンド、フレットレスベースのゴリゴリとしたうねり、細かく隙間を縫って刻まれるドラミング、唸りを上げて切れ込み、さらなる厚みを加えていく鋭角的なギタープレイ、この2曲で既に満足を覚えてしまうほど印象深いものになっています。また、大仰にしてかなり力の入った歌モノプログレ・ハード曲「Magic Eyes」は、歌詞のこっ恥ずかしさも含めて、色んな意味で印象深い。GERARDやNOVELAライクなゴリ押し曲「Caution!」や、ラストの「Fall In Alone」も詰め込める要素は全部詰め込んだ濃厚な佳曲。間違いなく80年代国内プログレシーンに残る名盤であります。






プログレス-ラスト・ライヴ-(紙ジャケット仕様)プログレス-ラスト・ライヴ-(紙ジャケット仕様)
(2013/09/04)
ヴィエナ

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 89年にラスト・ライヴを行い、その時のパフォーマンスを収録したライヴアルバム『Progress』をリリースし、バンドは解散してしまうのですが、茶々丸氏と永井氏の二人はその後まもなく二井原実氏率いるDED CHAPLINに参加し、新たな活動を続けることになります。そしてそのDED CHAPLINの流れを組む形でVIENNAは再編(前三作でプレイしていた西田竜一氏に代わって"手数王"菅沼孝三氏が加入)することになり、96年に発表されたのが本作。DED CHAPLINの活動を経たためかサウンドはハード・ロック色がかなり強まり、DREAM THEATER以降のテクニカルなプログレ・メタルの流れも感じさせる方向性になっています。とはいえキャッチーな落としどころは健在で、演奏的にも楽曲的にも全体的にバランスの良い内容。茶々丸氏の声質も若干ハスキーになり、これまでのねっとり耽美な歌い回しはよりラフな印象を感じさせるものに。ガラリと様変わりしたVIENNAサウンドは、荒々しい疾走感溢れる1曲目「Entrance」から十分に炸裂。キーボードが引っ込み、エッジの効いたギターが全面に押し出されることでスマートさが増し、さらに菅沼氏の手数で押しまくるドラミングが楽曲にフックをもりもり生み出しているのが、80年代VIENNAとはまた違ったカタルシスを感じさせるポイント。インストナンバー「Anubis」におけるめまぐるしい暴れ回りぶりは一聴の価値アリですし、イントロに荘厳なコーラスをフィーチャーしたミドルテンポのプログレ・ハード「Legend」は、様式美すら感じさせる練りこまれた重厚な展開が光る約10分の大曲であります。また、「Open Sesame」「Moonshine」は、どちらもチャーチオルガンやチェンバロの響きが美しいバラードナンバー。ちなみに、「Moonstone」は94年にX-JAPANのTOSHIが発表した2ndソロアルバム『Mission』(実はVIENNAのメンバーが全面参加)に提供した楽曲のセルフリメイクで、TOSHIが歌ったヴァージョン以上にドラマティックなアレンジになっております。80年代VIENNAとはやはり別物という印象こそしますが、聴き応え十分の快作。ちなみに、80年代の2枚のアルバムは既に廃盤となっていますが、本作はiTunes Storeや公式サイトの通販で現在も購入することが可能です。前者では1350円で全曲購入可能。


VIENNA:公式
chachamaru:Wikipedia