2010年4月26日月曜日

THE ALFEE『新世界 ― Neo Universe ―』(2010)

新世界 -Neo Universe- (通常盤)新世界 -Neo Universe- (通常盤)
(2010/03/10)
THE ALFEE

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 通産23枚目、約3年ぶりとなるジ・アルフィーの新作アルバム。70年代、80年代、90年代、00年代と、現在に至るまでに10年周期で音楽性をフォークからHR/HM、プログレ、ビート・ロック/ポップスと変化させてきたというだけあって、10年代最初の作品となる本作ではどのような方向性になるのかと興味のそそるところでありました。アルバムタイトルでもある「Neo Universe」が冠された楽曲が3曲、Part I~IIIに分かれて冒頭に据えられているということで、すわこれは90年代のプログレ路線に再び回帰したかと想像を巡らせておりましたが、その予想は半分当たった形に。

 オープニング「Neo Universe Part I」からいきなり壮大なキラーチューンをぶつけてきています。「メロディック・ハード究極のコーラス・ワーク」というアルバムのコピーの通り、圧倒的な厚さを誇る怒涛のコーラスワークが盛り上げに盛り上げるダイナミックな1曲。90年代後半に発表した『Nouvelle Vague』を彷彿とさせられます。続く「LAST OF EDEN~Neo Universe PART II」ではここぞとばかりにテクニカルな変拍子リフを叩き込む疾走プログレ・ハードチューン、激しい曲調だと妙に映える?高見沢氏の危なっかしいヴォーカルも炸裂しております。若干哀愁を感じさせるサビのメロディラインを聴くにつけ、ALFEEというよりは高見沢氏のソロアルバム寄り(07年に発表した2nd『Kaleidoscope』の方向性に近い)という印象もしますが、大仰な味付けはやはりALFEE。イントロ&アウトロのケーナ(かな?)もまた良いアクセントになっております。3部作のシメとなる3曲目「新世界を越えて~Neo Universe PART III」は桜井氏のヴォーカルによるパワフルなメロディック・ロック・チューン。QUEEN風コーラスワークと終盤の畳み掛けが聴きモノ。以上、強力な押しの楽曲3曲によるこの華麗な流れは実に本作を象徴するものになっております。

 しかしプログレな流れはここまでで、以降はタイアップ曲も織り交ぜてのメッセージ・ソング中心。毎度、なんというか高見沢氏の書く詞は半分くらい適当というかヤケクソになって書いてるような気がして苦笑いしてしまうところもあるんですが、歌詞よりゃ楽曲重視!ということでそこはご愛嬌ですねもう。思いっきり捨て曲めいた曲もありますが、歌謡バラード(「この愛を捧げて」)、アコースティック・フォーク(「風の詩」)、ロックンロール(「GET YOUR CHANCE」)、デジポップ(「初恋の嵐~Love Hurricane」)と豊富な曲調で攻め、フレッシュなイメージをキープしつつアルバムのシメはキッチリとつけるあたりは流石です。元々フォークが原点であるだけあって「風の詩」は貫禄の1曲ですし、「Zipangu」は曲調・詞・アレンジに至るまで実にALFEEらしい明快なアイデンティティに溢れています。最終的なアルバムの印象としは、00年代の流れを汲みつつ90年代への若干の回帰をみせる、というものですが、壮大に始まり壮大に終わる構成は新しい10年期のはじまりを飾るにふさわしい1枚でありましょう。


2010年4月19日月曜日

qwerty (NARASAKI/百々政幸)『アクエリアンエイジSaga II Don't forget me... OST』(2003)

アクエリアンエイジOVA「アクエリアンエイジSagaII~Don’t forget me...~」通常版 [DVD]アクエリアンエイジOVA
「アクエリアンエイジSagaII ~Don’t forget me...~」
通常版 [DVD]

(2003/11/21)
オリジナルアニメ

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 サントラが付属しているDVDを中古300円くらいでたまたま見かけたので入手。03年に制作された〈アクエリアンエイジ〉シリーズのOVAの封入特典として収められているサウンドトラック。OVA本編の評判はすこぶる悪かったそうですが、そんな本作の楽曲コンポーズを手がけた"GoroWatari""MOMO"のふたりによるユニット「qwerty」は注目であります。この二人の正体はCOALTAR OF THE DEEPERS(以下ディーパーズ)のフロントマンであるNASARAKI氏(GoroWatariこと"渡五郎"は氏が使う変名の一つ)と、宇多田ヒカルや浜崎あゆみの楽曲アレンジから、ヤプーズ、P-MODELのアルバムやツアーサポートへの参加歴があり、上領亘氏(ex GLASS VALLEY~P-MODEL)とのユニット"鴉"、元P-MODELの福間創氏のSoyuz Project他多数のプロジェクト/アーティストとのコラボレート歴のあるコンポーザー/アレンジャーの百々政幸氏(彼の多種多彩な経歴については公式サイトのプロフィールを参照のこと)。NARASAKI氏にとって初のアニメ劇伴作が本作。高橋洋子さんが歌う主題歌「Change My Heart」の編曲とギター演奏にも氏は関わっております。

 劇伴曲の担当はNARASAKI氏、百々氏でちょうど半々の受け持ち。ところどころエスニック風味やら和風味やらを織り交ぜつつ、アンビエント/エレクトロニカ志向のダークで醒めた楽曲をメインに展開。サントラということで1曲1曲が30秒から1分半ほどの短い尺で、場面に合わせた雰囲気重視の楽曲が多くを占めておりますが、ブレイクビーツな攻撃的シーケンスにずっしり重いディストーションギターが載る楽曲は一発でNARASAKI氏によるものだと解ります。ディーパーズのようなエグさはそこまでないですが、NARASAKI氏の別側面を知る上では面白い内容ではないでしょうか。そんな本サントラで白眉といえるのが、エンディングテーマである"Aquarian Age"。浮遊感と疾走感にあふれるデジロック・インストナンバーで、サントラのラストには4分近くまで拡張したリミックスヴァージョンも収録されています。ちなみにこの曲は、'07年に発表されたディーパーズのオリジナルアルバム『Yukari Telepath』でさらにリメイクが施されます。原曲/リミックス版と、さらなる空間的広がりと近未来感のあるアレンジがなされたディーパーズ版、聴き比べてみるとまた興味深いものがあります。7年前のOVA作品とはいえ、中古市場での入手は比較的簡単な部類だと思うので、探し出して聴いてみるのもまた一興でしょう。




アクエリアンエイジSagaII Don't forget me…:Wikipedia
NARASAKI:Wikipedia
MYDUMMY BOARD:百々政幸 公式

2010年4月14日水曜日

ALHAMBRA『Solitude』(2010)

SOLITUDE
SOLITUDE
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ALHAMBRA
SPACE SHOWER MUSIC (2010-04-07)
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 世良純子嬢擁するドラマティックなプログレッシヴ・ハード・ロック・バンド アルハンブラの3rdアルバム。前作『Fadista』はガッチリとした楽曲構成&怒涛の攻勢でバンドの圧倒的な力量をこれでもかと示した"攻め"のアルバムでしたが、今回は全8曲40分(うちイントロダクションが1曲、リメイクが1曲)、大曲もなし、ということで1st、2ndに比べるとヴォリューム少な目。ある種ミニアルバムのようにも感じますが、バンドのテクニカルな部分はそのままに、よりキャッチーな方向性を追求し、全体的にタイトに引き締まったという印象も強いです。洗練を重ねたとは言え、やはりキラーチューンの精度は凄まじいものがあり、2分に及ぶイントロダクション「東風遥か」から続く「Earnest」は、さながらサビが3段あるのかと思ってしまうほどに必殺級のフレーズで疾走するAメロ~Bメロ~サビ、さらにテンションを高める世良嬢のヒロイックなハイトーンヴォーカル、怒涛の流れのソロパート、といった具合に3拍子揃った『これぞALHAMBRA!』という魅力がガッツリ凝縮された1曲。いきなりクライマックスです。フックを盛り込みつつも確固たる安定感、存分にヴォーカルも生きる「Double OO」「Die Erde」。プログレメタルではなくプログレハード的なイディオム全開の、王道にして堂々たるミドルレンジナンバー「Solitude」。本作随一のキャッチーさを誇る歌謡ハードロックナンバー「約束の鍵」は、本作の"よりコンパクトかつキャッチーな"方向性をハッキリ位置づける2曲。1stアルバム収録の「Orion」の再録である「Orion 2010」は演奏・ヴォーカル共にパワーアップしているのがハッキリと伺える頼もしいリメイク。ラストはピアノとヴォーカルのみのアコースティックな小曲「ゆきうさぎ」で軽やかに〆。見事なスキのなさとブレのなさ。名実共に国内トップクラスのプログレ・ハード・ロック・バンドであるということをさらに確信させる貫禄の1枚だと思います。ヘヴィローテーション盤。

ALHAMBRA:myspace
ALHAMBRA:公式

2010年4月8日木曜日

DEATH ORGAN『Universal Stripsearch』(1997)


 現SPIRITUAL BEGGARS、OPETHのキーボード奏者であるペル・ヴィバリが90年代に率いていた、スウェーデンのギターレス オルガン・ハード・ロック・バンド デス・オルガンの2ndアルバムにして、最終作。95年リリースの1stアルバム同様、本作でもATOMIC ROOSTERやAARDVARKといった、オルガンがフロントを切ってブイブイ言わせていた70年代のブリティッシュ・ヴィンテージ・ロックを志向した方向性を存分に展開しています。ディストーションやらファズを効かせまくって歪みに歪んだハモンドオルガンサウンド、ビリビリと重苦しいベース、それらに比べてやたら軽く淡々としたドラムス、そしてオルタナティヴ・ロック由来の激情に任せたシャウト(というかガナリ合い)をしまくる二人のヴォーカルのコンビネーション…ぶっちゃけ、ヘヴィというにもテクニカルというにも今ひとつ煮えきっていないサウンドは相変わらずなんですが、ユーモラスでミョーに切り捨てられない魅力のあるバンドであるのも確かなわけで、マジメにやってるのか確信犯的にやってるのかよくわからないこのC級寸前のB級っぷりに突っ込むのはもはや野暮だなあと。重々しいオルガンのイントロからタテノリのハードロックへと誘う「Ahead」や、「Progress」(タイトルに反して歌っていることは虚勢を張る自暴自棄野郎のなのもイカス)の愉快なヤケっぱち具合を聴いてるとどうでもよくなってきます。また、本作ではRUSHの「Tom Sawyer」FEAR FACTORYの「Scapegoat」のカヴァーも収録されております。前者は重心低めになって結構カッコ良くキマっておりますが、後者はなんかマヌケというか情けなくなっててこれはこれで面白いことになってます。誰がこの曲のカヴァーを提案したんだ(笑)。ラストは9分を越える荘厳な長曲「3 D Days」で、広がるハモンドの響きを耳いっぱい腹いっぱいに喰わせて堂々たる〆。アルバム1枚だけ出して1発ネタ…で終わらせなかったことも含めて、90年代にここまで時代錯誤(良い意味で)をやらかしたというだけで素敵だなあと改めて思う次第。このバンドが再結成する日は…くるのか?




DEATH ORGAN:Wikipedia
Per Wiberg:Wikipedia

2010年4月2日金曜日

Pantokraator『Tormidesoojad』(2009)

Tormides (the Storm Eaters)
Tormides (the Storm Eaters)
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Pantokraator
CD Baby (2009-06-24)
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 エストニアのプログレッシヴ・ハード・ポップス・バンド パントクレーターの2ndアルバム。バンドの結成は83年、1stアルバムのリリースが90年、そして92年にエストニアの経済状況悪化のため一度バンドは解散しており、本作は約20年ぶりとなる復活作。再編ラインナップは、結成時からのオリジナルメンバーであり、キーボード、ギター、フルートなどをこなすマルチミュージシャンのエリク・サコフ氏をフロントマンに、解散時のメンバー+若手メンバーという構成。まず耳を引くのが男性ヴォーカリストであるLauri Saatpalu氏の巻き舌込みのクセのある母国語ヴォーカル(ちょっとRammsteinのティル・リンデマンっぽくも感じる)と、二人の女性ヴォーカルによるクリアーなコーラスワーク。耳にこびりつくというか、一度聴いたらなかなか忘れようにも忘れられません。

 ミドルテンポでタメの効いた曲調でハードかつダイナミックに歌い上げられる1曲目の「Metsavaht」や、捻りの効いた民族調コーラスワークをフィーチャーしたカラフルなプログレ・ポップス・ナンバーの2曲目「Linnamang」は抜群のインパクトで、この冒頭2曲でいきなりガシっと惹き込まれます。音楽的には5大プログレバンドやジャン・ミッシェル・ジャール、MARILLIONなどから影響を受けているそうで、トロピカルな曲調や素朴なアコースティック・テイストはYES、GENESISからの影響を特に強く感じさせます。また、「Kasmu」でのヘヴンリーなコーラスワークや、「Tormidesoojad」「Paus On Hea」での浮遊感溢れるムードの中でのドライヴ感溢れるテクニカルな展開などを聴くにつけ、Anderson Bruford Wakeman&Howeからの影響も多分に伺わせられます。80年代の空気をたっぷりと感じさせるのもそのあたりに因るのではないかなと。結構なクセとアクの強さですが、壮大でパワフルなプログレッシヴ・ハード・ロック/AORサウンドで1曲1曲をコンパクトに纏め上げているのは実に見事。長年の雌伏で蓄えたエネルギーだけでなく、英米のバンドとは明らかに一線を画している強烈な個性の迸りっぷりをビシビシと感じます。久々に辺境ロックの醍醐味を味わいました。



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