2010年3月30日火曜日

MCI_Error 「WIND」「WATER」「BANISH」「HUMAN」(2010)

 ニコニコ動画の“プログロイド”タグの初期の名曲と言えるのがコチラ。MCI_Errorさんによる、巡音ルカをフィーチャーした四部作(Part.1"WIND" Part.2"WATER" Part.3"BANISH~楽園追放~" Part.4"HUMAN:An optimist's nightmare")であります。プログレッシヴ・ハード・ロック、という以上に、いわゆるポンプ・ロックとも言われた80年代以降のシンフォニック・プログレの流れを汲んだ曲調で、キャッチーな落としどころとテクニカルな展開がたっぷりと盛り込まれており、各曲10分、トータル40分という長さを感じさせない仕上がりが実に素晴らしい。











studio mc2 2nd

2010年3月27日土曜日

IT BITES 2010 3/20 渋谷 O-EAST ライブレポート



 昨年7月の来日公演に行けなかったのがずっと悔しくて悔しくてならなかったわけですが、先週土曜日にO-EASTで行われた2度目の来日公演で雪辱を果たすことができました。しかし、わずか1年もしないうちに再び来日するという話が入ってきたときは驚かされました、と同時に嬉しいニュースでもあり、今度こそは観るっきゃないということで喜び勇んでチケットを買いに走ったものです。

 土曜日は色々と立て込んでいてライヴに間に合うかどうか不安であったのですが、ダッシュで走ってなんとか開演時間5分前に会場に到着。お客の入りはかなりのもので、ほぼ満員状態だったと思います。ドリンク飲み干して一息ついた頃にちょうど開演、ステージ左から、ネイザン・キング(Ba)、ボブ・ダルトン(Dr)、ジョン・ミッチェル(Gr)、ジョン・ベック(Key)の並びで(ベースが去年と同様ネイザン氏だったということで、リー・ポメロイ氏は今回も参加できなかった模様)1曲目は現行最新作『The Tall Ships』の楽曲でも一際煌びやかでキャッチーな「Ghosts」で景気良くスタート。多少ぎこちない感じはしたものの、聴きたいと思っていた曲が初っ端から来た嬉しさで全然気にならず。2曲目は、1stアルバム『The Big Lad In The Windmill』より「All In Red」。原曲ほどのコーラスハーモニーの厚さはなかったですが、思いのほかヘヴィなギターでカヴァーしていたように思いますし、やはり1stアルバムでも印象的な1曲であることに変わりはなかったです。3曲目の「Underneath Your Pillow」は3rd『Eat Me In St Louis』の1曲。こちらもハーモニーの厚いAOR然とした1曲で、このあたりで結構演奏は暖まってきたのではないかなと感じました。ところで、生で一度観たいと思っていたかったジョン・ミッチェルはやはり愛嬌たっぷりな人物で、たびたび"私のスペシャルドリンク"と称する蜂蜜ジンジャードリンクを飲んだり、頻繁に飛び跳ねたり、胸に手を当てて甘いヴォーカルで歌い上げたりと、その仕草はホントに観ていて飽きなかったです。オリジナル・メンバーではないとは言え、演奏・ヴォーカルのパフォーマンスを含めて、新生IT BITESのキャラクターとして十分魅力的な人材であると認識を新たにした次第であります。遠めから観てもやはりイケメンオーラを放っていたジョン・ベック、自分の位置からは顔は見えなかったですが、安心して身を任せられるドラムプレイでサウンドを支えていたボブ・ダルトン、安定感もさることながら、フレットポジションの光るベースでさりげなく存在感もアピールしていたネイザン・キング、と、各人の姿もまた印象的。話を戻して、4・5曲目は再び『The Tall Ships』より、ミッチェルの甘いファルセットヴォーカルが一際生きる「The Tall Ships」。そして、大曲の風格を備えた、コーラス、アンサンブル共に聴き所たっぷりの「The Wind That Shakes The Barley」という、アルバム終盤に連なった2曲を続けて、第一部は終了。5分の休憩を挟みます。

 第2部は、今回の来日公演の眼目である『Once Around The World』完全再現ということで、会場の熱気も一際高まりを見せておりました。「Midnight」でも歓声が上がっておりましたがさることながら、躍動感溢れる名曲「Kiss Like Judas」はやはり皆テンションが一段と上がる上がる。あの分厚いコーラスのサビ"Kiss Like Judas~♪"は思わず歌いだしたくならざるを得ないというもの。ピカイチの疾走感で捻りを加えながらドライヴする「Rose Marie」、コーラスハーモニーもふんだんに盛り込まれ、優雅ながらも複雑なミドルテンポの中曲「Old Man And The Angel」はアツいインタープレイも含めて盛り上がりを見せていました。甘美なメロディを含んだ小品「Plastic Dreamer」は、途中で聴ける印象的なジョン・アンダーソン的天上人フレーズ"チャンチャンチャンチャン~イャィャイャィオ♪"のパートも聴けて満足(笑)。やはりミッチェルが歌ってもしっくり来る曲であります。終了後、メンバー全員が引っ込んだので、一瞬「アレ?」と感じたものの、どうやらアルバムラストの大曲「Once Around The World」はアンコールという扱いで演るのかと気づいてなるほど納得。15分に及ぶこの曲を演るとなると、流石に一旦一息つかないとキツいものがありますよね。シアトリカルでもあり、鮮やかでもあるこの大曲を見事に演奏し切っただけでも拍手モノです。加速度的な中盤から後半の大団円な盛り上がりには色々な意味で思わずグッと来てしまいました。

さらに2回目のアンコールへと洒落込むのか?と思いきや、これにてライヴは全て終了。名残惜しい気もしましたが(この後「Calling All The Heroes」を演るのじゃないかと思っていただけに)、今回のライヴの目的を考えるとこの後に曲を続けるわけにもいかないでしょうし、ここでスッキリ終わらせるというのも余韻があって良いんじゃないかなあということで納得。終演は20:00、キッチリ2時間で収まった濃密な一夜でした。ライヴの数日前から『Once Around The World』を何度も聴き直して、改めて(良い意味で)スキのない魅力的作品だということを再認識したのですが、ライヴでさらにその魅力を再々認識したわけで、そういう意味でも意義深かったです。是非とも再結成後2作目のアルバムを作って、また来日して欲しいですね。

≪セットリスト≫

【第一部】
1:Ghosts
2:All In Red
3:Underneath Your Pillow
4:The Tall Ships
5:The Wind That Shakes The Barley

[休憩(5分)]

【第2部】
6:Midnight
7:Kiss Like Judas
8:Yellow Christian
9:Rose Marie
10:Black December
11:Old Man and the Angel
12:Plastic Dreamer

【アンコール】
13:Once Around the World

IT BITES:Myspace
IT BITES:公式

2010年3月10日水曜日

月読レコード『しろのはらり~はぴどりサウンドトラックスアレンジアルバム~』(2007)



 「月読レコード」は、コンポーザー/アレンジャーとしても活動されている翡翠氏が設立した音楽レーベル兼サークル。つい最近になってこのサークルを知り、作品に触れたのですが、本作の非常に素晴らしい内容には思わず唸らされてしまいました。本作『しろのはらり』は、翡翠氏が以前手掛けたアフレコサークルのドラマCDの楽曲を、新たにセルフカヴァー/アレンジで収録し直したもの。キーボード/シンセ、プログラミング、竜笛、篳篥、そしてヴォーカルまでもを全て翡翠氏一人で担当し作り上げたというまさに完全ソロ体制で制作された本作ですが、全編に渡ってシンフォニックなプログレッシヴ・ロック・サウンドで貫かれております(翡翠氏自身、プログレからの影響を受けているそうで)。某プログレ専門店による紹介文には、新●月や初期のASTURIAS、そして川井憲次氏の名前が引き合いに出されておりましたが、なるほど形は違えど、この和の情緒と清涼感に溢れたサウンドはこれらバンドやアーティストからの影響を感じさせます。それだけに留まらず、独自色も多分に加えて聴き応えのある仕上がりにしているところもまた大きな魅力的ポイント。年々クオリティが上昇の一途を見せている近年の同人界隈でもプログレ・メタル系の方向性の作品は多いですが、ここまでたおやかで情緒的色合いの強いシンフォニックな方向性のプログレ系作品はなかなかお目にかかれないのではないでしょうか。

 柔和な雰囲気で優しく包み込んでいく大作タイトルトラック「しろのはらり」。7拍子のリズムを伴ってブレイクビーツ的なバッキングとストリングスサウンドが絡み、シリアスかつ荘厳な感触の「鈍色の塔 第四層」。一転して、桜庭統氏を思わせる軽快な変拍子展開で軽やかに疾走する「永遠の烙印」。竜笛、篳篥をふんだんにフィーチャーした和楽インスト「夢之原」。ハープシコードの音色による煌びやかなアレンジに翡翠氏による一人混声多重コーラスを盛り込み、本作でも随一の盛り上がりを見せる「天鏡の終わりへ」。モーグシンセサウンドを中心に、起承転結のハッキリした展開で多彩な表情を生み出していく終盤の堂々たる大曲「聖」など、聴き所は実に盛り沢山。また、翡翠氏がカウンターテナーということもあり、随所でファルセットヴォイスによるコーラスを披露、バラードナンバー「ユメミ」では1曲丸々ファルセットで歌われております。また、男声ハイトーンヴォーカルで歌い上げられる「時限式」は古きよきジャパニーズ・プログレ的イディオムをそこはかとなく感じさせられます。アレンジアルバムでありながら、トータル・コンセプト作品のような趣向を感じる濃密な作品。凄いの一言でありますし、同人音楽の懐の広さを改めて実感させられた次第であります。現在、在庫完売により『しろのはらり』の販売は終了してしまっているのが残念ですが、2008年、2009年にはまた別のアプローチでプログレを感じさせる作品を発表しており(特に、二人の女性ヴォーカルを迎えて08年に制作された『白姫と黒姫』は、『しろのはらり』の和情緒溢れる方向性をさらに拡大したような内容でありました)、また、今年の5月に開催される同人音楽即売会:M3で新作をリリースするとのことなので、今後の活動にもますます目が離せない、個人的に期待のサークルがまたひとつ増えました。

『しろのはらり』試聴ページ
月読レコード:MP3配信ページ(「天鏡の終わりへ」をフル試聴可能)
月読レコード:公式