2010年2月27日土曜日

ACOUSTIC ASTURIAS 2010 2/20 江古田Buddy ライブレポート

 アコースティック・アストゥーリアスのワンマンライヴに行ってきました。生のアコアスを観るのは今回が初めて。昨年の5月には篠笛奏者の方をゲストに迎えてライヴを行っていたそうですが、今回はパーカッション奏者をゲストに迎えてということで、前回とはまた違った趣向のライヴ。また、今回のライヴには伊藤恭子嬢が参加できないということで、急遽、エレクトリック・アストゥーリアスのテイセナ嬢が代役として参加。短期間で楽曲を習得せねばならなかったということでしたが、安定感のある素晴らしいプレイを披露してくれました。エレアスとはまた違った魅力が垣間見えた気がします。

 予定通り19:30にスタート、1曲目は粛々とした雰囲気にて展開される「神の摂理に挑む者たち」。生で一度聴きたいと思っていた楽曲でのスタートは非常に嬉しかったです。終了後、川越氏がビデオカメラのスイッチをうっかり入れ忘れていたという事実が発覚し、場の雰囲気がさらに和やかなムードに包まれる一幕も。そして、16分の21拍子を刻む難曲「かげろう」へ。気品を感じさせつつも、ガッ、ガッと踏み込んでいくような展開がたまりません。ひとたび間をおき「凍てついた記憶」へと繋がります。大山氏曰く"新兵器を投入したいと思います"ということで筒井嬢が一旦Sクラリネットに持ち替え、お次は「Legend」。ピアノに導かれ、大山氏の鋭いカッティングギター、筒井嬢のクラリネットサウンドが中心となって織り成される祝祭的ムード、シャキっとフレッシュな趣を感じさせるアンサンブルが心地良い1曲。終了後、大山氏のアナウンスで本日のスペシャル・ゲスト:パーカッション奏者の中島オバヲ氏がアンサンブルに参加、まずは「黄源の舞」を。パーカッションが加わったことで厚みを増したアンサンブルはやはり非常にパワフルな感触で、躍動的な曲調もあってか、目の覚めるようなロック的ダイナミズムもたっぷりと体感。続いて、「邂逅」。情熱的な味を加えるパーカッション、和風情緒豊かで鋭いアンサンブルが突き刺さってきます。そして「ルミナス・フラワー」で第一部は〆。

しばしの休憩を挟み、第二部へ。リコーダーとヴァイオリンの絡みが心地よい「ユハンヌス」、激しくキレたヴァイオリンによる粘りのあるフレージングが特徴の、アストル・ピアソラ的タンゴ・ナンバー「ベタ・スプレンデス」、一転して爽やかなるキレ味を含みこんだ「Perpetual Motion」へと続いて、再び中島氏を迎えて、今回初披露となる新曲「命を繋ぐ水」へ。つい最近大山氏が手がけた某ゲームの楽曲のアレンジだそうで、民族的テイストもたっぷりの颯爽と駆けるかのような曲。収録されている某ゲームが非常に気になるところであります(恐らくPSPソフトであるクラシック・ダンジョンではないかという話も)。エレアスでもお馴染みの「迷いの森」、そしてオバヲ氏による激しい刻みのパーカッションソロから流れるようにしてアコアスの代表曲である「Marching Grass on the Hill」と続き、ラストは、いつも北海道の帯広からアストゥーリアスのライヴを観にこられているというファンの方のリクエストで、ライヴでは久々の演奏となる「Ryu-Hyo」でしっとりと第二部は終了。

続いてアンコールへ。1度目のアンコールではまず大山氏がソロで登場し、4月に出演が決定しているポルトガルのGouveia Art Rockフェスティバルの大トリにスティーヴ・ハケット・アコースティック・トリオがアナウンスされたということで、彼に捧ぐ意味合いも込めてGENESIS時代のハケット氏の小品「Horizons」のカヴァーを「15年くらい前に友人の結婚式で演奏して以来(大山氏MC)」ぶりに披露。その後、残りのアコアスメンバーも登場し、軽快な1曲「Distance」を演奏。アンコールはもう一度あり、2度目のアンコールは想定外だったとのことで、オバヲ氏を迎えた編成で再び「黄源の舞」を。パーカッション入りでもう一度聴きたいと思っていたので、嬉しいアンコールでありました。前回のエレアスと同様、今回も大満足のライヴでありました。「パーカッションが入ることで、ここまでパワフルになるのか!」という驚きと、アコースティックでありながら(ちょっとエレアス的な?)ロックなテイストも十分に感じさせる、躍動感のあるライヴだったと思います。アコアスとしての今後の活動は、目下3月6日に恵比寿で行われるZIZZ FES 4への30分程度の出演とか。そして3月27日にはエレアスとして、KBBとのジョイント・ライヴということで、来月もまた楽しみであります。
≪SETLIST≫
【第一部】
1:神の摂理に挑む者たち 2:かげろう 3:凍てついた記憶 4:Legend 5:黄源の舞 6:邂逅 7:ルミナス・フラワー
【第二部】
8:ユハンヌス 9:ベタ・スプレンデス 10:Perpetual Motion 11:命を繋ぐ水(新曲) 12:迷いの森 13:パーカッションソロ~Marching Grass on the Hill 14:Ryu-Hyo
Encore 15:Horizons(GENESIS カヴァー) 16:Distance
Encore 17:黄源の舞

ASTURIAS:公式ELECTRIC ASTURIAS:Myspace

2010年2月20日土曜日

PSY・S『Emotional Engine』(1994)

Emotional EngineEmotional Engine
(1994/12/12)
PSY・S

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サウンド&プログラミング担当の松浦雅也氏と、ヴォーカル担当のチャカ嬢のコンビによるユニット サイズの通算9作目のオリジナル・アルバムにして最終作。トータルコンセプト的にもユニットの方向性的にもやりたいことを全てやり尽くしてしまったという89年の『ATLAS』を境にして(この時点で松浦氏はユニットの解散というヴィジョンをおぼろげながら持ちはじめていたのではないかとも思います)、以降ユニットはベスト盤、ライヴ盤、アコースティック・アレンジアルバムのリリースを交えつつ、比較的大人しめな仕上がりのポップスアルバムを発表してゆくのですが、そのまましぼむようにして後味悪く終わってしまうのかと思いきや、鮮やかな幕引きで印象付けたのが本作。チャカ嬢の伸びやかなシャウトで始まる1曲目のパワフルなナンバー「Power Stone」から既に確固たる意気込みが見えてきそうです。作詞陣には松尾由紀夫氏、森雪之丞氏、サエキけんぞう氏(パール兄弟)といったおなじみのメンツに加え、松本隆氏、小川美潮嬢(チャクラ)の名前も。"恋を知ると 誰も皆 超能力使いなの"という松本氏の詞が印象的なラストシングル「be with You」も流石ですが、「もうちょっとだね」においてコロコロと転がるオルガンサウンドに乗っかる小川嬢の自然体な詞もなんとも心地が良い。また、裕木奈江嬢に提供した曲のセルフカヴァーである「月夜のドルフィン」は、チャカ嬢の透き通ったヴォーカルが躍動的なビートと共に弾む極上のデジ・ポップス・ナンバー。"テクノ・ユーミン"という活動初期の頃にユニットが呼ばれていた形容を改めて彷彿させてくれる珠玉の名曲。そして、ラスト前の「Seeds」は、小粋で小粒なポップスナンバーが揃った本作の中で一際印象深い。ゆったりと落ち着いたスロウテンポのバラードかと思いきや、中盤で突然切れ味鋭いヴァイオリンと変拍子による中期KING CRIMSONばりのプログレじみた展開、さらにラップ調のパッセージが飛び出すという、意表を突いた1曲。続くインスト「Lotus」のしんみりとしたトーンでアルバムは終わりを迎えます。"このアルバムは本当に僕の中でのサイズ音楽の完成形に限りなく近いもので、明確な音楽的区切りになってくれたと思います。"という、ユニット解散に際しての松浦氏の本作へのコメントの通り、ユニットのこれまでの道のりを踏まえつつ、キッチリとした形で終わり(と始まり)を示してくれた1枚。後期カタログは賛否が分かれますが、本作に関しては全盛期の作品に負けず劣らずの傑作であると私は思います。ユニット解散後、二人は別々の方向へ、松浦氏はパラッパラッパーやウンジャマ・ラミーなどのプレイステーションソフトの楽曲を手がけ大ヒットを飛ばし、チャカ嬢はソロ・アーティストの道へと進みます。

PSY・S:Wikipedia
松浦雅也:Wikipedia

2010年2月13日土曜日

KINETIC ELEMENT『Powered by Light』(2009)

Powered By Light
Powered By Light
posted with amazlet at 15.12.20
Kinetic Element
CD Baby (2009-09-05)
売り上げランキング: 820,141


 アメリカはリッチモンドの新鋭シンフォニック・バンド キネティック・エレメントの1stアルバム。結成が06年、本作がアルバムデビューの新鋭バンドでありますが若手には非ず、メンバーは全員ミドルエイジのオッサン達で構成されております。特にバンドの中心人物であるキーボーディストのマイク・ヴィサージオは70年代からセッション系ミュージシャンとして活動しているヴェテラン中のヴェテランで、このバンドの結成はまさに満を持して、といったところでしょうか。ジャケットに反して(?)サウンドは非常に70年代志向が強いものになっており、楽曲はもちろん、ギターのトーンもキーボードの鳴りも中期GENESISを髣髴とさせられるところが多いです。ハードで尖がった要素は少なく、フォーキーなパートもフィーチャーしつつ、基本的にゆったりとしたシンフォニックなムードに満ち満ちており、短くて5分、長くて16分の楽曲を展開。そのソフトな性質のためかパンチに欠けるきらいがあるとはいえ、バランスのとれたアンサンブルと徐々に熱を帯びていく展開作りは実にシンフォプログレ好きのツボを押さえており、素朴なヴォーカルがクラシカルで煌びやかなキーボード類のアレンジ(ややリック・ウェイクマン風?)を伴ってじっくりと展開していく「The Ascent」「Now And Forever」あたりのミドルレンジ曲の鮮やかなまとまり具合は身を任せるに十分な魅力。プログレ経験豊かなオッサン達の、プログレ愛ぶりが凄く良く伝わってくる丁寧かつ手堅い良作的1枚。なお、本作はイタリアで行われたProgawardsにおいて、2009年の"Best Debut Record(ベスト・デビュー・アルバム賞)"にノミネートされたとのこと。


KINETIC ELEMENT:ProgArchives
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2010年2月11日木曜日

QANTICE『he Cosmocinesy』(2009)

CosmocinesyCosmocinesy
(2009/02/23)
Qantice

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フランスのシンフォニック・メタルバンド  QANTICEの1stアルバム。メンバーには各種楽器をこなすマルチコンポーザーや、日本人女性(日系人?)のヴァイオリン奏者も含む4人編成。結成は02年で、05年と08年にデモ音源の制作を経て完成したのが本作。音楽性はFAIRYLANDを髣髴とさせられるドラマティックなシンフォニック・メタルあり、ヴォーカリストがアンドレ・マトスに似た声質(ただしそこまで線は細くない)のためか初期のANGRAを思わせるメロディック・パワーメタルあり、フルート/オーボエ奏者やイーリアンパイプ奏者、ヴォイスなどのゲストを迎えてのアコースティック・ナンバーありと多様。加えて民族色やテクニカルな展開を随所に織り込み、フォーク・メタル/プログレ・メタル的な側面も覗かせており、総合的に起伏とヴァラエティに富んだ仕上がりになっています。インストパートのみならず、ヴォーカリストのヴィンセント・ピチェルーのヴォーカルにもそこそこの安定感があるため、この手のバンドにありがちな部分的な貧弱さ/泣き所をチラつかせないところが頼もしい。爽快な疾走感を伴ったクワイアコーラスも実に効果的にキマっております。2曲目「Head Over Worlds」ではこのバンドのメロパワ的、そして3曲目「Pirates」にはこのバンドのプログレメタル的魅力が存分に詰まっているといっても過言ではありません。アイデアをいろいろ詰め込んでいるせいか楽曲がいまひとつ漠然とした印象を抱いてしまうのと、テンションに結構なムラがあるのが惜しいところでありますが、プログレメタラーやシンフォニックメタラーを惹きつける要素は多く、今後への期待感を抱かせてくれるには十分なデビュー作です。特に各種楽器やオーケストレーション、コンポーズまでこなすフロントマンのトニー・ビューフィルズは今後、第二のフィリップ・ジョルダノ(FAIRYLAND)的存在になるか!?といったところ。


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