2010年7月24日土曜日

kamomekamome『Happy Rebirthday To You』(2010)

Happy Rebirthday To You
Happy Rebirthday To You
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KAMOMEKAMOME
SPACE SHOWER MUSIC (2010-06-02)
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 元ヌンチャク~ダッフルズの向達郎氏率いる千葉県柏シティのプログレッシヴ・ハードコアバンド kamomekamomeの2年半ぶりとなる3rdアルバム。ベーシストの上沼靖彦氏が脱退、オリジナル・メンバーでもあった中瀬賢三氏が復帰した本作は、前作『LUGER SEAGULL』同様40分未満のコンパクトなヴォリュームですが、煮詰められたような濃さは依然健在。根っこの部分はハードコアでありながら、Meshuggahばりの変拍子プログレ・メタルの強靭さや、the band apartやregaといったプログレッシヴなジャム系バンドの軽やかさにも通じる楽曲/バンドアンサンブルはますます研ぎ澄まされた姿を提示しており、削ぎ落とせるだけ削ぎ落としたというストイックな凄みと無頼な肉体派的イメージを感じさせます。

 また、中瀬氏のヒリつくような絶叫ヴォーカルが本作の方向性を決定付けるひとつの要素となっており、各所で向氏と激しい絶叫の応酬を繰り返し、聴き手は強烈な一撃を見舞われます。アルバムを通してキレのある勢いは全く殺されることなく、スラッシーなリフとツインヴォーカルのシャウトで容赦なく全てを押し流すかと思いきや、手を差し伸べるような甘いメロディがさらりと覗く「エクスキューズミー」。ザクザク捻り上げられるリフを押し出し小気味良くドライヴしホップする鮮烈な曲調の「ハンズフリーからのお知らせ」「局地的に物語れ」。ツインヴォーカルがここ一番の昂ぶりでブッ刺さる「この時期のヴァンパイア」。キレキレな歯切れの良さで畳み掛けたかと思えば一気にメロウなミドルテンポの曲調にまで引く可変性が面白い「旧感覚置き場」などなど、次から次へと飛び出すフック、緩急自在の変則性、そして疾走感を備えた楽曲が、聴き手をラストまで一気に持っていく、ノンストップガチンコ一本勝負。時に醒めたように語りかけ、時に生々しく畳み掛ける向氏のヴォーカル/感情とコミュニケーションのエアポケットに誘うかのような詞世界もやはり外せない。曲名もさることながら、"文字通り沿いとさ、国道こだま号が交差する手前を" "髪を解いた部屋は 満たせるか?と問いかけた" "濡れ衣?ああ、あれな...今家で乾かしているんだ"といった耳にこびりついて離れないフレーズの数々、ポジティヴではないがネガティヴでもない独特の言葉選びで世界観を紡ぎ出してゆく向氏は"言霊使い"と形容したくなります。押しては引き、引いては返す、強力無比にして凄まじくライヴ向きでもある研ぎ澄まされた1枚。




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kamomekamome 『Happy Rebirthday To You』インタビュー