2007年9月6日木曜日

PSY・S『ATLAS』(1989)

ATLASATLAS
(1998/05/21)
PSY・S

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 テクノ・ポップ・ユニット サイズの5thアルバム。アート志向なジャケットや、アルバムタイトルでもあるATLAS(地図)にまつわる雑感をつらつらと綴ったブックレットを見るに、前作までのPSY・Sが持っていたPOPな雰囲気とは明らかに異なった冒険的なものを感じますが、それは音楽面でも同様。小ぶりな主張を効かせるベース、有機的な息遣いを感じさせるドラム、そして歯切れの良さが前に出るようになったギター、と、アンサンブルは生音の感触を重視するようになり、更にレズリースピーカーでのレコーディングを敢行したことでサウンドはレトロなニュアンスを強め、ぼんやりと柔らかい味わいを滲ませています。これまで以上にグッと大人びた姿を見せながら、これまでのPSY・Sの流れをしっかり汲んだポップスナンバー「Wondering Up And Down~水のマージナル」「ファジィな痛み」は鉄板ですが、それぞれレゲエ/ダブアレンジで異なった表情を見せる「WARS」「WARS~Reprise」、チャカ嬢のそっけない歌い回しとエスニックなバッキングの組み合わせが味な「STAMP」、円を描いて吸い込まれるかのようにゆるやかな空間音響的趣向が気持ち良い「引力の虹」などの新しい方向性を見せる多彩な楽曲や、アコギの躍動感が膨らんでいく「遠い空」、さりげないハモンドのバッキングが彩を添える「See-SawでSEE」といった、フレッシュなバンドサウンドを押し出したナンバーも同等の魅力を持ち合わせています。程良いバランスの上に成り立ち、かつ聴き手にある種の幻想性やセンチメンタリズムを抱かせる楽曲が多く、アルバムのトータル感においては本作はズバ抜けていると言っても過言ではないでしょう。松浦氏曰く、ユニットの目指していた目的はこの時点で果たされたそうで、そのため1stアルバムから続いてきたフェアライトをフル活用しての作品作りは本作が最後になり、ユニットにとっても松浦氏にとっても本作は一つの節目となりました。


PSY・S:Wikipedia
松浦雅也:Wikipedia
フェアライトCMI:Wikipedia