2007年9月21日金曜日

Ian McDonald、根岸貴幸、末村謙之輔、宮下智、伊師正好『バッケンローダー サウンドトラック』(1998)

wachenroderOST.jpg


 '98年にセガより発売されたセガサターン用ソフト、バッケンローダーのサウンドトラック。キャラクターデザインに村田蓮爾、メカニックデザインに竹谷隆之、イメージイラストに安倍吉俊を起用し、ヴィジュアル面やゲーム設定に力を入れていたシュミレーションRPG作品であります(ゲーム本編の内容の評価は高くないようですが…)。また、オープニング、エンディング曲のサウンドコンポーザーに元KING CRIMSON~FOREIGHER~21st Century Schizoid Bandの大御所イアン・マクドナルドを起用(ブックレットには彼のプロフィールと、ちょっとした一問一答が載っております)。彼の「DAY DREAM~白昼夢~」「CATASTROPHE~崩壊~」はどちらもややクセのある静的なメロディが広がりを見せる「いかにも」な楽曲です。また、ボーナス・トラックには「Blind Girl」というゲーム本編には使われなかった曲も収録されています。これもアンビエント。ちなみに、ゲーム本編におけるキャラの名前や場所の名称をまんま洋楽ロック・バンドから取っており、アートオブノイズ(Art Of Noise)、ケミカルブラザーズ(Chemical Brothers)、ファットボーイスリム(Fatboy Slim)、キングクリムゾン(King Crimson)、フランキーザッパ(Frank Zappa)、スモール・フェイシズ(Small Faces)、ブルーオイスター(Blue Oyster Cult)、なんてのはまだ良い方で、コアなモノではElectric Light Orchestraのジェフ・リンがかつて在籍していたIdol Race、イタリアン・プログレ・バンドのLe Orme、イギリスのジャズ・ロック・バンド Titas Groanなんてのもネタにしており、制作者の相当なヲタクぶりが出ています。イアン氏が本作に起用された理由もむべなるかなといったところですね。イアン氏以外の作曲者(根岸貴幸氏、末村謙之輔氏、宮下智氏、伊師正好氏)による楽曲も制作者の意向が大いに反映されており、後半に進むに従ってプログレ、ジャズ・ロック、チェンバー・ロックな傾向が強くなり、明らかにKING CRIMONやEL&Pを意識したようなものもチラホラ出てきます。こっちの方が様式的なプログレ楽曲に仕上がっているというのが、なんともはやといったところ。とにもかくにも、制作者が筋金入りのプログレ好きであるということはよーくわかりました。ところで、サントラの帯にはデカデカと「イアン・マクドナルド(元キングクリムゾン)参加アルバム!」と書かれているのですが、正直なところこのサントラはどれだけのファンの目に届いたのでしょうか?流通した枚数も少なそうなだけに、ちょっと気になります(笑)








※本編未使用曲

vgmdb - Wachenroder Original Soundtrack
「バッケンローダー」全台詞集
Ian McDonald:Wikipedia

2007年9月18日火曜日

MOTOCOMPO『Desktop Romancer』(1999)

DESKTOP ROMANCERDESKTOP ROMANCER
(2001/09/19)
MOTOCOMPO

商品詳細を見る


 HONDAの原付をユニット名に拝借した、chihoとDr.USUI(薄井ノブヤ)によるテクノ・ポップ・ユニット、モトコンポの1stミニアルバム。インディーズ時代に発表した2本のカセット音源をリミックスして廉価盤でリリースしたのが本作、7曲入り。ミックスはYMOや戸川純、SOFT BALLET等を手がけたエンジニアであり、スクーデリアエレクトロのメンバーでもあった寺田康彦氏によるもの。ノーテンキでチープなピコピコサウンドがユニークにヌーっと抜けるテクノポップ/ニューウェーヴ・サウンドは、テクノポップ御三家バンドのひとつPLASTICSの素っ頓狂&ナンセンスなスタイルを、キュートな渋谷系エレポップサウンドに取り込んで現代風にモデルチェンジしたような感じ。特に「24Hours Online」「Coming Age」ではそれが顕著に感じられます。「SKI」も可愛らしくてGOOD。80'sと90'sのセンスを同時に感じるようなサウンドがなかなか面白いです。今年に入って6年ぶりとなるアルバムを発表したそうですが、試聴した限りではプラスチックスの影響は薄れて、より渋谷系エレポップの比重を強めた印象かなと。


MOTOCOMPO:Myspace
MOTOCOMPO:公式
MOTOCOMPO:MUSICSHELF

2007年9月9日日曜日

今井寿&藤井麻輝、異端者二人のインダストリアル・ユニット ― SCHAFT『SWITCHBLADE』(1994)

SWITCHBLADESWITCHBLADE
(1994/09/21)
SCHAFT

商品詳細を見る



 BUCK-TICKの今井寿、SOFT BALLETの藤井麻輝、一筋縄ではいかない異端者二人がタッグを組んだインダストリアル・ユニット、シャフトが'94年に発表した、現時点での唯一のオリジナルアルバム。PIGのレイモンド・ワッツがヴォーカル/プログラミング/ノイズで、MAD CAPSULE MARKETSのCRA¥(UEDA TAKESHI)とMOTOKATSUが一部リズム隊で参加しております。レイモンドはアルバム制作にも関わっており、実質3人目のメンバーのような存在だった模様。その他、Meat Beat Manifestoをはじめとしたインダストリアル界隈の人脈が多数名を連ねています。澱んだアンビエントから強烈に叩きつけるインダストリアル、捻くれたボディビート、異空間的ノイズ、無機的なヒップホップまで楽曲は多種多様に及んだ全13曲78分。非常にクセがあるアルバム構成なので何度聴いても把握に困るシロモノですが、「異端者同士が悪巧みすると輪をかけて一筋縄ではいかないものが出来上がる」ということの好例(?)でありましょう。


 藤井氏作曲によるアンビエントナンバー「Olive」は奥方である濱田マリ嬢に捧げられた曲だそうですが、美しい情景が目に浮かぶと言うよりは得体の知れない波の中をたゆたっているというような印象で、この人にとって美という観念はどう映っているのだろうかと、何だかとても氏の脳内ヴィジョンが気になってきます。「The Hero Inside」 「Arbor Vitate」 「Cold Light」といった咆哮するインダストリアル系ナンバーも十分カッコ良いですが、それ以上に衝撃的だったのはAll About Eveのジュリアンヌ・リーガンをゲスト・ヴォーカルに迎えての、マリアンヌ・フェイスフル「Broken English」のカヴァー。演説のサンプリング、高揚を煽るバッキングのストリングスや妖しく淡々とうねるマシン・ビートの効いたメタリックなアレンジが極右的なカッコ良さを持つ孤高のナンバーで、とにかく痺れました。この曲が聴けただけでも手を出した甲斐はあったというもの。異物感と攻撃性と悪意の混濁で聴き手を翻弄してくるので万人に薦められるモノとは言えませんが、御両人の強烈な個性を垣間見たい人は是非一聴をば。ちなみに、このユニットが契機となって今井氏とレイモンドとの関係はこの後も続くこととなり、'01年にSCHWEINの結成に至ることとなります(藤井氏はこのプロジェクトには参加していませんが、櫻井敦司氏やKMFDMのサシャ・コニエツコが参加しております)。


「Broken English」は、OVA版HELLSINGの海外用トレーラー映像に使用(後にOVA第五巻の挿入歌にも)されました。これ以上ない見事な選曲、そして見事なハマりっぷりです。




SCHAFT:Wikipedia
藤井麻輝:Wikipedia
今井寿:Wikipedia

2007年9月8日土曜日

米米CLUB『www.komedia.jp』(2007)

komedia.jp(初回生産限定盤)(DVD付)komedia.jp(初回生産限定盤)(DVD付)
(2007/09/05)
米米CLUB

商品詳細を見る


 めでたく再結成した米米CLUB。実に10年ぶりとなるオリジナルアルバムでございます。いやはや、どれだけヴェテランになってもやっぱりお馬鹿なノリはやめられないようで(笑)、メンバーの方々は相変わらず良い感じに弾けていて何よりでございます。あまりにそっけないジャケットですが、内容はシングル曲5曲含んだ全16曲全77分という限界ギリギリのヴォリューム。しっとりと落ち着いたアレンジでさらに味を見せるようになったかつての名曲のリメイク「浪漫飛行'07」を皮切りに、「君を離さない」「ひとりじゃないだろう」といった往年を思わせる甘口の正統派ラブバラードや、ホーンセクションや石井氏の歌声の伸びやかなハリが映える「We Are Music!」「WELL COME 2 ~Album Mix~」「MATA(C)TANA」などのイキのいい歌謡ファンクロックの健在ぶりも何よりですが、やはり米米の魅力と言えばおふざけたっぷりのSORRYミュージック(通称うんこ曲)テイスト。何だかわからんけどとにかくイーヨイーヨなノリでゆる~く愉快に押し通す「E-ヨ」、ふざけた歌い回しやカマっぽいコーラス、「くされ縁 くされ縁 くっさ~」のフレーズでシメる石井&ジェームス小野田のデュエット曲「くされ縁」、ドサクサまぎれにま○こ(締まる)のことを歌ってる「この宇宙で」、ロシア人のルームメイトというこれまたわけのわからんテーマを、巻き舌がかった歌唱と若干007のテーマを意識してるようなフシが伺える歯切れの良い演奏でとびっきりカッコ良く聴かせる「ロシアン・ルームメイト」、ひたすら『スゴクおいしい』を連呼して、日清とのタイアップを狙ってるのかそれともケンカ売ってるのかどっちつかずなラーメン・ファンク「スゴクおいしい」、と、中盤からはスイッチ入って本領発揮。ってか、結構SORRYテイスト多めですね。米米らしいクール&ユーモアなエンターテインメント精神、ごちそうさまでした。


米米CLUB:Wikipedia
米米CLUB:公式

筋肉少女帯『新人』(2007)

新人
新人
posted with amazlet at 15.10.18
筋肉少女帯
トイズファクトリー (2007-09-05)
売り上げランキング: 23,604



 1999年の解散から実に8年の歳月を経て再結成を果たした筋肉少女帯の、1997年発表の『最後の聖戦』以来10年ぶりとなる、通産13作目のオリジナルアルバム。浅田弘幸氏によるジャケのゴスロリ少女はオーケンの小説「ロッキン・ホース・バレリーナ」に登場する七曲町子嬢。太田明氏(ds)は事情により今回参加が見送られたため、UNDERGROUND SEARCHLIE(以下UGS)や、橘高文彦&EUPHORIAにも参加されていたセッションドラマーの湊雅史氏、THE ALFEE~ExhiVisionの長谷川浩二氏、THE MOONBEAMの矢野一成氏の3名がサポートメンバーとして叩いております。初期メンバーの三柴理氏(pf)もサポートメンバー扱いですが、正式メンバーの一人と言って良いほどの活躍ぶりを見せており、何だか嬉しい限り。その他、オーケンのアンプラグドセッションより朝倉真司氏(perc)、長井千恵嬢(cho)、EUPHORIAより泰野猛行氏(kbd)が参加。

 メンバーもオーケンも随分丸くなった印象はありますが、やっぱりこの人たちは良い意味でどこまでもB級路線。オーケンが数々の活動(ソロ~UGS~特撮)を経たことで個性の幅もグッと広がったなと思います。三柴氏のピアノ独奏による「Period」から、本作の重要キーワード「仲直り」をテーマにしたストレートなナンバー「仲直りのテーマ」(作詞・作曲はもちろんオーケン)でまず一発景気よくかましてくれます。3曲のリメイクのうち、「イワンのばか'07」はオリジナルの身を削るような荒々しさが減退し、若干明るめになったかなと言う印象。実験プロジェクト UGSが生み出した屈指の名曲のリメイク「Guru 最終形」は、オリジナルの終盤で聴けた壮絶な語りの部分はなくなっていたのが残念ですが、ほろほろと崩れるように繊細で切なげなメロディラインは依然として白眉。雪崩れ込みプログレッシヴ・パンク「モーレツア太郎'07」はアルバム『仏陀L』と同様、イントロダクションの「黎明」としっかりセットになっており、古くからのファンには嬉しい趣向。絞り出すようなテンションの高さも頑張って再現しており、今回のリメイク曲では一番の好印象でした。詞の内容は今聴いてもトンがってるなあと再認識。





 しかしやはりこれらはあくまでファンサービス、語るべきはやっぱり久々となるオリジナル曲でしょう。ジョン・ウィンダムの破滅SF小説『トリフィド時代―食人植物の恐怖』をモチーフにしたセカイ系の詞が何ともオーケンらしい「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」は、かつての「小さな恋のメロディ」「機械」「僕の歌を全て君にやる」といった後期筋少の流れを受け継ぐ劇的なスピードメタルチューン。筋少史上最速とも言える気合の入ったハイスピードな演奏を繰り広げる「ヘドバン発電所」と共に、筋少の新しいキラーチューンとなるにふさわしいナンバーではないでしょうか。また、「生きてあげようかな」を思わせる、本城氏作曲の「その後 or 続き」は、再編を果たした今だからこそより味わいを感じるナンバーだなあと。威勢のいいコーラスが飛び交う特撮テイストに溢れた「未使用引換券」。サビが一際キャッチーに決まる「愛を撃ち殺せ!」。チープに抜けるオルガンサウンドにベンチャーズ風のフレーズが乗る、「俺の罪」を思い起こさせる内田氏らしいユルいナンバー「抜け忍」。KISSの「Love Gun」風のリフに淡いピアノのアクセントが交錯する「交渉人とロザリア」など、捨て曲は一切なし。発売前の不安が全て杞憂に終わるほどの大健闘ぶりを見せてくれました。最後はバンド再結成を自虐ネタにした「新人バンドのテーマ」で和気藹々とした雰囲気で幕。目の付け所とオチをしっかりつけるあたりは流石オーケンだなと(笑)。再結成一発目としてはこれ以上ないほどの充実した作品に仕上がっています。




2007年9月7日金曜日

PSY・S『SIGNAL』(1990)

SIGNAL
SIGNAL
posted with amazlet at 15.12.30
PSY・S
ソニー・ミュージックレコーズ (1990-07-01)
売り上げランキング: 33,927


松浦雅也氏とCHAKA嬢によるポップス・ユニット サイズの6thアルバム。再びわかりやすいポップ路線に戻りましたが、以前までのアルバムとどこか毛色が異なっているなという印象があります、見えない線引きがされているというか。良くも悪くもまとまりが出てきたということなんでしょうが、それでもプロフェッショナルな仕事ぶりであることには変わりなく、ブレのない楽曲構築のセンスは依然としてしっかり発揮されています。ヴァラエティに富んだ前作とは対照的に、本作は「コンパクトなエネルギーの躍動感」に重点を置いた楽曲が散りばめられた仕上がり。サウンドは打ち込み色がさらに薄れバンド体制でのレコーディングになっており、新居昭乃(Chorus)、保刈久明(Gr)、小泉信彦(Key)、いまみちともたか(Gr / BARBEE BOYS)といった【LIVE PSY・S】の面々を起用。松浦氏もこれまで多用していたフェアライトに変わってモーグ等のアナログシンセ類にシフト、ストリングス系の音色を中心に押し出すようになりました。軽快なアップテンポナンバーが多い本作ですが、中でも「GIMMICK」は一度聴いたら忘れられないほど強烈な異彩を放ったまさにキラーチューンと言えましょう。松浦氏の奥底に秘められたプログレ志向が垣間見えるような楽曲で、ハモンド/モーグが勢いよく交錯するバッキングに加え、ストリングスサウンドが、そしてギターソロが隙間を埋め尽くすように躍るハイスピードなプログレ・ハード・チューン。ドワーっと一気に押し流すかのようなこの派手なサウンドメイキングは今聴いても十分通用すると思います。




PSY・S:Wikipedia
松浦雅也:Wikipedia

2007年9月6日木曜日

PSY・S『ATLAS』(1989)

ATLASATLAS
(1998/05/21)
PSY・S

商品詳細を見る


 テクノ・ポップ・ユニット サイズの5thアルバム。アート志向なジャケットや、アルバムタイトルでもあるATLAS(地図)にまつわる雑感をつらつらと綴ったブックレットを見るに、前作までのPSY・Sが持っていたPOPな雰囲気とは明らかに異なった冒険的なものを感じますが、それは音楽面でも同様。小ぶりな主張を効かせるベース、有機的な息遣いを感じさせるドラム、そして歯切れの良さが前に出るようになったギター、と、アンサンブルは生音の感触を重視するようになり、更にレズリースピーカーでのレコーディングを敢行したことでサウンドはレトロなニュアンスを強め、ぼんやりと柔らかい味わいを滲ませています。これまで以上にグッと大人びた姿を見せながら、これまでのPSY・Sの流れをしっかり汲んだポップスナンバー「Wondering Up And Down~水のマージナル」「ファジィな痛み」は鉄板ですが、それぞれレゲエ/ダブアレンジで異なった表情を見せる「WARS」「WARS~Reprise」、チャカ嬢のそっけない歌い回しとエスニックなバッキングの組み合わせが味な「STAMP」、円を描いて吸い込まれるかのようにゆるやかな空間音響的趣向が気持ち良い「引力の虹」などの新しい方向性を見せる多彩な楽曲や、アコギの躍動感が膨らんでいく「遠い空」、さりげないハモンドのバッキングが彩を添える「See-SawでSEE」といった、フレッシュなバンドサウンドを押し出したナンバーも同等の魅力を持ち合わせています。程良いバランスの上に成り立ち、かつ聴き手にある種の幻想性やセンチメンタリズムを抱かせる楽曲が多く、アルバムのトータル感においては本作はズバ抜けていると言っても過言ではないでしょう。松浦氏曰く、ユニットの目指していた目的はこの時点で果たされたそうで、そのため1stアルバムから続いてきたフェアライトをフル活用しての作品作りは本作が最後になり、ユニットにとっても松浦氏にとっても本作は一つの節目となりました。


PSY・S:Wikipedia
松浦雅也:Wikipedia
フェアライトCMI:Wikipedia

2007年9月5日水曜日

PSY・S『Non-Fiction』(1988)

NON-FICTION(紙ジャケット仕様)NON-FICTION(紙ジャケット仕様)
(2007/10/24)
PSY・S

商品詳細を見る


 サウンド&プログラミング担当の松浦雅也と、ヴォーカル担当のチャカによるユニット サイズの4thアルバム。当時1200万ほどした超高価なシンセであるフェアライトCMIを関西圏でいち早く導入し、アナログからデジタルへと移行していく過渡期の最中、最新のテクノロジーを駆使してのポップス作りに果敢に挑戦していったのが松浦氏。サンプリングと打ち込み主体ながらそれを感じさせない緻密かつ重厚な、そしてバンドサウンドに近い楽曲作りを行っていました。そこにチャカ嬢のパワフル&ソウルフルな歌声が加わって、とことんまでにエネルギッシュなポスト・テクノポップスの出来上がり。あまりに眩しすぎて、超高品質のポップソングを作ることにかけてはこの人たちの右に出るユニットは当時そうそういなかったのでは?と思いたくもなります。同年のみんなのうたに採用された「3-D天国」(オリジナルアルバム/ベスト盤未収録曲)と若干モチーフが似ている「(Shooting Down)The Fiction」が個人的には興味深かったりしますが、やはり本作の注目はシティハンター2のOPに採用され、ヒットを記録した「ANGEL NIGHT~天使のいる場所~」じゃないでしょうか。期待を膨らませるイントロから印象的なストリングスのメロディが颯爽と流れ込む、単体でも十分カッコ良いアップテンポの疾走曲ですが、アルバムでは盛り上がりを押さえた序盤の楽曲構成、バラードナンバー「Earth~木の上の方舟」のからの繋がりもあってよりインパクトのある壮大な流れとなっています、お膳立てがキッチリ整ったところにキラーチューンが決まると気持ちが良いですよね。そしてもう一つの代表曲である「Roses And Non-Fiction~薔薇とノンフィクション」、隅々まで浸透した瑞々しいフレーズの数々が堪らない佳曲です。とにもかくにも一切スキなしの構成で仕上げられた文句なしのポップスアルバム。ちょっとやそっとじゃ色褪せるような作品ではないのであります。




PSY・S:Wikipedia
松浦雅也:Wikipedia
フェアライトCMI:Wikipedia

2007年9月4日火曜日

おかげ様ブラザーズ『おかげ様ブラザーズ』(1988)

おかげ様ブラザーズおかげ様ブラザーズ
(1988/08/21)
おかげ様ブラザーズ

商品詳細を見る


 関西のコミックバンド おかげ様ブラザーズの2ndアルバム。楽曲「すもうとりゃ裸で風邪ひかん」がNHKで放送禁止を喰らったり、デビューアルバム『ばつぐん』がお笑いコンビ「X-GUN」のコンビ名の由来となったり、吉本新喜劇をネタに1曲作ったり、という数々のエピソードがなんとも関西のバンドらしい。楽曲タイトルや歌詞の内容は近親相姦だとか金縛りだとか大阪崩壊だとかセックステレフォンだとかいったアレな方向にバラエティに富んだものばかりですが、各人の技量は確かなモノがあり、ホーンセクションを交えた演奏はタイトかつスタイリッシュでたまらなくカッコ良いのです。やはりコミックバンドは一朝一夕にして務まるものではないのです。米米CLUBのカールスモーキー石井氏は彼らをリスペクトしていたそうで、ユーモラスな歌謡ファンク「原色人種」「禁断の妖精」を聴いていると、なるほど納得出来るものがあります。布団の上にババアが座り、お菊人形の髪の毛が伸びるなど、真夜中の金縛りにおける怪奇現象をひたすら羅列し続ける「カナシバリ」、スターウォーズ風の壮大なイントロからクールなファンク・ロックに突入という導入で痛快に予想を裏切ってくれる「大阪崩壊」は抱腹絶倒。また、DEEP PURPLE、EUROPEのパロディみたいな「HARD ROCK DE Let's go!」「NEW RELIGION」、さだまさし「北の国から」のパロディみたいな「ホ・ン・ト・ウ・ノ・キ・モ・チ」など、頭から尻まで面白おかしくエンターテインメントな歌謡ロックしてます。バンドは劇団☆新感線とのコラボレーションも行っていたようですが、96年に活動休止を宣言(【追記】その後、2007年に活動再開します)。メンバーは実家に帰ったりセッション・ミュージシャンになったりと、各々別々の道を歩んでいくことになります。ちなみに、おかげ様ブラザーズのギタリストであるスマイリー司こと岡崎司氏と、ドラマーであるブラッキー岡部こと岡部亘氏は劇団☆新感線の音楽担当/楽器隊として現在も活躍中。


おかげ様ブラザーズ - 公式サイト
おかげ様ブラザーズ - Wikipedia
岡部亘 - Wikipedia