2007年8月26日日曜日

BP.『ゴールデンBP.』(1997)

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 COALTAR OF THE DEEPERSの元メンバーであり、アルバム『COME OVER TO THE DEEPEND』『No Thank You』に参加していたイチマキ嬢が、ディーパーズ加入前に在籍していた4人組バンド BP.。本作はバンドがZK RECORDSから97年に発表したミニアルバム。イチマキ嬢のフワフワぼんやりと浮かんだキュートなヴォーカルと、ヘヴィ・ロック&シューゲイザーの轟音ミクスチャーサウンドが交錯する音楽性は、強烈な第一印象。硬軟併せ持った独特の雰囲気にディーパーズと共通するものを感じます。ぶっきらぼうなまでにささくれ立った予測不可能のストップ&ゴーな展開は、混沌としていながらもスウィートでポップであり、どこか人懐っこさを感じさせるのが何とも魅力的です。中でも、爽やかな轟音を疾走感もろとも叩きつける「ES」や、バンドの黒一点イマニシの激烈なシャウトがイチマキ嬢の浮遊ヴォーカルと絡み合う、感傷と激情、静と動ない交ぜのハードコアチューン「Diving Death Drive」は抜群の歯ごたえ。これからというところでバンドが「冬眠」してしまったのは残念ですが、十分インパクトを残しています。音質の悪さや演奏の荒さも、また味。



【後記】
 2011年12月になんとバンドは再結成ライヴを行っていたようで、翌年には7インチ・アナログ『GIANT.ep』、ミニ『ゴールデンBP』、そして90年代に録音されたデモ音源を1枚にまとめたコンプリート・アルバムもリリースされています。そして2013年1月には待望の新作EP『THE NEW BP.』がリリース。見事に第二の出発を果たしたバンドの今後の活動にますます期待がかかります。

GOLDEN BP. PLATINUM COMPLETE 93-97GOLDEN BP. PLATINUM COMPLETE 93-97
(2012/01/25)
BP.

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THE NEW BP.THE NEW BP.
(2013/01/30)
BP.

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2007年8月25日土曜日

凛として時雨『Inspiration Is Dead』(2007)

Inspiration is DEADInspiration is DEAD
(2007/08/22)
凛として時雨

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狂乱カミソリ3ピース・ロック・バンド 凛として時雨の2ndアルバム。サウンドは荒々しさをそのままにしつつも、一段グッと力強く踏み込んだようになりましたが、基本的路線は1stアルバム、EPと同じ。ギャリギャリとした金属的感触を兼ね備え、バツグンの鋭さを誇る変則的オルタナサウンドと、一触即発上等な絶叫ツイン・ヴォーカルの組み合わせによる瞬間的爆発力は依然破滅的かつ刹那的。さすがにインパクトは薄れたとはいったものの、聴き手の鼓膜を執拗にすり減らしにかかる序盤4曲「Nakano Kill You」「Cool J」「Disco Flight」「Knife Vacation」のハイテンションな流れは刺激たっぷりで痺れざるを得ませんでした。ですが、それ以降はミドルまたはスロウテンポでじっくりと展開される楽曲が続き、せっかくの上がりきったボルテージが徐々に削がれていってしまったのが残念。ここで「もう一山」となる楽曲があれば良かったんですが、来ないまま終わってしまったので今ひとつ煮え切らなかったです。楽曲は練り込みの跡が伺える上、黄昏たイメージを聴き手に抱かせる仕上がりになってて決して悪いものではないですし、またバンドとしてもそろそろ刹那的な面以外の要素も押し出そうという狙いがあって後半を落ち着いた構成にしたんでしょうが、やっぱりこのバンドはあえて崖っぷちに立つ切迫したスタイルを曝け出す楽曲が一番輝いていると思います。とにかく生き急いで暴れ狂ってズタボロになって砕け散ってこそナンボじゃないかなと。

2007年8月18日土曜日

Doctor Nerve『SKIN』(1995)

SkinSkin
(1998/07/23)
Doctor Nerve

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 フレッド・フリス率いるギターカルテットにも参加歴のあるギタリスト/コンポーザーのニック・ディドコフスキ率いる、アメリカはニューヨーク出身のアヴァンギャルド/プログレッシヴ・ロック・バンド ドクター・ナーヴの5thアルバム。ディドコフスキによる楽曲には「HMSL」なる独自の音楽記述言語を駆使しての構築的でポリリズミックなモノもありますが、メインとなっているのはメタリックにザクザクと食い込む轟音ギターをバッキングに、鼓膜を鋭く貫通するかのような絶叫ブラスセクションを上モノにした、神経を逆撫でし徹底的にアジる超攻撃的ジャズ・ロックです。バンド名は「神経医」ですが、その正体は聴き手の神経を執拗にいじくりまわすマッドサイエンティスト。中指を突き立てたファッキンなぶっ放しっぷりはとてもハードコアに近いものを感じます。ギターの殺傷性とブラスの痙攣性が混線し凌ぎを削る「Preaching To The Converted」「Dead Silence」など、強烈な刺激に次ぐ刺激に満ちた1枚。


DOCTOR NERVE - CUNEIFORM RECORDS

2007年8月17日金曜日

UNIVERS ZERO『Ceux Du Dehors』(1981)

Ceux De DehorsCeux De Dehors
(1998/08/17)
Univers Zero

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 フランスのART ZOYDと共にチェンバー・ロックを代表するバンドとして筆頭に挙げられる、ベルギーのユニヴェル・ゼロの3rdアルバム。邦題「祝祭の時」。妖艶優美なる室内楽と力強く躍動的なロックの暗黒の異種姦が生み出すもの、それがチェンバー・ロックであり、中でも重量感と共にただならぬ雰囲気を醸しだす彼らのサウンドは、スタイリッシュにしてストイック。邪悪なイマジネーションをこの上なく掻き立てられ、お先真っ暗な洞窟の奥底で触手達によるエロティックな狂宴というような爛れたイメージも目に見えて浮かんできそうです。室内楽寄りかつダーク・ゴシックな大曲志向であった前作『Heresie』とは打って変わって、本作は大曲・小曲がバランスよく配された構成で、ロック度も増しております。粘液をしたたらせながらのたうつかのような変拍子のめまぐるしい展開と、腹の中で蠢くエイリアンが今にも腹を喰い破って出てきそうな緊張感を漲らせた冷淡な展開が表裏一体となった「Dense(濃厚)」。ヘヴィな唸りを上げるベースとオーボエ、鋭くも張りと艶のあるヴァイオリン、加速度と重量感を増してゆくアンサンブルが聴き手にゆるやかに興奮を促しつつも一抹の不安を抱かせる、美しくも危険な「Combat(戦闘)」。この2つの長曲は名状し難いほどに不気味なたたずまいで、本作のハイライトといえる楽曲の役割を担っています。もちろんその他の楽曲も容赦なく黒い瘴気を撒き散らしており、木管楽器が生み出すゴシックなムードがズルズルと楽曲を引き摺る「La Corne du Bois des Pendus(コルヌ・ドゥ・ボア・デ・ペンドゥス村)」。躁状態なアンサンブルがひっちゃかめっちゃかにかき回し、短いながらも強いインパクトを与える「Bonjour Chez Vous(こんにちは、諸君)」。H.P.ラヴクラフトの同名作品をテーマにし、最初は生理的嫌悪感を催すだけだった軋む様なヴィオラの音が、次第に巨大な戦慄へと変貌を遂げて文字通り聴き手に襲い掛かってくる、冒涜的にして狂気の極み「La Musique D'enrich Zann(エーリッヒ・ツァンの音楽)」……などの楽曲が、徹底的に得体の知れない闇の恐怖を味わわせてくれます。気を抜けば即喰われかねない、禍々しさたっぷりの作品。異形を孕む音楽。


UNIVERS ZERO:公式

2007年8月7日火曜日

New Trolls『Concerto Grosso The Seven Seasons』(2007)

The Seven Seasons (Concerto Grosso 3)The Seven Seasons (Concerto Grosso 3)
(2007/07/03)
New Trolls

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 半身不随の重傷を負う大事故から復帰したオリジナルメンバーのニコ・ディ・パーロを加え、今年4月に新作のワールド・プレミアも兼ねての二度目の来日公演を行った、ヴィットリオ・デ・スカルツィ率いるイタリアのシンフォニック・ロック・バンド ニュー・トロルスの通産18作目となるアルバム。76年発表の『Concerto Grosso N2』から実に30年ぶりとなる、「Concerto Grosso」シリーズの新作です。バンドの代表作とも言えるアルバムの続編ということで期待も不安もありましたが、率直に言って本作は素直に「良い」と呼べる作品に仕上がっていると思います。サウンド・プロダクションはやはり現代的であり、各曲とも小奇麗にまとまっているので、70年代の頃とは異なる毛色を感じざるを得ませんし(当然と言えば当然ですが)、シリーズ前二作でのオーケストラ・アレンジを手がけた映画音楽の巨匠 ルイス・エンリケス・バカロフも本作には参加しておりません。それでも、クラシック、プログレッシヴ・ロック、ハード・ロックが自然に調和した不変不朽のニュー・トロルス・サウンドは、しっかりと息づいています。哀愁と優雅さを背負い込んだストリングスと、ソフトからハードまで、ニュアンスに富んだバンドアンサンブルのストレートかつダイナミックな絡み合いには、滲み出てくる渋さと、まだまだ若手には負けぬという意欲的な若々しさが同居しております。実に感慨深い。とりわけ、バラード・ナンバーのドラマ性の演出においては尋常ならざるものがあり、終盤の「The Ray Of White Light」「To Love The Land」のこれでもかと言うほどに胸を打つ展開の流れは、個人的にハイライトに推したいくらい気に入りました。アコースティック・パートの比重も多く、ゆったりと味わいたい熟成品のようなアルバムに仕上がっています。


New Trolls:Wikipedia