2007年3月27日火曜日

DOMINICI『O3-A Trilogy, Pt. II』(2007)

03 a Trilogy 203 a Trilogy 2
(2007/03/13)
Dominici

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 腋毛ジャケットがまぶしいDREAM THEATERの1989年のデビュー・アルバム『When Dream And Day Unite』でヴォーカリストを勤めていたチャーリー・ドミニシ。ジェイムス・ラブリエの登場によりバンドを去ってから長い年月が経ち、「あの人は今」状態だったドミニシのとっつぁん(といっても近年のDREAM THEATERのライヴに飛び入りゲストで参加してましたけどね)。そんな彼がフロントマンを務めるバンド、その名も「ドミニシ」が2ndアルバムを発表。前作『O3-A Trilogy,Pt.I』はギター&ヴォーカルという構成の実にシンプルなアコースティック・アルバムだったそうですが、本作は打って変わってコッテコテのプログレ・メタルになっております。ハードなサウンドが恋しくなったのか、前作から続いていると思われるコンセプトであえてそうしたのかはわかりませんが、ザックリしつつもテクニカルなリフや、キーボードによる劇的なフレーズをふんだんに取り入れたり、他にも群集や演説のSE、オーケストレーションを入れたりといったいかにもな仕上がり。

 ドミニシのヴォーカルはやや太めになったとはいうものの、あの裏っ返りハイトーンの面影はしっかり残っています。これを「懐かしい」と思うか「進歩ねえな」と思うかは聴き手の初期DREAM THEATERに対する思い入れ次第でしょうか。典型的プログレ・メタルであり、一本調子に陥りがちなところはありますが、フックや楽曲展開の構築はメンバー全員ある程度ツボを心得ているようで、のっけから8分という長めの楽曲を投入してもなんのその、じわじわと聴かせてくれます。バンドのサウンドに対してドミニシのヴォーカルが今ひとつ主張が弱いなと感じるところもあるとはいえ、全体的には好パフォーマンス&好感触。まだヤボったさや付け入るスキがあった『When Dream And Day Unite』の頃のDREAM THEATERのスタイルをビルドアップさせたかのような仕上がりなので、初期DREAM THEATERに入れ込んだ方や、今のDREAM THEATERにはついていけねえぜってな方には非常に楽しめるアルバムなのではないかと思います。



DOMINICI:公式

2007年3月24日土曜日

三柴理エレクトリック・トリオ『TAG』(2003)

TAGTAG
(2004/11/07)
三柴理 Electric Trio

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 筋肉少女帯や特撮などで活動する三柴理(kbd )、セッション・プレイヤーの白船睦洋(b)、元リンドバーグの小柳昌法(ds)の三者によるインストゥルメンタル・バンド「三柴理エレクトリック・トリオ」の1stアルバム。トリオならではのハードな応酬を展開するフュージョンバトル"The Cruel Sea"や、プログレッシヴ・ロックとニューエイジの狭間に位置するような大仰なインストゥルメンタル"日出処ノ楽士"などのオリジナル楽曲に加え、よりスペーシーなアレンジが施されたEL&Pのカヴァー"Nutrocker"(正確にはキム・フォウリーのカヴァー、原曲はもちろんチャイコフスキー)、ゲストに筋肉少女帯の本城聡章氏を迎えてリメイクされた、初期筋少のプログレ曲"孤島の鬼"、三柴理氏と塩野道玄氏のユニット ザ・蟹の楽曲を重量級チェンバー・ロックでリ・アレンジした"ヤンガリー[Instrumental Version]"(ちなみに、特撮もカヴァーしていました)といった、アレやコレのカヴァー/アレンジを収録したアルバムに仕上がっています。個人的に興味深かったのは、シンセサイザーによる神秘的な小品"森の妖精"。某TV番組のアハ体験なコーナーで使用されているこの曲がまさか三柴氏の作品だったとは知りませんでした。TVで聴いてからずっと気になっていただけに、個人的にこれはちょっとした収穫でしたね。

三柴理/ピアノのなせる業と真髄
三柴理 - Wikipedia
白船睦洋 - Wikipedia
小柳"cherry"昌法 - Wikipedia

2007年3月13日火曜日

POLYSICS『Karate House』(2007)

KARATE HOUSEKARATE HOUSE
(2007/02/28)
POLYSICS

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 前作『Now is the time!』を聴いてなかったもんで、個人的には『National P!』以来のフルアルバムになるわけですが、ポップになった上にえらいヴァリエーション増えたなあ、と。でも、これだけヴァラエティ豊かになっても要点はしっかり押さえてあるのは流石。エキセントリックな部分はどこかに残るんすね(笑)。「Electric Surfin' Go Go」「Catch On Everywhere」「You-You-You」「Shizuka is Machine Doctor」は、シングルカット&タイアップ曲とあってどれもほとばしるドライヴチューン&ファンキーなポップチューン。魅力的な仕上がりですが、それ以上にやはりアルバム収録曲のグリグリした感触がいいなあと。「ハードロックサンダー」は、ヴォコーダーヴォーカルとペコピコした装飾にハード・ロックなリフが組み合わさった楽曲。ギターソロは一発録りだそうで、なるほど勢いが感じられます。「サイボーグ彼女」はヘンテコな展開もさることながら、チープな歌いまわしが非常にプラスティックスのソレに似てる。カヨヴォーカルの「夢・打ち込み」はチップチューンをばら撒いたロックナンバー、シンプルなのにサビがクセになる。歌っていることはテニスなのかサッカーなのか不明瞭な「プロテニス」はハヤシ&ヤノのコーラスの掛け合いが聴きモノ。「オールウェイズハピネス」は電話、ホチキス、ゴミ箱などのサンプリングサウンドを各所にコラージュしたライト感覚のインダストリアル楽曲。POLYSICSのサウンドは初期P-MODELの作風から多大な影響を受けている、というのは周知の通りですが、彼らへのリスペクトをハッキリとカタチにしたのが、P-MODEL「偉大なる頭脳」のカヴァー。原曲は粘っこくつんのめるアンサンブルに、平沢御大のけだるいヴォーカルが奇妙な雰囲気を演出する楽曲でしたが、こちらは乾いたアンサンブルが明快にうねり、ハヤシのエキセントリックなヴォーカルがキンキンと冴え渡るわかりやすくも刺激たっぷりの仕上がり。対照的な印象を持つアレンジなのが興味深い。全16曲、楽曲も多彩ということで、アルバムの全体像をつかむのには多少時間がかかりますが、語りどころは今まで以上にあります。あとはライヴでこれらの楽曲の印象がどう変わるか、ですね。

POLYSICS - 公式

2007年3月8日木曜日

The Invisible Session『The Invisible Session』(2006)

インヴィシブル・セッションインヴィシブル・セッション
(2006/03/21)
インヴィジブル・セッション

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 イタリアのジャズ&ラウンジ専門レーベルSCHEMAの創設者であるルチアーノ・カントーネと、パオロ・フェドレジーニ&マルコ・ビアンキ、この3人を中心にして結成されたクラブジャズ・ユニット インヴィジブル・セッションの1stアルバム。イタリア出身の女性シンガー ジェニー・Bによるやや憂いを帯びたヴォーカル、淡く塗り重ねていくようなピアノ&ホーン・セクション、そしてそれらを静かに追うかのように、まろやかな濃いグルーヴを生み出すべースと、小気味良く心地いい刻みを加えていくドラム&パーカッション。ラテンの野生的な色合いを感じますが、アンサンブルが一貫して喚起させてくれるのは薄く霧がかった夜のイメージ。グイグイと押して訴えかけてくるというよりはゆっくり奥へ奥へと引き込んでいくといったところです。時折織り込まれるエレクトロニカのシーケンスも、爽やかな冷たさをささやかに演出、特に「Heroes Of Sponge Cake」では、ビヨビヨとしたシーケンスの溶け込み方が妙味、さりげないアクセントになっています。「I Knew The Way」の終盤、徐々にアンサンブルがほどけて薄いバッキングとピアノのみになったときのなんともいえない美しさや、ホーンの音色がまどろむように鳴り響く序盤から、静けさを徐々に徐々に塗り変えていくかのようにアンサンブルが盛り上がる「The Teacher」など知らず知らずのうちにグっとくる楽曲が多いのが非常に魅力的。また、最後まで霧の中にたたずむような雰囲気が崩れることがないのには唸らされます。SLEEP WALKERのような狂熱のクラブジャズとは対極に位置していますが、彼らが好きならこちらも確実にハマるのではないかと。


日本コロムビア - The Invisible Session

ARRAKEEN『Patchwork』(1990)



フランク・ハーバートの『デューン~砂の惑星~』に登場する都市の名前を冠するフランスの5人組シンフォニック・ロック・バンド「アラキーン」の1stアルバム。MARILLIONやPENDRAGONといった英国ネオプログレ勢の影響が強く、楽曲展開はもちろん、ギターの泣きやキーボードの淡いトーンからもそれが如実に伺えます。突出したものはないのですが、たおやかなハイトーンを聴かせるマイコ嬢のヴォーカルを中心とした、しつこ過ぎないアレンジのシンフォニック・ロックはなかなかの好印象。アンサンブルが良く噛み合っています。全4曲30分というEPほどのヴォリュームにはやや物足りなさを感じてしまいますが、11分半に渡る長曲「Differences」は、緩急のついたドラマティックな展開もさることながら、ギター、キーボード、ヴォーカルが代わる代わる見せ場を巧みに演出していっており、バンドの魅力が詰まった1曲。この曲だけでも十分聴く価値はあります。4曲目「Folle Marie」はライヴ録音で、MARILLIONのスティーヴ・ロザリー(g)がギターソロで客演しています。本作発表後、シルヴァイン・ガバネイル(g)が脱退、バンドは後にテクニカル系ギタリストとして名を馳せるシリル・エイチャード(g)を後任として迎え、92年に2ndアルバム『Mosaique』をリリースするのですが、あえなく解散してしまいます。一方シルヴァインは、マリリオンのピート・トレワヴァス(b)とイアン・モズレイ(dr)を迎えてIRISというシンフォニック・ロック・バンドを結成、96年にアルバムを1枚発表しています。


ARRAKEEN:Wikipedia

2007年3月4日日曜日

ルインズ波止場『R.H』(1994/2001)

RHRH
(2001/09/05)
ルインズ波止場

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 東の吉田達也率いるルインズ。西の山本精一率いる思い出波止場。一筋縄ではいかぬ両バンドが合体したおもしろプロジェクト「ルインズ波止場」の1994年発表の1stアルバム。初回版は缶ケース仕様、中に臭いイカも入っていたんだそうな(2001年に再発)。このプロジェクトでのライヴは過去に1991年、1994年、2001年の三回しか行ったことがないとのことで、本作は91年と94年のライヴ音源も含めて40曲収録したシロモノ。奇声あり鳴き声あり逸脱ありノイズあり楽器持ち替えリレー演奏あり楽屋裏録音みたいなものもありのハチャメチャぷり。James Brown「Sex Machine」とKING CRIMSON「太陽と戦慄パート2」の同時演奏を行う1曲目の「GOM DEVIL」からして既に抱腹絶倒モノです。曲名も「Paul McCartney」「Drums,Guitar,Bass And Young(D.G.B&Y)」「Elbis」「Fotoppara」「Nishiyamakun」「WAWAN」「WAWAM」「WAWON」(以下変格活用続く)といったヒッチャカメッチャカなネーミングが炸裂。特に一連の「WAWAN」組曲は、メンバー全員がひたすらワワワンワン!と吼え続けるというもの。最終的に「WAWAWAN」で20分間吼え続けます。また、KRAFTWERK「Trans-Eutope Express」、AREA「Luglio, agosto, settembre (nero)」のカヴァーも収録。AREAのカヴァーは見事な完コピっぷり。演奏もさることながら、イントロのアラビア語朗読まで一言一句余さず再現してます(そういや精一兄さんはAREAのアルバムのライナーを書いてましたな)。各メンバーの色々と持て余しまくったエネルギーが結実したかのごとき名作にして迷作。その勢いはとどまるところを知らず、2003年の『Close to the RH 嬉嬉』ではYES「危機」をフルでカヴァー。こちらも抱腹絶倒驚天動地なカヴァーに仕上がっており、オヌヌメです。






山本精一:Wikipedia
山本精一:公式
ルインズ:Wikipedia
吉田達也/磨崖仏:公式