2006年12月26日火曜日

IT BITES『Once Around The World』(1988)

Once Around the WorldOnce Around the World
(1988/03/21)
It Bites

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 イギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド「イット・バイツ」の88年発表の2ndアルバム。国内盤の邦題は『限りなき挑戦』。プロデュースは前半半分がGONG~System 7のスティーヴ・ヒレッジ、残り後半がバンドのセルフ・プロデュースによるもの。ハード・ロック、プログレッシヴ・ロック、フュージョン、そのいずれの要素もバランスよく消化し、コーラスのハーモニー(YESからの強い影響を感じさせます)や、キーボードのリリカルなフレーズがのびやかに彩るキャッチーな音楽性。ソリッドでわかりやすく進んでいく展開作りながらも、変拍子やスリリングでハッとするフレーズもバッチリ盛り込まれている。かといってテクニックに溺れるようなそぶりは全くなく、キュンとさせる歌心も忘れない。その辺りが凡百のポンプ・ロック・バンドとは一線を隠す、このバンドの立ち位置の絶妙さを示す要因であり強みなのかもしれません。あと、個人的なことを言わせていただくと、初めてこのバンドを聴いたとき、自分の中に浮かんだのは「グラディウス」あたりのコナミ矩形波倶楽部のサウンドでした。どちらもプログレとフュージョンの要素を兼ね備えているので、似ていると感じるのもそれほど無理のないことなのかも。

 ポップでキャッチーな躍動感が素晴らしい「Kiss Like Judas」、ひねりのたっぷり入ったハード・ロック・チューン「Rose Marie」、トリッキーなコーラスハーモニーの心地の良さと全編に漂う小気味の良さで9分半の長さを微塵も感じさせない中盤の目玉曲「Old Man And The Angel」、リリカルな側面を全面的に押し出した、この上なく甘美なメロディを孕んだ小品「Plastic Dreamer」、そしてラストは15分に及ぶ展開構築の健闘が光るタイトル曲「Once Around The World」と、充実の楽曲群で構成されています。彼らのサウンドに爽快感のみならず優雅な気品すら漂ってくるのは、少なからずブリティッシュ・ロックのイディオムを継承しているがゆえなのでしょう。80年代という時代の流れに沿わず、思ったような結果が出せないまま活動休止に至ってしまったというのはとても残念であります。しかし、最近になってバンドは再編し、アルバム発表の動きもあるとのこと。サウンドの方向性の一翼を担っていたフランシス・ダナリーはおりませんが、彼のポジションにはARENA~KINOのジョン・ミッチェルが抜擢されています。確かな実力の持ち主だけに、今後の動きにも大いに期待できます。



It Bites:Official Site

2006年12月6日水曜日

APOGEE『APOGEE』(2006)

FantasticFantastic
(2006/11/22)
APOGEE

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 永野亮(Vo.Gr)、間野航(Dr.)、大城嘉彦(Syn)、内垣洋祐(Ba)によるポップ・ロック・バンド「アポジー」のデビュー1stアルバム。夢と現実を狭間を行き来するようなマイルドなヴォーカル、軽めのギターサウンドに対して、くるまったグルーヴを弾き出すベースやドラムのコントラストも面白いのですが、変幻自在なトーンで煌びやかに空間を引き伸ばしたり鮮やかに彩色してゆくシンセの思い切った使い方には凄く惹かれるものを感じます。捻くれながらもポップなメロディがドパンドパンと弾けていく作りの楽曲展開と相まってこのバンドのポップ・プログレらしさを滑らかに引き出してるようで好奇心がくすぐられることしきり。ニューウェーヴやファンク、R&B、ポスト・ロックやプログレなど、メンバー各々の嗜好は明らかに異なっているということはわかるのに、持ちネタの引き出しがどこか霞がかっているような印象を受けるのが何とも不思議。蜃気楼のようにたたずみながら、澄み切った空気や懐かしい匂いをポンポンと飛ばしてくるというこの妙なカラフルさの前に聴き手の思惑は良い意味で裏切られていきます。レトロな響きの中でメロディのキャッチ&リリースが目の醒めるほどハッキリした「Let It Show」。カラリと乾いたファンク風味のフレーズにドキリとさせられるかと思えば、囁き掛けるようなサビ、歌詞の語感の浮遊感が病み付きになりそうな「ゴースト・ソング」。夕暮れ時の情景を一気に星の輝く夜景へと塗り替える「夜間飛行」。方や煙の立つかのようなシンセワークで2分間のトリップへと誘い込み、方やテープノイズがある種のノスタルジーを喚起させる実験性のある曲「Mother,I Love You」「ロードムービー」。聴けば聴くほどに、バンドが生み出すイマジネーションのまどろみの中へと誘われてしまいます。



APOGEE:Wikipedia
APOGEE:公式
HOTEXPRESSインタビュー

栗コーダーポップスオーケストラ『「よつばと!」イメージアルバム「よつばと♪」』(2005)

「よつばと!」イメージアルバム「よつばと♪」「よつばと!」イメージアルバム「よつばと♪」
(2005/04/02)
栗コーダーポップスオーケストラ

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 "あずまきよひこと、彼の所属するよつばスタジオの高度技術が遺憾なく発揮された、近代芸術作品「よつばと」"(アンサイクロペディアより)。本作は、栗原正己氏率いる栗コーダーポップスオーケストラによって作り上げられた同作品のイメージ・アルバム。よつばの一日を数十曲の小曲(最短8秒、最長5分)で表現したコンセプト・アルバムであります。リコーダーをはじめとした多種多様な楽器の親しみやすい音色が、原作のあの世界観と空気を見事に醸し出しており、目覚ましや腹の鳴る音、踏切の警笛などを楽器で再現するというギミックと相まって、やわらかなノスタルジアを感じさせる1枚。1曲1曲は短いですが、そこで展開されている演出や空間作りは、聴けば聴くほどよく考えられてるなあと感心させられてしまいます。「よつばのちいさなだいぼうけん」でのドラムとリコーダー、「カレーをつくる」「カレーをたべる(とてもおいしく)」でのリコーダー、ホーン、ストリングス・アンサンブル(桑野聖ストリングス)の絡みなど、聴いていて思わず笑みのこぼれる瞬間もあちこちにあります。個人的な雑感ですが、本作を聴いていて思わずTHE MOODY BLUESの『Days Of Future Passed』が頭に浮かびました。あちらは「人生を一日で表す」というコンセプトであり、スケールの違いこそありますが、「一日」というテーマ性も含めてどこか相通ずるものを感じてしまいます。「この一日は永遠に続くだろう(This Day Will Last A Thousand Years) あなたがそう望みさえすれば(If You Want It To)」とムーディーズはかつて歌いましたが、そんな永遠に続いて欲しいと思わせるものが、このイメージ・アルバムにも秘められているのです。

「よつばと♪」:試聴
よつばと!:Wikipedia
よつばスタジオ
栗コーダーカルテット:公式
栗コーダーカルテット:Wikipedia

2006年12月5日火曜日

野獣王国『Sweet&The Beast』(1999)

スイート&ザ・ビーストスイート&ザ・ビースト
(1999/07/23)
野獣王国

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 是方博邦(g)、難波弘之(kbd)、鳴瀬善博(b)、東原力哉(dr)といった名うてのミュージシャン達によるハイブリッドなフュージョン・バンド「野獣王国」の3rdアルバム。バンド名の由来は、「四者のパフォーマンスの暴れっぷりが野獣のようだった」と、とあるファンが感じた印象が元になっているとか。フュージョンの洗練されたしなやかさはもちろん、ロックの野趣溢れる醍醐味も押し出した彼らのサウンドは、まさにパワー・フュージョンと呼ぶに相応しいものです。鳴瀬氏のチョッパー・ベースが跳ね回るハードなファンク・チューン「Three Funk Bears」を皮切りに、東原氏の豪快なドラミングと難波氏のオルガン&シンセ捌きが楽曲にヘヴィでプログレッシヴな趣をたっぷりと与えている「Hurricane-Z」。KING CRIMSONの代表曲をパロったタイトルのお遊びにニヤリとさせられつつも、バンド・アンサンブルが一体となってジワジワと密度を熱量を増してゆく展開が、まさに"ビースト・キング"のイメージに相応しい貫禄を感じさせてくれる「The Court of The Beast King」。難波氏の縦横無尽のプレイを中心に、コーラスも交えてドラマティックな楽曲構成で聴かせる「Violet Papillon」。これらのパワフルな楽曲の間あいだには、ボサノヴァ・テイストの「Ripplet」や、ヴィクター・ヤングのカヴァー「My Foolish Heart」、ブルージーでメロディアスなフレーズを味わえる「European Rats」といったまったりとした楽曲が挟まれています。ラストは「E.Tのテーマ」をしっとりとしたアレンジでカヴァー。ライヴでは他にも鉄腕アトムやゴジラのテーマ、スティーヴィー・ワンダーにCAMELなど、かなり手広くカヴァーしているようですね。【Beast】と【Sweet】のイメージをそれぞれ感じさせる楽曲群がバランス良く配された、フュージョンの枠に収まらない痛快で刺激的な1枚であります。



野獣王国 ファンサイト

2006年11月29日水曜日

「PORCUPINE TREE Japan Tour」 2006.11.28 @ZEPP OSAKA ライブレポートのようなもの

Deadwing
Deadwing
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Porcupine Tree
Lava (2005-04-26)
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 行ってきましたよポーキュパイン・ツリー(以下PT)ライヴ。どうせライヴの興奮と余韻で眠れないだろうから、忘れないうちにガガッと仕上げます。まず会場のZEPP大阪ですが、オールスタンディングでなくなって、会場には200席ほどイスが設けてありました。ZEPPのキャパ(2000人)を考えるとこれはめちゃくちゃ少ないんですが、かといってスタンディングのままだと後ろのガラガラっぷりが目立って何とも寂しいことになってしまうので、これはやむを得なかったなと。まあオープニングがロバート・フリップ翁だから座って見たほうが正解かもしれんなあ、と身も蓋もないことを考えてたりもしましたが…。最終的に開演時には用意された席は殆ど埋まっていましたし、イスの後ろで立ち見していた人も何人かいたので、平日のライヴとしては上々ではないかと。ひとまず、ウドーフェスの悪夢再来とならなくて良かった…ホント良かった。客層はフリップ目当てのおじさま方と、PT目当ての若者方で半々といったところ、親子で来てるといった人たちもチラホラ見受けられました。確かにこのカップリングは二世代にアピールできるわな、と妙な感慨を持ってみたり。

 そしてライヴ開演時間である19:00ぴったりに前座を務めるロバート・フリップ御大が登場。まずはステージ左、ステージ正面、ステージ右に立って、丁寧にお辞儀。うーむ、ジェントルマン。御大かわいいよ御大。そしてエレクトロニクスをちょこちょこいじくってギターを手に取り、イスに腰掛け、さあ演奏が始まりました。深紅のライトに照らされる中、なでくりまわすようなアンビエント・サウンド。「まさに涅槃…」なんて色々グダグダ考えを巡らせながらなんとか寝ないでひたすらステージ上の爺さまを凝視。途中あたりを見回すと、案の定カクンカクン舟こいでる人がそこかしこに…。予想していたとしても、やっぱ仕事帰りの人にとっては眠りに誘うに十分でしたね。そんな客席の状況を知ってか知らずか、御大のヘヴンリーなギターサウンドはますます拍車をかけてゆきます。そして30分に渡る演奏が終了、御大は再び客席に向かって4回ほどお辞儀をして、ステージを去ります。

20分ほどPTのための機材セッティングを経た後、19:50ごろにサポート・メンバーを含むPTの面々が登場、スクリーンに映像が映し出され、しばらく流れた後。名古屋と同じセットリストで演奏を繰り広げます。回転し続ける車輪、家族の肖像、炎、高速で行き交う車、苦悩する男、口耳から出てくる液体、花弁の万華鏡、エイリアンなどを映し出すスクリーンは時にライトやサウンドと同調したり、時にインスピレーションを刺激したりと手を変え品を変えながら様々な相乗効果を発揮していく。実際見てみると確かに巧い。スティーヴン・ウィルソン先生は時たま手を前にかざしながら歌うのですが、メガネ美男子というルックスも相まって遠目で見てても艶っぽく感じました。いつも思うのですが、外見だけじゃさっぱり歳がわからないです。動き回ってのパフォーマンスなんてなくとも、楽曲展開がや静と動が交互に入れ替わるセットリストもあいまって、どんどん引き込まれていきました。以下、各楽曲の寸感。

1:「Revenant(SE)~Blackest Eyes」

 アルバム「In Absentia」の冒頭曲。肝心のギターの音が潰れてぼやけ気味だったかも。叩きつけてくるヘヴィなリフがインパクトのある曲だけに、切れ味が鈍ってどうにもイマイチな感触になっていたのが残念。

2:「The Sound Of Muzak」

 前曲のぎこちなさを引きずるようところは感じたものの、きっちり持ち直したあたりは流石です。サポートメンバーであるジョン・ウェズリーのヴォーカルとの絡みも良かったです。

3:「Hatesong」
 日本盤発売されていない「Lightbulb Sun」(2001)より。開幕時のぎこちなさは、ここにきて完全に払拭されました。噴射するギターサウンド、ボコボコにうねるリズム隊、歪むキーボード各パートの熱の入ったインタープレイが実に手に汗握る。特にリチャード・バルビエリによる歪んだキーボードサウンドがアルバム以上に派手に放出されていたのが印象的でした。

4:「Lazarus」

瑞々しくもハートウォーミングな小曲バラード。ウィルソン先生のヴォーカルはアルバム以上に突き抜けて良く通っていたので「Follow Me~」のフレーズがさらに絶品な味わいに。この曲の後、ウィルソン先生がMCで「アナタタチニ、アエテ、シアワセデス」と噛み気味に言ってたのが何とも微笑ましい。この瞬間 女性ファンが増えたと思ったのは自分だけではないと思います。

5:「The Beast(新曲)」

 2つ曲があったように思えたのですが、どうも繋がって1曲を形成してたようです。サンプラーのメロトロンサウンドがガンガン煽る中、ヘヴィなフレーズによる執拗な反復、そして弾け飛び静寂へと移るという、押しも引きもある展開が詰まった15~6分ほどのロングレンジの曲でした。コレ、物凄くキマってたなあ…早くも次回作への期待が出てきました。

6:「Open Car」

 ガリガリとフックを持ったリフとささやき掛けるヴォーカル、サビで聴ける醒めたアグレッション、全てが5割増しで迫ってくる。

7:「Buying New Soul」

 レアトラック集「Recordings」(2001)からの曲。この曲の記憶だけ何故か飛びました…。

8:「Mother and Child Divided」

 DVDにボーナストラックとして収められた曲のようですね。終始息を呑む展開のハードなインスト。タイトル通りスクリーンには母と子の肖像、そしてそこにかぶせられる炎…回転する車輪(ギア?)も映し出され、視覚効果でスリリングな演奏に文字通り拍車をかけていきます。

9:「Arriving Somewhere But Not Here」

 まどろむような展開から徐々に、ザクザクとしたリフによるアグレッションが増してゆく、ハード・ロック・バンドもかくやといった12分の長曲。やっぱりこの中間部の駆け上る展開は腹の底からじわじわ来て堪らない。楽曲が落ち着いたエンディングを迎えた後も、客席のボルテージは冷めやらぬといったところ。

10:「The Start of Something Beautiful」

映像には二体のエイリアンが登場し、ストーリー性のあるドラマを演出。終盤、花びらの万華鏡のような映像を伴って、締め付けるような劇的なギターソロが展開されるのですが相乗効果が狂おしいほどにドラマティックで、かなりグっとくるものがありました。

11:「Halo」

「God gives meaning, God give pain!!」 演奏にぴったり合わさってスクリーンに次々と映し出される歌詞。視覚・聴覚共に生生しくインパクト絶大。アルバム内でも覚えやすい曲だけど、これでしっかりと焼き付けられてしまった。「Halo」終了時点でメンバーは退場するものの、静と動が交互に押し寄せる楽曲群で皆のテンションは上がりに上がっていたようで、かなり熱の入ったアンコールの手拍子が起こると同時に客席はスタンディング状態に。そしてメンバーが再登場、スティーヴンの「楽しんだかい?」のMCに続いて演奏された曲は。

Encore:「Trains」

 爽やかなアコースティックサウンドと手拍子による彼らのライヴ定番のバラード曲。客席全員による手拍子を取り込んでメロディ共々実に心地よく盛り上がりながら大阪でのライヴは暖かく幕を閉じます。いい雰囲気でした。

2006年11月27日月曜日

PORCUPINE TREE『Deadwing』(2005)

DeadwingDeadwing
(2005/04/26)
Porcupine Tree

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 イギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド ポーキュパイン・ツリーの8thアルバム。PINK FLOYDやRADIOHEADからの影響を受けているということでもよく語られる、心地の良さと抜けの良さの中にやや翳りを落とし込んだサウンドが特徴のバンドです。スティーヴン・ウィルソンによるヴォーカル(ややエフェクト入り)は薄暗い浮遊感を醸し出し、メロトロン、エレクトロニクス、コーラスワークは良質のアクセントとして程よくサウンドに溶け込む。かと思えばヘヴィなリフをガツンと(しかし決してやり過ぎない程度に)聴かせることもあったりとサウンド構築の仕方が実に絶妙。どの要素もサウンドにどっぷりと依存はしていない。グワっとしたリフの滲み具合が堪らないヘヴィ・ロック・ナンバー「Shallow」「Open Car」。瑞々しいメロディがなんとも甘く訴えかけてくる小品「Lazarus」。エイドリアン・ブリューが軋ませたギターソロで客演した「Halo」。ロングレンジながら、表情豊かなアンサンブルがキレよく進行する「Deadwing」「Arriving Somewhere」。聴き手を意識下に溶け込ませるように、暖かみのあるリズムの中メロトロンやアコースティック・ギター、ヴォーカルがけぶるように演出してゆく「Mellotron Scratch」。気だるく這いずる中で何かを見出していくかのようなドラマのある展開が切ない「Start Somoething Beautiful」。夢の中でさらに夢を見るような、まどろみにまどろみを重ねた感覚を覚える「Glass Arm Shattering」。これらの楽曲を糸口にして己の思索の路に踏み入れるもよし、またサウンドの波に身を委ねるもよし。何度聴いても押し寄せる波でまた印象が塗り替えられていく、広がりのある雰囲気と刺激に満ち満ちた、そんな作品だと言いたいです。そして、明日のポーキュパインツリーの大阪ライヴに行ってきます。これは行かないと後々絶対後悔するような気がする。

2006年11月10日金曜日

黒田亜樹『タルカス&展覧会の絵』(2004)

タルカス&展覧会の絵タルカス&展覧会の絵
(2004/04/21)
黒田亜樹

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 クロアキの愛称でも知られるピアニスト 黒田亜樹さんの3枚目のアルバム。過去の二作ではアルベルト・ヒナステラやアストル・ピアソラのレパートリーを弾きこなしてきた彼女ですが、今作では題材をEmerson,Lake&Palmerにとり、プログレに急接近。EL&Pの長編プログレ組曲「TARKUS」を、作曲家のマウリツィオ・ピサーティが編曲した「ZONE-TARKUS」、そして、EL&Pもカヴァーしたムソルグスキー「展覧会の絵」を収録したのがこの作品。ジャケットもいい感じです。ちなみに録音はイタリアにあるマウロ・パガーニ(PFM)のスタジオだったそうな。たまたまだったそうですが、因果を感じます。かつてEL&Pは荒々しく暴力的なフレージングで「タルカス」をド派手にバキバキ鳴らしていましたが、こちらは繊細かつ冷ややかに迫りくるアンサンブルの展開でカヴァーしているので、正直、プログレ的なものを期待すると肩透かしかもしれません。EL&Pファンの賛否も分かれそう。しかし、ピアノ、パーカッション、ヴァイオリン、ギター編成による現代音楽的アプローチでどう見せるかというのが主題なので、その点を踏まえるとかなり楽しめます。オープニングの「噴火」、中盤の「アイコノクラスト」、終盤の「マンティコア」「噴火II(アクアタルカス込み)」のパートは、EL&Pのそれとは別種のスリルを味わえる良アレンジ。そして「展覧会の絵」、これはもう再結成EL&Pが94年に発表した意味不明のスタジオリメイク版よりはるかに良いし、丁寧かつ鳴らすところはしっかり鳴らしているので好感触。ちなみにライナーノーツには、EL&Pのキース・エマーソン、ピアニストのブルーノ・メッツェーナ、そして植松伸夫のお三方が推薦コメントを寄せています。植松氏は彼女のファンで、過去にFFXのピアノ・アレンジアルバムの奏者に彼女を指名しております。




黒田亜樹:公式サイト クロアキネット

Astor Piazzolla『Tango: Zero Hour』(1986)

Tango: Zero HourTango: Zero Hour
(1998/09/08)
Astor Piazzolla

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 バンドネオン奏者にしてアルゼンチン前衛タンゴの巨匠 アストル・ピアソラ。タンゴにジャズやクラシックからの影響を取り込むなどの革新的スタイルをとり、タンゴ保守派から命を狙われながらも、一心にアルゼンチン・タンゴを追求していった彼が生み出した集大成的作品が本作。幽鬼のように空間をうねり続けるバンドネオン、シュルシュルと甲高くすすり泣くヴァイオリン、ドス黒いグルーヴと共に躍るピアノやベース、これらが一体となって紡ぎ出される、漆黒の闇と甘美な泣きが表裏一体となったアンサンブルは鳥肌モノであります。緊張感の中にも力強さを孕んだ「Tanguedia III」、切れ味鋭く小気味良い展開の中にハッとさせられる流麗なフレーズを織り込んだ「Milonga Loca」、一転してドスの効いたグルーヴの中でキリキリと締め付けてゆく「Michelangelo 70」、喜怒哀楽の場面展開に放り込まれる「contrabajisumo」など、妖しさも、激しさも、官能的な艶も、胸を締め付ける郷愁も、とめどもない悲しみも、全てこの中に詰めこまれており、この上なく深い余韻を聴き手にもたらしてくれます。あまりにも美しく、そして揺るぎのない大傑作。音楽的に類似点が多いチェンバー・ロック好きにとっても避けては通れないマスト・アイテムでありましょう。


「タンゴの革命児・アストル・ピアソラ」
アストル・ピアソラ:Wikipedia

2006年9月25日月曜日

「The Advantage Japan Tour 2006」 2006.09.24@新世界BRIDGE

Elf Titled
Elf Titled
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Advantage
5 Rue Christine (2006-01-24)
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 初来日したアメリカのファミコンミュージックポストロックカヴァーバンド「The Advantage」の大阪ライヴに行って来ましたよっと。人で詰め掛けるかと思ってたんですが、最終的にお客は30~40人くらいの入り、まあそんなもんですね。Advantageの皆さんは、傍からみたらアメリカのその辺の大学にいそうなラフな格好。ヘルメットはかぶってなかったです。プログレ的運指練習マシーンな演奏でテクニカルなフレーズを涼しげにペロピロと弾きこなすべースとギターの3人とは対照的に、半分うつろながらも物凄い形相で一音一音フルパワーでぶっ叩くスペンサー・セイムの薪割りダイナミックなドラミング。動画で見てもかなりのものでしたが、やっぱ生でみると迫力は段違い。顔面とドラムセットが一緒にズズズズズと前進するかと思うほどの勢いでぶっ叩いており、髪の生え際も後退してしまうのもさもありなん、という鬼気迫ったプレイを終始続けておりました。

 プレイした曲は「マリオ」「マリオUSA」「グーニーズ」「マーブルマッドネス」「キャッスルヴァニア」「バブルボブル」「魂斗羅」「ボンバーマン」「ブラスターマスター」「メタルギア」など。「伝説の騎士エルロンド」「魔界村」は演ってませんでしたが、代わり?にアルバムには入っていない「沙羅曼蛇/ライフフォース」のボス戦曲(後記:正確にはグラディウス2のボスラッシュ戦に流れた沙羅曼蛇のボス戦曲のようです)をプレイ。原曲が原曲だけにプログレの香りがいたしました。余計なMCは全くなしで、5~6曲ほど固めてひたすら詰め込んで繰り出し、詰め込んで繰り出し、アンコールも含めてキッチリ一時間ほどの演奏で魅せてくれました。「ゲームは一日一時間」という高橋名人の言葉も頭によぎります。前座の3バンドのパフォーマンスが思ったより長かったのもあって結構疲れましたが、アルバムそのままのネタのパッケージング、おいしく頂きました。

2006年9月1日金曜日

BLIND GUARDIAN『A Twist in the Myth』(2006)

Twist in the MythTwist in the Myth
(2006/09/05)
Blind Guardian

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 ドラマーのトーマス“トーメン”スタッシュが脱退し、20年に及ぶメンバーの結束が終わりを告げたファンタジー・ジャーマン・メタルの大御所、ブラインド・ガーディアンの8thアルバム。クワイア・コーラスの重厚さと民謡風サウンドの貫禄はやはりブラガーだけども、琴線に訴えかけるバラードも強烈な疾走ナンバーも皆無、全編似たような曲調のミドルナンバーばかり。それでも「This Will Never End」「Otherland」「Turn The Page」といったしょっぱな3曲は聴かせるメロディがあるのでまだ難なくファンタジックなアンセムとして聴けます。しかし先行シングルでもあった4曲目「Fly」あたりに差し掛かるとやや雲行きが怪しくなって、それが後半ともなるともう完全失速。手癖でダラダラやってるんじゃねえかというほど展開のメリハリのなさにビックリです。クワイアばかりが相変わらずの肉厚っぷりを垂れ流してんのも全てをうやむやにして引き分け狙いの勝負かけてるとしか思えないので聴き進めるのがだんだんしんどくなってくる。ジュワーっと広がるギターサウンドで重厚な雰囲気作りが可能になったことでブラガーは変革と躍進を遂げてきたのですが、引き換えに彼らが犠牲にしたのがリフの切れ味や楽曲の起伏。96トラックフル使用のプロダクションによる重厚なオペラ的楽曲で埋め尽くされた前作ではそれもまだ誤魔化しが効いていましたが、今作は『Nightfall In Middle-Earth』(1998)のダメな部分だけしっかり継承したような作風なので、過去のツケがもう回りに回ってヒドイことになってます。荒々しさを兼ね備えたあの異常なファンタジー&抒情詩キチガイっぷりも、勢いも説得力もない外面のみのサウンドの前ではどこへやら。うーん、トーメンが脱退したのを聴き手に納得させるような作風にしてどうするよ…。決め手の欠如が致命的でスッキリしないのがいかんともしがたい。バンド側が完全に飽和状態の極みに達しちゃった感があるので今後、新たな機軸を打ち出せる力がバンド側にあるのかどうか…。

2006年7月30日日曜日

米米CLUB『Sorry Music Entertainment』(1995)

ソリー・ミュージック・エンタテインメント(限定盤)ソリー・ミュージック・エンタテインメント(限定盤)
(1995/11/22)
米米CLUB

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 米米CLUBにおける、"ソーリーな曲"(うんこ曲)ばかりを集めた2枚組アルバム。初回盤には"うんコイン"がついていたり、ライナーノーツでは「SORRY度数」なる基準で各楽曲のソーリーっぷりを解説しているという無駄に親切設計。このアルバムタイトルも、リリース元であったソニー・ミュージック・エンタテインメントのもじり。どこを切ってもエロくてナンセンスなユーモアが満載で、米米CLUBの裏の最高傑作として本作を推す人もいるとかいないとか。実際、私は本作からかなり影響を受けました。以下、誰も得しない全曲解説。

≪DISC1≫

【アイム・ソーリー】
柏田と先輩が繰り広げる、アイムソーリー山登頂におけるドラマティックなやりとりを収録したテーマ曲。

【ボッサボサノヴァ】
「こっこぴゅぴゅこっこぴゅぴゅこんぴゅーたー」など、ノー天気でアホの極みな歌詞が素敵。

【男同士~POSTホモ伝説~】
竜二と舎弟が義兄弟の契りを交わす。「ヤンチョヤンチョ」と雄臭いコーラスも渋い、テクノ演歌。竜二を演じるコータロー氏のドスの効いた台詞がかなり様になっているのもポイントです。


【VIVAみたいなもの】
ちょっとやそっとじゃみせないものを見たいと願う男のリビドーを体現した曲。歌い方もさることながら、後半の「ヘンタイ!」の合いの手も、どことなくいやらしい。

【ワンダフルSUNでぃ】
比較的まともな曲その1。アルバムの他の曲がいかに変態度数が高いかということを認識させる曲でもあります。当時ビールのCMに提供されたキャッチーな曲で、実質2時間で仕上げられたそうです。

【サマーラブストーリー】
ライヴで演ろうとしたものの、当日になって躊躇したため結局やらなかったらしいナンバー(笑) しっとりとしたムード満点なバラードを、「あなたとわたしのドッキング」「お砂が入ってイタタタタタ」「今日はデキ~る」といった下世話でスチャラカなフレーズで破壊する。

【0721】
自家発電の唄。シコシココーラスが入るのほほんとした佳曲。「0721をしながら、この92を考えよう(シコシコ シコシコ)♪」


【ザ・ヘア】
テーマ"下の毛"「何か言いたいことがあるとするならば、芸術を利用しないでください ここで きっぱりと わたしは言います あれでは ぬけません」

【日本の夏】
日本の夏の情緒、すっぽんぽん、色欲。「兄さん、種出しなよ」

【Deep In Your Nice Body】
山下達郎風シティ・ポップ・サウンドに載せて、卑猥な日本語詞(しかし歌詞は全てローマ字表記)をイングリッシュスピーキング風味で歌う曲。オトナのサウンド(色んな意味で)



【いただきました】
大阪人根性あふれるファンキーな曲。ミナコ氏による啖呵が素晴らしい。

【虫の息】
意味不明なフォーク・ナンバー。「都会では自殺する人が増えています」というフレーズはもちろん井上陽水「傘がない」のパロディ。

【露骨にルンバ】
"やよい"というこけしへの慕情を歌った曲。「やよい、今日は離さないよ。いいだろ。僕と、夢を見るんだ!」と、石井氏がデカイこけしを抱きながら歌う。

【ポンコツ君とガラクタ君】
ポンコツ君とガラクタ君の悲哀を歌った「ダメなやつはなにをやってもダメ」なトホホ曲。


【アンジュール】
歌詞はフランス語っぽい語感。しかし「アズマハチロー」やら「カキノタネヤンカレボ」といったのが混じっている。しかも同時通訳される。

【サンサルバドルの雪】
比較的まともな曲その2。収録曲の中で最もマトモな存在かも。わびしさ漂うインストゥルメンタル。

【世界ミュージックアラモード】
続いて、カマッぽいMC。

【タトゥーレ】
続いて、マドレーヌ・フォン・スクヴァビッチ嬢による、西ファロレモンドはカタルロマージュ地方に伝わる出産を祝う唄(という設定)。

≪Disc2≫

【伴天連の人魚】
雄臭い「セクシーセクシーセクシー」のコーラスと、石井氏の「私は伴天連の人魚です」というフレーズの永遠の掛け合い。

【スカンジナビアで逢いませう】
石井氏が朗々と歌い上げ、無駄にオーケストラヒットが鳴り響く、アルプスの風景が浮かびそうで浮かばない曲。

【金・金・金】
「世の中金!」という風潮に一石を投じてんだかどうだかわかんない曲。「ヴァーカッじゃねぇのくぁとぅぇむぇえ!」「ゥアホじゃねぇのくぁとぅぇむぇえ!」と、歌い方が妙にねちっこい。

【てんぱってんだよ】
運命てんぱってる男の心の叫び。

【プロは大変だ】
一発録り。というわけで笑ってたり歌詞間違えたりしてますが、短いながらも各パートのソロはあり、しかもサマになってるミュージシャン魂溢れる曲。そう、プロは大変なのです。

【プヨプヨ】
頭がプヨプヨしてます。

【鶴のしかえし】
日本残酷昔話。自分が撃たれたのはじじいのせいだと逆恨みした鶴と、じじいとの掛け合いが素晴らしい勢い。「おまえの腕を検査したら、硝煙反応も出てんだよぉ!」「そりゃーあんまりだー、お鶴さん」

【オーチャンガ】
清涼飲料水のCMに提供された曲。マンガに出てくる「アルヨ」が語尾の中国人ばりにうさんくさい。

【パパは893】
子犬が嫌いなヤクザを父にもつ息子が、父を歌った心温まる曲。

【ヤスちゃん】
ジェームス小野田こと小野田安秀について、沖縄民謡的味付けを施して歌った曲。

【でましたプルルンじーさん】
「プ プ プルルン! 出たよ!」こんな絶倫じじいで素敵な老後を過ごしたい。


【VIVA PEPE】
「あ~、やんなっちゃうな」とデレっとしている人に向かって、「ちゃんとしなさい!」と怒っている人の歌らしい。ある意味デレツン。

【アヴァンギャルド】
好きな音楽:Cabaret Voltaire / 好きなアーティスト:マルセル・デュシャン アヴァンギャルド趣味で悦に入る歌謡曲(?)

【マンボ踊り】
マンボ マンボ マンボ ウーッハッ! ペッ!

【ドライ・マン】
股間にコーヒーをこぼされても、火傷よりクリーニングの心配しやがれコノヤローとのたまうドライクリーニング屋の息子の心の叫び。

【マイ・ガール 第三章】
虎舞竜風味。女性を押し倒して揉みほぐすドライクリーニング屋の息子の妄想。

【ハードでゆこう】
ライナーノーツで唯一解説が拒否された曲、SORRY度数もマキシマム。ナニがハードです。

【芸術家】
芸術家のおじさんがベレーをかぶってイカ喰ったりヒゲ剃ったりする曲。アヴァンギャルドかつ荘厳な雰囲気漂う。終盤にふさわしい曲かもしれない。妙にカッコイイ。

【コロンビアのお花畑】
頭の中もお花畑。

2006年2月7日火曜日

THE MOODY BLUES『Days Of Future Passed』(1967)

Days of Future Passed (Reis)Days of Future Passed (Reis)
(2008/07/15)
Moody Blues

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 プログレッシヴ・ロック黎明期のムーヴメントを支えたバンドのひとつ、ムーディー・ブルースの1967年作品。「ロックとクラシックの融合」を目指したエポック・メイキングなアルバムのひとつです。当初、デラム・レーベルの新しいサウンドシステムのPRとしてロックをやってくれと会社側から言われていたバンドの面々が、それだけじゃつまらないということでオーケストラとロック・サウンドを融合させたものを作り上げようと思い立ったのがそもそもの始まりだそうな。ロンドン・フェスティバル・オーケストラの指揮者であるピーター・ナイトに楽曲のアレンジを頼み、充実した環境の中でレコーディングが行われたという本作は、「人生における一日」をテーマにしたコンセプト作品。詩の朗読に始まり、「夜明け」「朝」「昼」「昼下がり」「夕暮れ」「夜」をテーマとした楽曲が続き、最後は詩の朗読で終わるという構成であります。「昨日の夢は今日のため息」「黄昏時の間、私とともに黄昏時の夢の中へ」など、ところどころ韻を踏んだ詞も印象的。オーケストラの比重が高いのもあり、サウンド・トラックのような趣も強く感じますが、トータルで見るとやはり良質なロック/ポップス・アルバムとしてのまとまりを感じさせます。軽快なオーケストラ・サウンドから、ビーチボーイズばりのコーラスを加えた陽気なロック・サウンドへと展開していく「Lunch Time:Peak Hour」は痛快な1曲であります。本作のハイライトは、「ナイツ」というシーツと、サテンを引っ掛けたタイトルを冠した7分に及ぶラストナンバー「Nights In White Satin(サテンの夜)」。オーケストラのシンフォニーにメロトロンの響きが重なり、しみじみとした哀愁と共に壮大な盛り上がりを見せる一大バラードで、バンドの名を広く世に知らしめた1曲であり、メロトロンを効果的にロックに使用した楽曲として語り継がれる名曲です。

The Moody Blues:公式